第10話完全犯罪

和扇(歌保)を見送ると、佳子はすぐに

甥の矢田陽一に、電話をした。


「もしもし、陽一?今ね霊媒師の人が来て

たんだけど、家にも、あんたの所にも悪霊が

取りついてるんだって!それで不幸が起きたんだって、お札を頂いてるから、取りに

来なさい!」


「え~?そんなの本当なの?」


「だって、こっちが何も言わないのに、不幸が有った事を、全部言い当てたのよ!そして

陽一あんたの所の事も!」


「へぇ~じゃあ、貰いに行くよ!」


歌保は帰ると、木村家と矢田家の話を

聞いていた。

木村家は、帰って来た泰造と息子の修造が

和扇の話を佳子から聞いて、お札に2000万

も払った事に、激怒していた。


「そんな札に、2000万?どうなっているんだ!お前、そんな札は効かないぞ!俺は

今日、車をぶつけて、おしゃかになったからな!」


「もっと早くに、お札を奉ってれば、そんな

事には」


「お前!しっかりしろ!そんな物に、お金を

ボンボン使われたら、たまらんぞ!」


「でも、あなた命には変えられません!

真保の事が、有ったばかりだから!」


「…でも、そのせいで俺は議員辞職に迄

追い込まれたんだぞ!」


「あなた…真保の事は?」


「知らん!人殺しをする孫なぞ、いらん!」


「あなた…」


その頃、矢田家では


「えっ!このお札が1000万?」


「こんな、札より、お金が欲しいよな!」


「本当、美咲が亡くなって、お金が要る事

ばかりなんだから!」


「本当だな!その札どうする?」


「どっかに置いとくよ、捨てると佳子おばさんに聞かれた時に、困るから」


「そうだな」


両家の話を聞いていた歌保は


(この人達は、人の子の命どころか、自分の

子や孫の命も、何とも思って無いのね!

人として最低の人達だわ!復讐するのに

もう躊躇する必要も、無いわね!)


そして夜になると、黒田真由美から電話が

掛かって来た。


「はい、分かりました」


そう言って、歌保は電話を切った。


「充さん、少し出て来ますから」


「歌保?もう始まってるの?」


「うん、少しずつ、でも充さんは、やっぱり

知らない方が、いいから」


「それは駄目だよ!俺にも、ちゃんと言って

くれないと!」


「充さん…じゃあ帰って来たら話するから

時間が無いから、用意して行くね」


「歌保、帰りを待ってるから!」


「うん!」


歌保は変装をして、足元には二重にした

ビニール袋を使える様にして、レインコート

手袋、全て用意して黒田家に向かった。

チャイムを鳴らすと、真由美が出て来た。

黒田浩は、ぐっすり寝ていた。

歌保は話を聞く振りをして、真由美にお酒を

飲ませた。

真由美も、動揺してか睡眠薬の入ったお酒を

飲んだ。


「少しは落ち着いた?」


「ありがとうございます」


そして、ゴクゴクお酒を飲む真由美。


「何だか、気持ちが軽くなりました!」


「でしょう?」


そして、話していると真由美は、浩の隣で

眠りについた。

歌保は、レインコートを着て、足元は玄関

からビニール袋を巻いていた。

手には手袋を、していたが真由美は、動揺

していて、歌保の事等、全然気にしていなかった。

歌保は寝ている、真由美に包丁を握らせて

浩の心臓目掛けて、深く差した。

そして、その包丁で真由美自身の首を切り

付けた。

レインコートに、返り血が飛ぶ。

歌保は、二人を殺すと、盗聴器を回収して

黒田家を後にした。

帰った歌保は


「だだいま」


「お帰り」


充は歌保を、抱き締める。

待っている充の気持ちは、不安に押し潰されそうになる。

歌保は充に、計画している事、今して来た事を話した。

充は絶句していたが


「歌保、俺に出来る事は?」


「じゃあ、私を見守ってて欲しい!」


「何だよ!それは!」


「充さんが居てくれるから、私頑張れるの

それだけで十分なの」


「歌保…分かった!」


そして歌保は、血の付いたレインコート等

犯行に使った物を、全て細かく裁断して

矢田家に向かった。

矢田家の二台の車に、ペンキを掛けた。

購入すると足が、付き易いので家に有る

ペンキを持って行った。

翌日、歌保は裁断した証拠品とペンキの缶を

クリーンセンターに、持ち込んで自分で

焼却炉に投げ込んだ。

これで、証拠は何も無くなった。

お昼過ぎに、近所の人が黒田家を訪ねて

遺体を発見して直ぐに110番に通報した。

現場に、権田、柊、早川がやって来る。

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