ダブルベッドに死体がひとつ(その25)
すでに夜9時を回っていたが、電話をすると杏奈はすぐに会いたいと言った。
杏奈は山口を結婚詐欺で訴えていたが、依然として山口のマンションで花凛と暮らしていた。
近くに駐車場がないのは分かっていたので、ノートPCを入れたリュックを背負って電車で向かった。
「よくそんな細かいところに気がつきましたね」
拡大したスクショを見ると杏奈はしきりに感心し、
「で、これをどうするのです?」
とたずねた。
「管理会社のサーバーにサルベージソフトをインストールすれば、改変前のオリジナル画像を復元できると思います。それか、警察にまかせるか、です」
杏奈は眉根に皺を寄せて考え込んだ。
「警察はこのことを知らないのですか?」
「おそらく、まだ知らないと思います。・・・でも、駅前のアーケードからマンションまでの道のすべての防犯カメラをチェック中で、見つかるのは時間の問題でしょう」
「だから、彼は観念して自白したのでしょうか?」
「それは分かりません」
「・・・東條さんの今までの調べでの結論は?」
「結論はまだありません。・・・防犯カメラの件では、証拠品のトランクケースがもどされた日が不明です。部屋に元々あったものではありませんし、殺して持ち帰ったのなら、殺したその日にどこかに隠すか捨てたと思います。どうしてリスクを冒してまでわざわざもどす必要があります?永遠に杏奈さんの部屋に隠せるものでもありませんし・・・」
「やはり、すべて正直に話して、警察にまかせた方がよいのでしょうか?」
杏奈の気持ちは、右へ左へぐらぐらと揺れ動いていた。
「下着を盗まれたとおっしゃっていましたね。住民の中で、下着泥棒をするようなひとに心当たりはありません?杏奈さんに好意を持っているひと、あるいはストーカーまがいのことをするひととか・・・」」
突然話題が変わったので杏奈はとまどったが、
「いえ」
と首を振った。
「じつは、あのマンションの住民の名簿を手に入れて、それらしい人物を探したのですが、いませんでした。・・・お向かいの305号室も会社の所有物件ですが、空き部屋のようですね」
「ええ、会社は、北向きで結露がひどい部屋なのを知らないで買ってしまったようです。今のところ買い手も借り手も見つかりません。それで、そのまま空き部屋になっています」
「いちど中を見せてもらってもよろしいですか?」
「ええ、社長さんに言って鍵を借りておきます」
・・・何の当てがあった訳ではないが、話の行きがかり上そんな話になった。
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