第14話

 りゆうかなえは意識がもうろうとする。

 なにがおこっているんだろう。なんで一鬼はいないんだろう。そもそも『神様はなんでこんな仕打ちをするんだろう』と。やがて武藤山の下方に位置するくだんの実家のはいきよのなかからふく前進してぬらりひよんと一鬼があらわれた。満面の笑顔の一鬼は右手に亡父や母親とともに松島湾で撮影した家族写真をかかげていた。りゆうかなえは「」とほうこうして階段をくだってゆこうとする。武藤氏や隣人たちがまんじともえとなってりゆうかなえの肉体をがんがらめにしてぼうぎよした。りゆうかなえは「一鬼はやくこっちへきなさい」と絶叫する。てんしんらんまんなる笑顔の一鬼はようやくとんそうしはじめる。ほうはいたるごうおんふんぷんたる悪臭とともに神松島市内に津波が猛襲してきた。きようりようなる津波ははちがいの家屋という家屋をどんぜいしてれきの団塊となってながれてくる。かいなる土砂をほうした津波は沖合からけんいんしてきた巨船やほうはくたる東北の大地からだつしたまるごとのマンションといったきようをひしめきあわせ一鬼へとばくしんしてくる。各地のせんぱくで分岐しながられきと死骸をはこんでながれてくる津波がかなたにみえる状態で一鬼はかんとして武藤山へと疾駆してくる。これならばまにあう。りゆうかなえが猛烈なるあんとともに気分がこうようしたときだった。あ。とかなえがおもう間隙に一鬼はもとからおとしてしまった家族写真をひろわんとしてそんきよした。

 刹那たる津波が一鬼くんにおそいかかった。

 一鬼くんは享年六歳であった。

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