第2話 絶つ命 繋ぐ命
ある時を境に、遍く全ての世界にスキルが実装された。
誰が願ったのか、それまで世界に蔓延していた不公平は突如として発生したスキルに寄って変わった。
獲得要素は判明していないが、苦手な事や生まれた地域で不利な事を克服出来るようにスキルはポップする。
そしてスキルには高レベルスキル低レベルスキルの他に、ユーティリティスキルとして所持しているだけでマイナスになるスキル…例えば『死の呪い』例えば『筋力-100』等も存在する。
しかしスキルはお互い了承の上で一定の動作と言葉を交わす事により初めて受け渡しが出来る。
ポップした瞬間なら破棄できるし、交換や取引も可能なのだ。
「……ふぁああああぁっ」
ねむねむ…
「
「…ふぁい」
歯磨きして洗顔後に保湿とUVカットクリームを塗って、今日もバッチリ美少女!
テーブルに着くと超美形の女の人がいた。
頭にコロちゃんを乗せている。
「月花、お早よう」
「ママー!知らない人がテーブルでお茶飲んでるー」
「パパでしょー!」
近寄って触って確認する…
「…ホントだ!パパだ!」
「スマホでも顔認証素早いのにっ!毎回認証エラー出すの止めなさい!」
「そうよー!弄り方上手になってるのはパパの血よね!」
「血の繋がりを感じざるを得ない!」
そう、この人が私のパパ。
とても優しく、とても強い…らしい。
同性婚なのでパパも女性なのです!
今の時代はLGBTが伸び伸びと生きて行ける時代だから子供もスキルで何とかなる。
私が結晶で壁を作ったり飛行したり出来るのはパパの血筋のおかげらしい。
因みに今でも超ラブラブな夫婦なので困った親である。
最近美味しくなったと評判のママの料理が出て来た。
今日は和食だ。
「パパ、最近はどこに行ってたの?」
「詳しく言えないけど、海外でデバフスキルを悪用して美術品強盗をしていた組織を一網打尽にしてきた」
「お仕事って警察なの?」
「あー…いや、色々だ。基本オアシカカフェのスタッフの筈なのに数年職場に立ってない…」
「誤魔化すあたりが非常に怪しい…」
「パパはねー、色々な処から頼りにされてるから♡」
「それはママもだよ。そして今も変わらず可愛いよ」
「もーやだーパパったら!////超しゅき!」
たまに帰ってくると毎回これである。
「行ってきまーす!」
私達の本業は中学生なので地元の一番近い中学に進学した!
「
「月花、おはよー♪」
「月花、ちゃんと宿題してきたかい?」
「うんうん、勉強してない分提出物でカバー!」
「それカバーになってる?」
「小花ちゃんも式部も勉強しなくても読解力があるからいいなー!」
「1時間だけ勉強!とか短期集中の積み重ねもいいよー♪」
「その一時間をついママとレトロゲームの熱いバトルに使っちゃって…」
「あるある!うちもママとホラー映画見るから四時間位飛んじゃう!」
「お姉ちゃんホラー映画好きすぎでしょ…私も嫌いじゃないけどスプラッタシーンで肉とかジャーキー食べてる姿はちょっと…」
「彼氏でも出来たら変わるんじゃないかな?♪ママまだ二十代にしか見えないし…」
「そうだね、お姉ちゃん初めからシングルマザーの道選んじゃったもんね…でも一度だけ『その人以外好きになれない』って言ってたの聞いたから…」
「小町ちゃん…その人の事、そんなに好きだったんだね…」
「お姉ちゃんの前で言っちゃ駄目よ?たまに暗くなるから…」
「大丈夫だにゃー!♪」
片親は寂しい事もあるだろうし、私が式部を支えてあげなきゃ!
横断歩道に差し掛かって、信号待ちをしていると突然傍にいた小学生が横断歩道に出て座り込んだ!
車も直進してくるが運転手がスマホを見ていてブレーキを踏まない!
「
ブレーキを踏まない車を、結晶で作ったスロープに乗り上げさせる!
コンビネーションが慣れたもので、式部は素早く小学生を歩道に戻した。
「馬鹿野郎!何しやがる!」
「何しやがるじゃない!あんた今スマホ見てたでしょ?小学生を轢きかけたんだよ!」
「知らねぇよ!急いでんだ!早く降ろせ!」
一瞬で色々考えて、ゆっくり車を下ろして逃した。
「僕、赤信号の時は飛び出したら駄目だよ?」
「うん…でも…」
「みー!みー!」
「そうか、子猫を道路に救いに行ったのね?」
「うん…」
「偉いぞ、でも自分が死んだら何もならない。お母さんも悲しむし、美味しいものも食べれない。その事は忘れちゃいけないぞ?♪」
「うん…有難う!」
子猫は学校に連れて行くのか!
どこかに隠しておくのかな?
「それにしても月花、あの車をよくスルーしたね!」
「ふっふっふっ…小花ちゃん、スルーしてないよ!車をスクラップにしても良かったけど私達が不利になるし警察は面倒だから、本人にスロウを重ねがけしてやった」
「あー、私は視界の端にゾンビが見え続ける素敵なスキルかけてやったにゃ♪」
「実は私もタイヤ四本に小さな穴を空けるスキルやったったー!」
「小花ちゃん、どこでそんなスキルを!!」
「肉をフォークで刺して柔らかくしてる時よ?」
「血筋を感じざるを得ない!!!」
「式部、週末もう一回あのファンタジー世界行っていい?」
「いいけど、何か気になる?」
「竜の子を狩った目的が気になる…」
「そういや竜さん言ってたねー♪」
「火竜の子を狩るなんて簡単に出来はしない…計画的に時間を掛けて火竜が巣から離れた時にやったんだ…目的が少し気になるし、元の場所に返してあげたい」
「よし!週末はまたスイーツパーティーだ!」
「肉パーティーな!」
今週は学校疲れたにゃー…
授業参観があって、私と式部は同じクラスだから、六花ちゃんとママが親バカ炸裂させて応援を始めたから恥ずかしいのなんの…
最終的に後ろで喧嘩始めて、担任の龍安寺先生に叱られるという流れ…
そんなこんなで週末の朝。
ママが店長をしている人気店オアシカカフェ。
「ねぇ、ママ?」
「んーどうしたのかにゃー?♪」
「お悩み相談室なんだけどー」
「おう、人生の大先輩の華麗で偉大なるママに何でも相談したまえっ!♪」
「月花ちゃんが結晶を使って色々な事を出来るんだけど」
「うんうん♪」
「私も使えるの何でー?♪」
指先でくるくると結晶を回す。
「ちょ!」
ママが結晶を両手で隠す!
「ごめんね、一人の時はいいけど、月花ちゃんの家族の前では使わないで…お願い…」
「わ、わかったにゃー!♪」
そっかー…それは言えないよね、わかっちゃった…
うっかり出ない様にしなきゃ!
ママのお店オアシカ・カフェの屋上に作られた秘密基地へ向かう。
「月花おまたせー!」
「式部おはよー!」
「ねーねー、今度月花ちゃんのパパ帰ってきたら教えて!レアキャラを拝んでおきたい!♪」
「いーよー!帰ってきたらマーキングして座標を送るからマップで確認してね!」
『きっと…私のパパ…どんな人か俄然興味が湧いてきた!でも、そうなると月花とは母違いの姉妹になるのか…』
「よっし、いくよー!」
「おー!」
「ににー!」
『ダイヴ・イン!』
紐付けされたファンタジー世界へ向かう!
だば――――!
「…超大雨じゃん!」
「雨宿りするにゃー!」
コートのフードを被って急いで、近くのお店の軒先へ入った!
「ひー!一瞬でずぶ濡れに…」
「部屋を借りて着替えよ!あと温かい物食べたい!」
「賛成ー!寒ーい!」
折角部屋を借りたし、今晩はここに止まって拠点としよう。
「はわーギリ下着だけ無事…」
「見給え!またバストサイズが上がったにゃ♪」
「式部いいなー!私そこまで追いつけそうにない…」
「月花はそのままでもいーよ♡」
式部が薄着で勢いよくハグしてくれて、キスしてくる!
「はーいまだだーめ!ファースキスはロマンティックなとこって言ってんじゃんー」
「濡れる素肌…情感あってエロさあるよー♪」
「ロマンティック優先!」
「ちぇっ♪」
私達は相方であり、恋人同士。
幼い頃から、お互い魂で惹かれ合ってるって分かる。
無くてはならない、かけがえのない存在だ。
「ささ、着替えてお茶しよ!雨が上がるまでは動きたくないし」
「にゃにゃ!♪」
「ににっ」
宿屋の一階の食堂で暖かいお茶とシチューを頼む。
この世界のお茶は…まぁ何かの葉っぱから抽出したんだろうが、少し爽やかだ。
ジャスミンティーの少し日本茶寄りの味。
「あったけー…」
「一瞬で寒くなったもんねー」
「コロちゃん、シチュー来たらお肉あげるからねー♪」
「ににっ♪」
『お、今、聞き耳スキル使ってたらいい情報入ったよ』
『さす式部!』
『テーブルに竜の幼体を檻に入れて、お宝がどうとか話してる奴がいたって』
『そっか、竜は光る物や財宝を溜めこむ習性があったね…』
『もし、先日の火竜に街を襲わせたのだとしたら…』
『その間に財宝を奪う事も可能だね』
『この街に被害があろうとお構いなしの姿勢は許せない!』
「まずは身体温めて、晴れたら場所を特定しようか!」
「えーいつでも温めてあげるのにー♪」
「式部、小町ちゃんと本当そっくりだね///」
三人でシチューを食べ、部屋でスキルを使用し服を乾かす。
服が乾いた頃には雲の切れ間から光が差してきたので、着替えて準備する。
この街の西門から出て確認した時、火竜は北から飛んできた。
北方向、きっと山岳とか人が寄りつかない辺りに巣があるはず!
飛行結晶で遠くまで飛んで捜索しに行く。
正面に双子の様に山が
「二手に分かれよっか?式部、インカムしてる?」
「バッチリ!私、右行くにゃ!」
「式部!危ないかもだから、一応コロちゃん連れて行って!」
インカムは《社》が開発した広範囲をカバー出来る高音質広範囲通信機器で、付けたまま生活しても身体の微弱な電気で充電可能な優れ物なのだ!
山二つ分だから距離がある。
少したけ…式部と離れると気持ちが寂しくなる…
あ、大きな洞窟みたいなのが中腹にある…
「式部、こっちが当たりっぽいね」
『りょ!』
飛んだまま洞穴に入って見ると何かに衝突してしまった!
「痛っ!!」
くっ!何だ、結界!?態勢を崩した!!
落ちる!
「おい、何か音がしたぞ!」
「ゴルドの旦那!女のガキが倒れてます!」
「あぁ?何でこんなとこに…先に財宝掠めようとしてたのか…おい、両手を縛っておけ」
「はい!」
「さぁー竜の子供よ…先に進む為に家の封印を解いてくれ…お前は家に帰れるんだ…悪い話じゃないだろ…?」
大量の財宝を見越してか、丈夫な袋を抱えた大男が数人いる。
「おい、やはり不安の種は先に潰す。不審者の装備品を漁るから先に竜のガキを使って、竜の封印を解いておけ」
「へ、へい!」
「こーいうのはガキでも脱がすのは面白れぇんだよ…」
「……何が 面白いって?」
意識のない月花に触れられて怒りで理性が飛んだ
「あ?また女かよ…どっから出てきた?」
「その女は 私のだ 気安く 触るな」
「知るか。おい!もう一匹女がいるから捕まえとけ………おい!聞いてるのか?」
「死人に音が聞こえると思うか?…」
ゴルドが奥を見ると…男達が全員一本の槍で串刺しのまま絶命していた!
「…また山を降りて人を連れてくるの面倒なんだよ…お前は
重そうな剣を片手に、振りかぶってくるかと思いきや私に向けた瞬間雷撃が落ちる!
「
「これに掛からねぇとは戦い慣れてるな…だが、状態異常ならどうだ?心臓が止まればスキルも関係ない!」
「
「…な!俺のスキルが…ゼロになってる!」
私が保有する激レアスキルで、対象のスキルが幾つあろうとも全て盗んでしまう。
「戦いというのは…実力が近いから白熱し、研鑽や成長が生まれる…だが、お前は何だ?手下を殺されスキルを奪われ、哀れに蹂躙されるだけの、ただの
「
先程の剣を構え斜めに振り下ろしてくる。
私が右手を上げると死体から槍が抜けて手元に戻り、剣を片手で受け止める。
「憐れんでスキルなしで戦ってやっているのにこの程度か?」
「上から物を語るなガキ!!!」
蹴りを私の腹に放つが、バックステップで交わす。
「取った!蹴り足をそのまま踏み出せば一刀両断だ!」
「…今、間合いを見誤ったな?その剣は前に出ないと間合いに入れない…だが私の魔槍【グングニル】の間合いは………無限だ!」
「槍なんぞ弾けば…」
「
魔槍は剣を硝子の様に砕いて、ゴルドの胸を簡単に貫通し大穴を空ける!!
そのまま急旋回を繰り返し、何回も男を貫き絶命させた!
「我が魔槍は!何億キロ先であろうと!標的を外さない!絶対にだ!!!」
「ににっ」
コロが火球で親玉と子分達を灰にする。
どうやらコロちゃんも激おこらしい。
「コロちゃん有難うにゃー♪」
「にっにっ!」
今の男からスキルがポップしたが、生理的に無理な男だったので見ずに破棄した。
月花のコートの前を止めて、スキル【月光の相愛】で回復する。
「月花…月花!……………えいっ」
鼻を
「………ぷはっ!死ぬわっ!!!」
「月花が生きてたー♪」
「今、死ぬとこだったわっ!」
「人工呼吸マスターしてるから大丈夫だよ♪」
「人工呼吸使わない様にしてほしいっ!…で、私気絶してた?服破れてるけど、何か危ない事あった?」
「解決したよっ!♪それより竜の幼体が!」
「そっか、この子がいないと入れないのか…封印に当たって落ちたのね、私…」
ケージを開けると、幼体が洞窟の奥に進んでいき、封印らしき結界が解かれた。
何か肉が焦げた様な臭いがするが聞くと怖そうなので敢えて突っ込まない!
少し奥に進むと山積みの財宝が目の前に広がり、一匹のまだ若い火竜が見えた。
『
「いえ、話せば長くなるんですが…」
これまでの経緯を正直に話した。
『人
「私達はこの子を返したかったの。それだけ!」
「うんうん、争うつもりはないよ!」
『
「いやいやいや、御礼だなんて!」
『
「ああ、じゃあ一つだけ…」
私は短剣を一本、式部は指輪を一つ貰った。
『
「うん…お母さんと約束したから!」
「ドラゴンさん、縁があったらまた会おうね!」
『
「あれ?スキル貰えた!」
「私もだ!」
【竜の守護者】
火竜が近辺にいる場合のみ現在のスキル防御力を50%アップする
「50%は大きいねー!」
「先日のお母さんの御礼なのかもね?それより、スキルショップ行っていい?要らないスキルめっちゃ盗っちゃって」
「よし、お店閉まる前に行こうか!…式部…助けてくれて有難う!」
「当然!月花はずっと私のだからっ!」
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