第21話

  第二章


 特定非営利法人『素粒子脳科学研究所』にみなはしようしゆされていた。

 日本列島津津浦浦の研究者や宗教家たちに白衣の金城ひろは解説する。

「脳科学では脳内における神経伝達物質の発火をそれぞれ『物語』とよびます。生命の脳内では無数の物語が誕生しているわけです。ではなぜわれわれは『巨億の物語のかずだけ意識が存在する』のではなく『ひとつの意識が中枢となって世界を観測している』のか。それはいまだに理解されておりません。ようなる状態を『物語の重力場の中心』という専門用語で補完しているだけです。ただしのうよりこの問題にはさまざまなアプローチがなされてきました。ライプニッツのいうように『すべての原子は陰陽の側面があるモナドであって各モナドに精神がやどっている』というとさきほどの『物語の重力場の中心』というかんがえからも荒唐無稽におもわれるでしょう。ですがノーベル賞も嘱望されているペンローズ博士による『量子脳理論』においては『神経伝達経路ひとつひとつがマイクロチューブルをなしていてそれぞれに魂がやどっている』とされます。『人間は死ぬとマイクロチューブルとともにそこにやどった魂が外界に放出されてほかの生命に摂取される。これがりん転生だ』というような主張もされています。ここが重要なのです。『人間はふだん物語の重力場の中心でしかものごとをることができない』つまり『脳内の一箇所において波動関数の相補性を観測している』とおもわれがちですですが以上のことから『脳髄はひとつひとつのマイクロチューブルをもって宇宙を観測しているのではないか』ということです。さきほどもうしあげたとおり『マイクロチューブル』とは『魂』ともいえるし『幽霊』ともいえる。つまり『霊的な視座から宇宙内の量子の相補性を観測すると霊的な存在も量子力学的に粒子化される』のではないか。結論をもうしあげますと『脳内のマイクロチューブルで「かみがみは本統に存在する」というベクトルに世界を観測すると「かみがみが本統に存在する」ことになる』のではないかとかんがえられるのです。

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