Re:堕落から始める受験生生活(高3)


 先に言っておく。高3としての僕の一年は、再び自らの弱さを知る一年だった。

 結果論として、自分は第一志望の一橋大学社会学部に出願し、受験し、それなりの手応えを得た。滑り止めとして早稲田大学社会科学部を受験し、合格した。早稲田大学文化構想学部は補欠で、明治大学政治経済学部などMARCH以下6校は一般・共テ利用で全勝した。中学受験の頃と比べると十分な戦果だ。尤も、本命の一橋大に受からなければ目標達成とはならないのは言うまでもないが。

 ただ、それらはあくまで結果論だ。MARCH以下が受かるのは当然としても、早稲田に合格したことや一橋で好感触を得たことは自分の運が良かったが故のことであり、早稲田に関してはもう一度受けたら落ちている可能性が高い。一橋も、受かっていたとしたらそれは3分の1ぐらいを引き当てていただけだと思う。それは可能性の話で実際には受かっている。だからそんな話はしてもしょうがない。それはそうだ。しかし本来ならば運が悪かろうが問題が難化しようが、安心して合格を確信できていなければならなかった。そうできるほどの努力量を高3のうちに蓄積すべきだった。

 何が言いたいかと言えば、高3時の努力量は高2時のそれに比べて遥かに少なかった。ここで言うところの努力量というのは勉強量と必ずしもイコールではない。高2の時は後期に国数の授業をみすずで受講し始めたので、週当たりのコマ数は6コマになった(1コマ60分・週3日が授業日)。それに対して高3になると国数英に加えて世界史・国公立対策英語の授業を取ったので1コマ80分で週9コマ、週5日が授業日となった。だから授業の予習・復習、実際に授業を受けている時間などを勉強時間としてカウントするのならば、高2よりも高3の方が多かったかもしれない。だが、高2の時と比べると課題の消化量は減ったし、勉強自体への意欲が減退していたのが高3の時期だった。課題の消化量が減ったのは、共通テストで必要な色々な科目を一橋二次で必要な科目と一緒にして一日でやろうとしたり、逆に一つの科目を一日集中してやろうとしたりしていたらスケジュールが上手く回らなくなり、憔悴状態に陥って更にスケジュールが回らなくなる悪循環に嵌ったからだ。とはいえ英語の基礎は高2時点で既に盤石であった為、授業に付いていくだけでも実力は伸びた。国語と世界史も授業+αで考えるだけでも上手くいった。ただ、これもまた結果論で、課題の進捗が思い通りにならないことには相当やきもきした。また数学は結局、高3のうちもどうにもならない教科だった。共通テストをそれなりに取り、一橋二次の数学は落とせない一・二問を取れるようにするという付け焼刃な対策に終始した。それでも高3の前期のうちは模試の成績はそれなりに良かった。良かったのが悪かった。勉強の進みは上手くいっていないのに、成績は良いことが自分に複雑な感情を喚起させた。

 一応、証拠になるかは分からないが前期の記述模試と冠模試の成績を上げる。


 第1回全統記述模試 3年生5月

     点数  全国偏差値 校内順位

 英語 136/200   71.7    14位

 数学 114/200   57.1    13位(文系59名中)

 国語 125/200   68.3    4位

 世界史 84/100   72.4    1位

 国立文系      67.4    4位

 文系全体      70.8    4位

 判定(A=80%以上 B=65% C=50% D=35% E=20%以下)

 一橋社会Ⅽ 早稲田社学B 筑波社会A 千葉法政経A 一橋法Ⅽ 千葉文A


 第1回駿台全国模試(記述・ハイレベル) 3年生5月

     点数  全国偏差値 

 英語 117/200   68.1 

 数学 82/200   50.4

 国語 121/200   63.9

 世界史 71/100   74.0

 総合 391/700   65.3

 判定(A=合格可能性80%以上 B=60%以上 Ⅽ=40%以上 Ⅾ=40%未満)

 一橋社会A 早稲田社学A 千葉法政経A 筑波社会A 明治政経A 立教社会A


 第1回一橋大本番レベル模試(東進) 3年生7月

     点数  全国偏差値  高校別順位(4名中)

 英語 182/250   65.2     2位

 国語 56/100    62.5    1位

 数学 45/250    47.1    2位

 世界史 64/150   60.5    1位

 総合 347/750   62.0     1位

 判定(A=80%以上 B=65%以上 C=50%以上 D=35%以上 E=35%未満)

 一橋社会B 一橋法B


 総合学力記述模試(ベネッセ) 3年生7月

     点数  全国偏差値 校内順位

 国語 147/200   81.2    1位

 数学 164/200   81.5    1位(文系46名中)

 英語 144/200   75.4    21位

 世史 92/100   78.1    1位

 国英歴文系     86.2   2位

 国数英文系     82.8   1位

 4教科文系      85.6   1位(全国82/99857位)

 判定(A=80%以上 B=60%以上 C=40%以上 D=20%以上 E=20%未満)

 一橋社会B(学部内1位だったがAの基準偏差値に届かず) 早稲田政経Ⅾ 早稲田社学A 慶應文B 千葉法政経A 明治政経A 立教社会A


 進研模試は相変わらず受験層のレベルが低く易問が多いので、数学でも基礎ができてさえいればどうということは無く解ける。まあ記述量は多いが。そんなわけで成績自体は好調だったのが自分の心に甘えをもたらした。それによって勉強へのモチベーションが低下した。また『勉強不足によって成績が多少落ちたとしても、結局のところ受験というものは合格最低点を超えてしまえば合格する。合格した受験生の中で上位かスレスレかなんてのは、受験が終わってしまえば関係無いことだ』という考えが脳内を占拠した。それは確かに正しいのだが、基本的に逃げ・甘えの姿勢を取る人間の言い訳の為に弄せられる主張だ。結果として受かったとしても、その考えは僕が求める強さではない。課題の進捗で上手くいかないことがあったのなら、みすずのカレッジタイム担当の講師にもっと相談すべきだった。中学受験時・中学時の自分を超える為に努力し、その先にあるものが合格だったはずだ。合格だけを求め、自分の内なる逃避欲求に身を任せ、時間を空費することなど容認すべきでは無かった。高2の時のように、受験に全力で挑むべきだったのだ。いわば僕が言うところの努力というのは純主観的なものであり、効果があったかどうかなどといった客観的価値判断とは無関係だ。結果はもちろん重要だが、そこに至るまでの過程、つまり自分という主人公が織りなす物語に自ら傷を付けてはならなかった。

 高3の時の自分を見て、誰が僕をっていると判断するだろう? 

 自分以外の全員が認めたとしても、僕は認めることはできない。僕は正しい人間では無かった。僕は弱い人間だった。大学受験の結果など付属物にすぎない。そんなものは無意味だ。結果だけでは意味が無い。受験生は常に結果を優先するが、僕は受験生であると同時に一人の人として受験に挑んだのだ。端的に言えば、人間的成長を期待して受験競争に身を投じたのだ。高2の時は成長したと思っていたが、高3の時にまた中学受験時の自分に似た感覚を実体験として思い出してしまった。この前、テレビで小倉優子が大学受験挑戦企画をやっていたが、受験勉強をするだけでは教養なぞ身に付かないし、人間的成長など起き得ない。勉強する中で、この歴史が現在にこう繋がっているんだなどと意識して知識を実生活や自分の趣味に落とし込むことができなければ、単なる暗記に過ぎない。二次元の教科書・参考書・問題集から三次元の実生活へと知識を立体化し、それを基に熟考し、自省し、自らの行動を変えなければ人間的成長とはとても言えない。僕はそれを実行する途上であったが、不十分だった。簡単にまとめれば、そういうことになる。

 ただ、良くも悪くも大学受験は通過点に過ぎない。小説家になる為に、自分の受験に関するコンプレックスを早期に解消しておきたかったというだけだ。どんな過程であれ、これからの自分に活かすべき教訓がその中には眠っている。その点でも、結果という一点よりも過程というあざなえる縄の方が重視すべきだといえるだろう。だから僕は、これからの進路がどうであれ、一橋大の合否がどうであれ、今までの自分を全て自分と認めて、より良い自分へと成長したいと思う。

 ……この章を書き出した時は、胸の中で黒きもやが渦巻いているような心境だったというのに。いつのまにか晴れ晴れとした気持ちになっている。やはり文章は偉大だ。今まで自分が取り留めも無く考えて、不安を駆り立てていたどんなことも、文章にしてしまえば何ということも無いように思えてしまう。だから、僕は文章を書き続けることをやめたくない。一生涯を賭けて、創作を続けていきたい。

 故に、僕は小説家になりたい。


 このまま終わるとタイトル詐欺なので、共通テストや高3後期の模試結果について触れていきたい。まず共通テストに関してだが、難関国公立志望にしては大したことのない共通テストの成績だったと思う。一橋大社会学部は共通テストと二次試験を合わせて1000点満点。共通テストが180点。二次試験が820点だ。

 しかも共通テスト180点のうち、理科基礎が100点。他の国数英社は10分の1に圧縮され、各20点という他に類を見ない傾斜配点だ。その為、理科基礎は満点を狙いに行き、他はそこそこ取って足切りだけ回避するというやり方だ。しかし僕は理科が死ぬほど苦手なので、4月の全統共通テスト模試では化学基礎17点だった。因みに9月のベネッセ・駿台共通テスト模試では生物基礎15点だった。まあその時は、夏休みに化学基礎から生物基礎に科目変更して間もなかったのでアレなのだが。ともかく、そこから何とか頭に叩き込んだ結果、本番では地学基礎50点・生物基礎30点だった。生物基礎は難化していたので、まあ仕方ないと思ってくれ。社会学部に合格する人は皆合計で90点以上は取ってくるのだが、とりあえず最低ラインには立っていた。

 本番の結果は以下の通り。


 2023年度共通テスト本試験

 英語リーディング84 英語リスニング80 数学ⅠA67 数学ⅡB68 国語158 世界史B88 倫理政経82 生物基礎30 地学基礎50 合計707/900点

 河合塾判定(A=80%以上 B=65% Ⅽ=50% Ⅾ=35% E=20%未満)

 一橋社会Ⅾ 早稲田社学共テ利用E 早稲田文構共テ利用E 千葉文Ⅽ 法政社会共テ利用A 成蹊文共テ利用A


 一橋がⅮなのは不安要素だが、今までの共通テスト模試では理科基礎が悪すぎて常にE判定だったので、むしろ嬉しかった。合計708点というのも自己ベストだった。 

 また、足切りには引っかからなかったので一安心した。早稲田の共テ利用は元から考えていなかったが、枠が余っていたので書いたというだけ。実際共テ利用で出願したのは法政と成蹊で、普通に受かった。

 さて、次に高3後期の模試の結果。後期は共通テスト模試を除くと2つしか記述模試を受けていない。一つは第3回全統記述模試。もう一つは河合塾の一橋大入試オープンだ。さきほど書いた通り、あまり勉強に身が入っていなかったので偏差値や判定を落とす結果になった。


 第3回全統記述模試 3年生10月

     点数  全国偏差値 校内順位

 英語 167/200   72.7    3位

 数学 82/200   56.7    21位(文系44名中)

 国語 108/200   63.4    21位

 世界史 80/100   72.2    3位

 国立文系      66.3    5位

 文系全体      69.4    8位

 判定(A=80%以上 B=65% C=50% D=35% E=20%以下)

 一橋社会Ⅽ 早稲田社学Ⅽ 早稲田文構Ⅽ 明治政経A 立教社会B


 一橋大入試オープン(河合塾) 3年生10月

      点数  全国偏差値 

 英語 136/250   57.4    

 数学 35/200    37.8    

 国語 62/120    59.5  

 世界史 78/150   66.1    

 総合  311/720   53.5   

 判定(A=80%以上 B=65% C=50% D=35%)

 一橋社会Ⅽ


 一応、一橋大社会学部の判定がボーダー(50%)には乗っていたということが自分を絶望させるには至らない絶妙な悪魔の判定で、モチベーションが低迷していたことの一因となっている。因みに数学が悪すぎるのに判定がⅮ・Eにならないのは、一橋社会学部の二次試験の配点に起因する。820点のうち、英語280点、世界史230点、国語180点、数学130点というトンデモ配点である。文系で最難関国公立を目指しているが数学ができない人は皆、一橋大社会学部に集うのだ。

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