第7話


推しの莉羽が僕の家にいることが嬉しすぎて僕は肝心なことを忘れていた。

なんで莉羽は僕のことをフォローしたのか、だ!

何百万人とファンがいる中でたった一人の僕のことを覚えてくれていた莉羽。

そんなことでさえ尊いのによくよく考えたら家にいるなんて気を失うレベルだ。


「ねえ莉羽くん」

「なに」

「ひとつ聞いてもいいかな?」

「さっさと言えよ、めんどくせーな」

「どうして僕のことフォローしたの。後なんで僕のこと覚えててくれたの」


よし、聞いた!聞いたぞ!


「お前のことしか思い出せなかったから」


ん?思い出せなかった?なにが?

主語をつけて頂ければもう少し理解ができるのですけども……


「どういう意味?」

「うるさい!ぜってー教えてやらない」


そう言いながら僕の背中に蹴りを入れてくる。

蹴られた……!尊い……!じゃねえよ!痛てーよ!普通に!


「教えてよ。気になるから」

「なんでそんな気になんの?」

「そりゃそうでしょ?自分の推しがフォロー返してくれてしかも自分のこと覚えてくれるんだよ?気にならないわけなくない?」

「……だから言っただろ。お前のことしか思い出せなかったって」

「だからその意味を――」

「あーもう!うるせえ!出て行く!」


え、ええ……なんでそこで怒るの?

ただ気になって聞いただけなのに。

莉羽……どこ行ったのかな。道とか迷ってないかな。探しに行った方がいいのかな?

はっ!どうしよう!もしも莉羽のストーカーとかがいてそのストーカーが莉羽のこと刺したりしたら……!大変だ!探しに行かないと!


急いで家を出て莉羽に電話をかけても繋がらなかった。

探し回ったけど莉羽はどこにもいなくてもし莉羽になにかあったらかと思うと死にたくなった。


「莉羽ー!!!お願いだから死なないで!!」


叫んでも莉羽が出てくるわけ――


「は?お前なに勝手に殺してんの?」

「え!? 莉羽くん!? 生きてたの!?」

「当たり前だろ。コンビニでいちごミルク買いに行ってただけだし」

「はあ……よかった……」


安心したせいで腰が抜けた。

推しになにかあったら僕なら死ぬ。

そもそも僕が莉羽を怒らせたんだから僕のせいでなにかあったら莉羽のファン達に殺されても構わない。


「なにしてんの」

「腰抜けた……安心して……」

「お前バカだろ。なんでわざわざ探しに来たんだよ」

「だって……莉羽くんがストーカーに刺されたらとか変な想像しちゃって……」

「バカだろ、ほら、ん」

「え?」


莉羽は僕に手を差し出してくれて中々その手を掴めないでいた僕の手を掴んで「帰るぞ」そう言った。

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