第17話 未練と後悔

 8月のお盆休みに入った。

 俺は今独り、地元に帰ってきている。


 佳奈と連絡が取れないまま、紗良との交際は順調に進んでいた。それはそうなるに決まっている。付き合い始めてまだ数ヶ月なんだ。二人にとって楽しい時期に決まっている。慎也や喜美に言われたとおり、そうすることが一番なのだと割り切った・・・つもりでいた。


 ただし、俺はずっと佳奈が恋しかった。日が経つにつれて佳奈とのことは諦めが付くかと思ったが、会って謝りたい気持ちは増していった。いや、それだけじゃない。紗良と順調に関係を深めれば深めるほど、自分が選ぶべきだったのは佳奈ではないかと思い始めていた。


 もちろん、紗良に対する想いがなくなったわけではないが、仲良くそばにいればいるほど佳奈に対する罪悪感が湧いた。そしてその気持ちがあることで紗良にも罪悪感が湧いた。


 だから、連休は親の都合で一人で地元に帰ると言って、紗良といられないことを謝った。紗良が少しつまらなそうな顔をしたが、それはそれで心が揺らぐ自分に嫌気がさしつつも、一度佳奈に会いに行くことはどうしても譲れなかった。




 実家に着くと、まず荷物を置いて裏山にある神様に拝みに来た。俺が最初にここを見つけたときには雑草が茂って荒れ放題だったが、祖父がきちんと手入れをしてくれているようだ。綺麗にしてある。


「ずっと忘れて誰も誰も手入れをしていなかった神様に、いきなり俺が来てお願い事なんかしたから罰が当たったのかも知れない。」


 ふとそんなことを思いついたが、妙に納得がいく。

 考えても見ろ。神様に対しても身勝手で、好きな人に対しても身勝手なことをしていたんだ俺は・・・。



「さて、佳奈の家に行くか。」




 佳奈の家に着くと、玄関のチャイムを鳴らした。奥から「はーい」と声が聞こえて、それが佳奈であることがわかると、ついに会えるという期待と拒否されるかも知れない不安で震えた。


 玄関が開かれ、久しぶりに見る佳奈の姿。


佳奈「はい、どちら様で・・・」


古都「急に来てごめん。」


佳奈「古都・・・。なんで来たの?」


古都「まずは謝らせて欲しい。ごめん。」


佳奈「・・・それだけ?ならもうわかったから、帰って。」


古都「ちょっとだけ、あと一つ聞いてくれないか、」




古都「彼女とは別れるから、俺と付き合って欲しい。」






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