第10話 頭に「こ」のつく映画といえば?
若いうちは何とも思っていなかった、当たり前だった「健康な自分」ですが、年齢を重ねていくと、肩が痛い腰が痛い、徹夜がしんどいし寝付きが悪いし、すぐに目が疲れて文字を読むのがツライ……というのが日常となってきて、「不健康な自分」の状態の方が、当たり前になってくるようです。
入るだけで、肉体的に若返る温泉とかプールがあればなあ……なんて夢を抱いているアナタにオススメの作品。
頭に「こ」のつく映画、「コクーン」を紹介します。
原題はそのまま「Cocoon」。「繭」という意味です。
1985年のアメリカ映画。監督はロン・ハワード、出演はドン・アメチー、ウィルフォード・ブリムリー、ヒューム・クローニン、ブライアン・デネヒーほか。
フロリダの老人ホームで余生を送っている老人たち。
その中でも、ベン、アート、ジョー、おじいさん3人組の楽しみは、近所の空き別荘に忍び込んで、そこの広い室内プールを無断で使い、ひと泳ぎすることでした。
しかし、その別荘は、ウォルターと名乗る男とその仲間たちに借りられてしまい、楽しみがなくなってしまいます。
別荘を借りたウォルターは、船長・ジャックを雇い、フジツボに覆われた謎の球体を次々と海中から引き揚げ始めます。
ジャックも「これは何だい?」と聞きますが、高額な報酬を前に「ま、俺は金さえ貰えれば、深入りしないけど」と詮索をやめました。
ウォルターの仲間・キティに惹かれたジャックは、彼女がダイビングスーツを脱ぐのを船室のドアの隙間からこっそり覗き見るのですが、そこでキティが「人間の肌」も脱いで、宇宙人としての本来の姿を晒したことで、ジャックは彼らの正体を知ってしまうのです。(ここ、ちょっとゾクッとする怖いシーンです)
見られたことを知ったウォルターたちは、素直に事情を明かしました。彼らは、アンタレス星から来た平和的な宇宙人だったのです。
海に沈んで、「繭」の中で帰還を待っている仲間たちを連れ帰るために、引き揚げ作業をしているのでした。
一方、空き別荘のプールで泳ぐスリルが忘れられないベンたちは、ウォルターの留守を狙って、別荘に侵入します。
プールの底には、不思議な球体が沈んでいました。ウォルターが海中から引き揚げた「繭」が保管されていたのです。
不気味だけど気にすることはないさ、泳ごう泳ごう、とベンたちはプールを楽しみました。
そこに、ウォルターが戻って来ました。
不法侵入が見つかってしまいましたが、ウォルターは「繭」を動かさないこと、プールで泳ぐのは数人だけ、という条件のもと、見逃してくれました。
翌日から、ベンたち3人の身体に異変が起こります。若者のように、いや、若者以上に、元気で活動的になっているのです。
スケボーを軽快に乗りこなしたり、ストリートバスケを楽しんでいる青年たちからボールを奪い、ゲームで勝負しても年寄り3人が圧勝します。老人とは信じられないほどの軽快なアクション。
活力を取り戻した老人たちは、女遊びのために夜の街にも繰り出したり……。
老人ホームの仲間たちも「あいつら急にどうしたんだ」と訝しみ、事情を聞くと「あの別荘のプールで泳いだからだ」と分かります。
そして老人たちが大挙して、全員でプールで泳ぎ始めました。
ですが、そのプールは、「繭」の中で眠る、傷ついたアンタレス星人を癒すための生命のエネルギーを送っている場所だったのです。
ベンたちが活性化したのは、そのエネルギーを吸収したからでした。
数人だったら影響がなかったのですが、大勢の老人たちでプールに入り、そのエネルギーを吸収したため、「繭」の中で眠っているアンタレス星人にエネルギーが届かなくなってしまいました。
慌ててやってきたウォルターの前で、衰弱していた「繭」の中のアンタレス星人は、命を落としてしまいます。
もはやプールのエネルギーは使えません。「繭」の中のアンタレス星人を、ウォルターたちは苦渋の決断で「繭」のまま海中に戻すことにしました。
そして、自分たちを回収しに来る宇宙船を待つことにしたのです。
謝るベンやアート、ジョーたちに、ウォルターは「共にアンタレス星に来ないか」と誘います。
向こうの星に行けば、病気もケガもない未来がある、地球とは異なる科学や文明がある、それを学んでみる気はないか、と。
ただし、宇宙船に乗り込めば、地球に帰ってくることはできません。家族たちとは、もう、二度と会うことができなくなる……。
地球に残る者、旅立つ者の、別れの時が訪れる……という、老人と宇宙人たちの心の交流を描いたSFファンタジーです。
年を取って、老化による体の負荷のせいで思うように動けない、それが、すべて解放されるとしたら……なんとも魅力的な提案ですが、家族と別れるとなると……どうでしょうか。
老いること、死にゆくこと、身近な人を置いていくということ……様々なことを考えさせられる作品です。
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