第19話 100%私を選んで
その日の晩、俺は佳奈と二人、ベッドに寝ていた。
佳奈に呼び出されてラブホテルにいる。何をしたかは察しの通り。
佳奈の提案はこうだった。
「古都はそのまま彼女と付き合い続けて。私は慎也と付き合う。」
決意の固そうな佳奈の顔を見て、ああ、本当に見切りをつけられてしまったと肩を落としたのもつかの間、
「私たちは月に一回会うことにしよう。お互いの相手には絶対に言わないこと。」
「それは、浮気をするってことか?」
「そう。古都とその彼女、私と慎也、それか私と古都。誰かが結婚するまでの約束で。その間に古都はどちらかを選んでほしい。」
「なんでそんなことを・・・。」
「だって、古都は本当にはどちらかを選んでいないでしょう?今は私を失うのが怖いから私を選ぶと言っているけど、私を選べばまた古都はその彼女に未練が残るよ。私はそんなの嫌。」
ぐうの音もでなかった。図星だから。
「ごめんね、古都に決定権はないよ。私だってそんなの嫌なの。だけど古都が他の女を思いながら私と付き合うのはもっと嫌。だから、もっと時間をかけてちゃんと選んで。それか、今日で私たちは終わり。」
終わりと言われて、俺はその条件を飲んだ。
「お前は慎也のことが好きなんじゃないのか?」
「うん?好きだよ。人として好きだし、このまま結婚したって構わないと思ってるよ。」
「だけどさ、そう言うんじゃないじゃん。湧いてくる感情はさ。私は古都が好きなの。古都が私も彼女も好きなのだって理屈じゃないでしょ?」
そう言われたら反論できない。どこまでも佳奈が正しい。
「浮気は大切な人を裏切る行為だと思うよ。だから、絶対に知られないようにするの。私たちだけが罪悪感で苦しめば良い。わかった?」
「ああ、わかった。・・・あの、ごめん。俺が悪いのに。」
「そうだよ。古都が悪い。だけど、私は古都を忘れたりできない。もうこの話は終わりにしよ?二人でいるときは私だけを愛して・・・。」
二人きりで離したいからとラブホテルに来ていた。そしてその提案を受け入れた俺は、そのまま佳奈だけを愛する行為をしたのだった。
こんな提案をするほどだ。佳奈には佳奈の強さがあるように感じられるかも知れないが、話している間の佳奈はずっと涙目だったし、会ったときにはすでに目が赤く少し腫れていた。
こうして俺は、親友と恋人を裏切ることを決めた。
結局、愛し合った後に二人で寄り添いながら寝ていると、佳奈は、
「会いたかった。すごく辛かった。」
そう言って、ボロボロと涙を流して泣いた。
「100%私を選ぶまで、私頑張るから。」
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