決着

『く、くそ失敗したか…次こそは…う…』

アロガントは倒れたまま呻いたが、衝撃波によって意識を失った。

『お前に"次"は無いぞ。留置所に連れて行け。コイツの言葉が誰かに操られて言わされた可能性もあるからな。』


その言葉と共にゼースは気絶させアロガントをどこからか現れた黒服達に連れて行かせた。

『ところで、タカシだったか?アレとはどういう関係なんだ?』

こちらに向き直ったゼースはそう問いかけてきた。

『ほぼ初対面というか、難癖付けられたって所ですね…』

『私らの事をモノにするだとか、俺の女に手を出すなとかおかしな事を言って決闘を吹っかけてきたのよ。』

『…今回の一件についての演説してたから、聞きに行ったら難癖つけられて決闘になった。…そもそも演説の内容からしてこちらに喧嘩売ってる。』

妙な色の魔力も消えているようだし、俺たち以外にもアロガントの話を聞いていた人たちはたくさんいる。

決闘空間が広がった際に、他の観覧者達は空間外に移動されてたし、異変が起こった時には多くは逃げていた。

『演説を聞いていた人たちは幸いにも巻き込まれていないみたいだな。それに、ここら辺はギルドが近いからか、ギルド関連の建物や露店があるくらいで、住居はほぼ無い。』

そのギルド関連施設も訓練所だったり物置だったり空き部屋だったりと人が余り近寄らないような施設が多かった。

『それは不幸中の幸いというやつだな。それと、お前たちはアロガントにいきなり因縁をつけられて決闘する羽目になり、彼が暴走した結果こうなったという事だな?』

ゼースは俺たちの話を聞いて確認する。

『ええ。それで合っているわ。あ、念の為言っておくけど、嘘を言って誤魔化してるということは無いわよ。』

こちらとしても、疑われるのは嫌ということと、嘘をつくメリットも無い。

『心配するな。俺としては、諸悪の根元はまた別のところにいると見てる。だが、アロガントを無罪とするわけにはいかないし、奴の記憶を読む。』


それが1番手っ取り早い…ってそんな事出来るのかよ…

『という事は、もしかして、それが終わるまでこの街から出られないってことかしら?』

『そういう事になるな。警邏隊にアロガントの部下を引き渡してるって報告もあったし、嘘をついてる様には思えないが、証拠は重要だからな。なにより記憶を読めば、事件の真相が掴める。』

ゼースの目は俺たちを疑うというよりも、もっと別のところを見ている様だった。

『ま、なるべく早く終わらせてほしいわ。』

『心配するな。大して時間はかからん。ひとまず、帰って良いぞ。』

『あら、そう?それじゃお言葉に甘えて。』

『あ、帰っていいんすか。やった。』


『…やっと帰れる。…疲れた。』


気だるそうに帰路に着くルキナとノワルの後を追いタカシも帰ることにした。

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