第2章 キリシタン

西へ行くんだ!

 ボクは、西へ向かって東海道を歩いて行った。

 西には、京という都があると和尚さんから聞いたからまずは、そこへ行ってみようと思ったんだ。

 結構遠かったけど、楽しい旅だったよ、疲れた時は、途中の茶屋で、休憩したりしたんだ。

 道中で、初めて食べたのが、うどん、そこそこ美味しいけど、ボクは、おそばの方が好きかな、みんなは、どっちが好きかな?

 この時代に、日本に入って来たのはキリスト教、鉄砲、たばこ等、色々あるけどね。鉄砲が来たおかげで仲間のたぬき達は沢山殺された。

 人間同士の戦いの道具として改良されて、今も使われているよね。鉄砲なんて日本に来なければ良かった。いや、発明されなければ良かったとボクは思う。

 さてさて、そんな時代、都はというと戦のせいか荒れ果てていて活気が無かった。

 背丈の大きく黒くて長い服を着た人がトボトボと歩いてた。和尚さんも黒い服を着ていたけど何か他のお坊さんとは違うと思いボクは近寄ってみた。

 話しかけてみたけど言葉が上手く通じない。

 都言葉でないとダメなのかと思ったら一人の青年がやってきた。そして、ボクにも分る言葉で話し出した。

「この方はフランシスコ上人さまで新しい教えをこの国に伝えに来ました」

「新しい教え!?」

 ボクは驚いて聞き返した。外国のお坊さんなのかなとボクは好奇心が高まった。

「わたしは、ベルナルドと申します通訳するためにフランシスコ上人さまに動向して都にやってまいりました。」

 フランシスコとかベルナルドとか耳慣れないけど法名とか僧名なのだろうか? とにかくポン林才さんの占いで、西へ来たのはこの方々に出会う運命だったのかも知れない。

「弟子にして下さい」

 ボクは声を高くして言った。

「わたしたちについて来なさい」

 フランシスコ上人さまは和やかな笑顔で仰った。

 この出会いが、ボクの人生を大きく変えた。

 ボクはフランシスコ上人さまについて行く事にして都より更に西へ向かう事になった。



 旅の途中ボクはフランシスコ上人さまやベルナルドさんからキリスト教の教えを聞いて決心したんだ。

 洗礼を受けてバテレンになろうと・・・・・・

「パウロ、父と子と聖霊の御名によってあなたに洗礼を授けます」

 こうして、ボクは、洗礼を受けてパウロという名前を授かった。そうしてバテレンの手前の階級のイルマンになるための勉強を開始した。



 ある日の事、フランシスコ上人さまに呼ばれた。何の話だろうと緊張した。

「本格的にバテレンになる勉強をするのにインドのゴアという所にある聖パウロ学院へ留学をしませんか?」

 インドって和尚さんの話してた天竺のことだよな? 西にどんどん向かって行く運命なんだな。

「それとわたしに隠している事はありませんか?」

 ギク! もしかしてボクが変化たぬきだって事がバレてしまったのか!?

「あなたは人間ではないでしょう?」

 案の定フランシスコ上人さまにバレてしまっていた。

「いつから分かっていたんですか?」

 ボクは恐る恐る尋ねた。

「最初から分かっていましたよ」

 その答えに驚きながらボクは、変化術の事とか、これまでの話しをフランシスコ上人さまに話した。

 すると「たぬきの和尚がいるならたぬきのバテレンがいてもいいのではないですか? あなたには、特別な恵みがあるからイルマンになり是非ともバテレンになって欲しい」

 そう言って、フランシスコ上人さまは、立ち上がってボクの肩へ手を置いて「これからもがんばりなさい」とボクを励ましてくださった。

 ボクの目は嬉しくて泪でいっぱいになった。



 ボクと一緒にインドに行くことになったのは京で出会ったベルナルドさんの他に、マテオさん、ジョアンさん、アントニオさん

 ベルナルドさんとマテオさんはボクと一緒に聖パウロ学院へ留学する事になったんだ。

 聖パウロ学院ってボクの洗礼名と同じ名前の学校、やっぱり運命なのかな?

 そして、インドに着いて初めて食べたのがカレー刺激的なおいしさに夢中になって食べたよ。

 フランシスコ上人さまは、中国へ向かうと言い、ボクたちと別れて行動をすることに・・・・・・

 これが、フランシスコ上人さまとの永久の別れになるとは、思いもしなかった・・・・・・



 ボクは、とにかく頑張って勉強してイルマンに、そして、バテレンになった。

 聖パウロ学院を無事に卒業出来て本当に良かったと思う。

 本当に色々な事があったよ、マテオさんが病気で死んでしまったり、ベルナルドさんはヨーロッパへ行くことになったりして、少し淋しかったけど最期まで頑張ったんだ。



 晴れてバテレンになったボクは、日本へ帰国する事にした。

 船旅は、大変だけど無事に日本へ着いたら頑張って宣教をしよう! そう決めたんだ。

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