放課後のさくら

るなち

放課後のさくら

第一章

第一節

 私とひなは冬から二人で自殺すると決めていた。それは、私達――同性愛者に対する周りの目が厳しかったからと言うのもあるし、このまま社会人になって更にその苦しみを味わうくらいなら今の幸せを噛み締めたまま、未来の敗北から勝ち逃げをしてしまおうと言う趣旨だった。

「みくりちゃん、準備は出来た?」とひなは私に聴く。私たちは桜の木の下で縄をハングマンズノットと呼ばれる結び方でキツく結び、反対側を木の枝に括った。「出来てるよ」と私が答えるとひなは満開の花を彷彿ほうふつとさせる笑顔で私を見る。覚悟は出来た。

 台に乗り「せーのっ」とひなが最後にとびきり明るく、それでいて奥底で震える声を隠しながら掛け声を掛ける。私たちは台を蹴飛ばす。首に縄が絞まる、苦しい、苦しい、苦しい――。

 縄が絞まるのが痛いのか、息が出来なくなるのが苦しいのか、何もかもがわからなくなっていく中、隣のひなを見る。まだ笑顔だ、最後まで笑顔だ。それがとてつもなく愛おしく、同時に死ねるのが誇らしくも思えた。これでずっと一緒だと、そう思った。

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