第58話

 金城一鬼は無視して大海原へとむかった。

 金城ひろかんとする。これでよかったんだろうか。おれたちは『本統の父親』なしで大丈夫だろうか。金城ひろと金城かなえはれん色の半透明のパラソルのしたにすわって金城一鬼を見守る。金城かなえはいう。いわく「東日本大震災のときはね水がこわくなってしょうがなかったの。避難所でくばられたミネラル・ウォーターもこわくてのめなかったの。なのに一鬼はぜんぜん水をこわがらないんだよ」と。しばらく虚空を凝視したのちに金城ひろはこたえた。いわく「一鬼も水はこわいんじゃないかな。でもおれがいるから安心できるんだろう。人間はよわいからだれかにまもられないと生きてゆけないのかもしれないな」と。である。金城ひろと金城かなえがふたたび日本海をべつけんすると『金城一鬼のすがたはなかった』。金城ひろこつえんとしてしようりつし一鬼がゆうえいしているはずのかいわいはるかした。いた。一瞬だがしんぎんしている金城一鬼のとうが水面からあらわれた。同時に金城かなえが絶叫する。

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