第12話柊に、お見合い話が

「まぁ、冤罪を起こさずに済んだから

今日は三人で、飯でも行くか?」


「え~三人すか?」


「何だよ!早川!」


「僕は柊さんと、二人がいいっす!」


「早川~家は三人しか居ないんだぞ!

何を考えてんだ?柊に聞いてみろ!」


「柊さん、二人でご飯行くっすか?」


呆れた柊は


「行かない!三人でなら行くよ」


(が~ん、が~ん)


落ち込む早川。


「権田さん、駄目だったっす!三人で

お願いするっす」


「ったく!最初から分かってんだよ!早川

お前に柊は無理だぞ!」


「え~!どうしてっすか?まだ分からない

じゃ無いっすか!」


「まぁ、少しは冷静に考えろ」


「何すか?それは?」


柊は、もう笑いながら二人の、やり取りを

見ている。

そして


(私も、もう結婚しないといけ無い年齢

だなぁ?真剣に彼氏を作らないと)


そんな事を考えていた。


「で、何が食べたいんだ?」


「僕は中華っすね」


「え~私は、お寿司がいいな?」


「じゃあ、お寿司っすね」


「早川、俺の意見は、どうなってんだよ!」


「権田さん、ここはレディーファースト

ですよ!ね?柊さん?」


「ね?早川」


「もう、じゃあ寿司でいいよ」


呆れ果てる権田、仕事が終わると三人で

寿司屋に向かった。


「さぁ、食べるわよ!」


食べる気、満々の柊は次々に、注文して

いって、ペロリと平らげる。

呆気に取られる、権田と早川。

早川は権田に


「柊さん、胃袋、何個有るんすかね?」


「早川、聞こえてるよ!」


ビクッとする早川は又、権田に


「地獄耳っすね」


「それも、聞こえてるよ」


そう言って、早川を睨むと早川は目を

合わさない。

権田が


「折角の食事だそ!楽しく食べろよ」


「そうですよね」


「はいっす」


そして三人は、仕事以外の話をして

和気あいあいと食事を、楽しんだ。

会計の時、権田がスッと伝票を持って

会計を済ませてくれた。


「えっ?権田さん、私も払いますよ」


「そうっすよ、僕も払うっすよ」


「いいんだよ!ここは最年長の俺が

払うから、気を使うな」


「はい、ご馳走様です」


「ご馳走様っす」


こういう所は、権田はあか抜けていた。

柊は


(権田さん、やる事がスマートなんだよね

それに武道も強いし、いいかも?あ~

駄目、駄目、同じ職場の人に恋愛感情は

駄目だよね)


一人、モンモンとして居ると、それを

見ていた早川が


「柊さん、どうしたんすか?」


「え、え?何が?」


「一人で百面相してるから、見てて

面白かったっすよ」


「え?百面相?」


「はい、何か考えてたんすか?」


「あっ、嫌ちょっと」


「怪しいっすね~」


「柊、大丈夫か?食べ過ぎか?」


権田の方を見て、顔が熱くなるのが

分かった柊は、うつむいてしまった。


「柊さん、顔が真っ赤っすよ!やっぱり

食べ過ぎたんすか?」


「うん、そうみたい」


「ハハハ、あれは食べ過ぎっすよ」


「柊、今日は帰ったらゆっくりしろよ

お前に寝込まれたら、困るからな」


「はい、そうします、ありがとうございます」


そして三人は、家路に着いた。

帰る途中、柊は心臓がバクバクするのを

感じていた。


(ヤバい!私、本当に権田さんの事を?)


ブルブル頭を振る柊。

家に帰ると、母から留守番電話が入って

いた。

柊は直ぐに、電話を掛けた。


「お母さん?留守番電話が入ってたけど

どうしたの?」


「悠里、元気?」


「うん、お父さん、お母さんは?」


「私達も元気だよ、実はね悠里に

お見合いの話が来てるんだけど」


「え?お見合い?嫌だよ、断って」


「あんたね、もう良い年なんだから

そろそろ結婚しないと、子供が生めなく

なるよ」


「でもお見合いなんて」


「一度、会うだけ会ってみたら?それで

嫌なら断るから」


「うん、分かった」


そして電話を切った柊は


(お見合いなんて嫌だ~行きたく無いよ)


そう思いながら、シャワーを浴びて眠りに

ついた。


翌日


「おはようございます」


「おはよう」


「おはようっす柊さん」


「柊、体調は大丈夫か?」


「あ~はい、大丈夫です」


「良かった、良かった」


「本当に良かったっすね、じゃあコーヒー

入れるっすね」


「ありがとう」


そして三人で、コーヒーを飲みながら

資料に目を通し、調書の作成なんかを

しているが、今日は元気の無い柊。


「柊、どうした?何か有ったのか?」


「あ~いえ」


「何だかおかしいぞ!」


「権田さん、柊さんは可愛いけど変人な

所が有るから、それが出てるんすよ」


「早川~あんたね、何時まで私を変人扱い

する気なのよ!」


「お?何時もの柊に、戻ったな?」


「権田さん、柊さんは賢いのか、単純

なのか分からないっすね」


「そうだな」


権田と早川は、笑っている。

柊は内心、穏やかでは無かった。

権田の事を意識し始めてからの、お見合い話

断る事も、出来ずにお見合いをしないと

いけないと言うだけで、心が沈んでいた。

こんな日は、事件も無く、ただデスクワーク

をこなす、だけだった。

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