第3話 もう断れない

「ま、待ってくれ......今頭の中で

整理してるから」


そう言えば、俺が年齢教えたとき、次郎が同い年だって喜んでたな......

それに高校生でちょっとした

芸能活動もしてるって言ってたし......


いくつかの共通点はある。


「うわ! その喋り方!

オオカミンそっくり!

オオカミンなんだけど!

アハハハハ!」


めっちゃ笑ってる......


「い、いや......でも次郎って男の名前だし、アイコンも野球のバットだったし、

主語も俺だったぞ」


「え? それおかしなこと?

ネットで主語が違う人とか

普通にいるじゃん。

女性でも野球好きな人たくさんいるし。

ちなみにあたしも野球めっちゃ好き!

名前は憧れのジロー選手から

取ったんだよね~

オオカミン知らないの?」


「さ、さすがにメジャーリーガーのジローは知ってるけど......」


「あたしめっちゃジローのファンだからさ!

だから、その名前にしたの」


ま、まぁ確かに女性でも男性の名前とか

アイコンにしてる人もいる。

それに俺は次郎の性別を聞いたことがない。

てっきり男だと思ってたし。


「......まじか......なんか

そう言われれば、星野さんの喋り方が

次郎っぽいかも」


「ぽいじゃなくて本人ですー!

うけるよね!」


めっちゃ笑ってる......


「そんなに信用できないなら

証拠見してあげようか? 今から

オオカミンの登録解除するから見てて」


「え!?」


俺は直ぐ様スマホを確認した。


登録者 0人


「ほら」


「いやああああああああ!!!!!」


「アハハハハ! ちょ......待って......

しんど......反応がオオカミン過ぎて

笑っちゃうんだけど。

ほら。ちゃんと登録し直したから」


「あ! よかったぁ......」


俺はほっと胸を撫で下ろした。

本当に解除されたままなのかと

ゾッとしていた。


「......や、やば......もうほんとやば......」


一方で星野さんは謎に悶絶していた。


「やっぱオオカミン可愛いすぎ」


俺はこの人のことがより理解できなくなったのでした。


「はぁ......ごめんね。ちょっと

落ち着くわ」


星野さんは真っ赤になった顔を

手でパタパタと仰ぐ。


「それでさ、オオカミン」


「星野さん......あんまりその名前で

呼ばないでもらいたいんだけど」


「あ! ごめん!

他の人に聞かれたらまずいか!」


「ま、まぁそうだね。

それで何?」


「あのさ......お願いなんだけど......

あたしとコラボしよ!」


「......え?」


「前から言ってたじゃん!

コラボしようって!」


「い、いやあれは次郎が言ってたことで」


「だから、あたしが次郎だって!」


顔ちかっ!?


めっちゃ顔整ってるよなぁ.....

あと凄くいい香りがしました。


「そ、そうだけど」


「それにリア友なら問題ないって

オオカミン言ってたし」


確かに言いました。


「最低でも顔知らないとって。

もうこれでお互いに顔は知れたじゃん」


知れました。


「い、いやぁ......でも......」


そんな俺の渋い反応に

星野さんは不機嫌そうな顔を浮かべた。


「な、なんでそんなに俺と

コラボしたいの? 俺みたいな底辺Vtuberとコラボしたって星野さんには何の

得もないでしょ」


「推しとコラボするだけで

得られる養分があるの!」


「そ、そうなの?」


「まじまじ! それに有名に

なりたいんでしょ?

ならあたしとコラボしよ!」


そんなにキラキラとした視線を向けられては

もう拒否することもできない。


「わ、わかった。するよ」


「まじぃ!? うわ!嬉しっ!

鳥肌やばっ! 早速今日コラボするって

トイートしとこ!」


それにこんなにも自分を好きでいてくれることが純粋に嬉しくて、少しでもその気持ちに答えたくなってしまった。


俺はトラウマを植え付けられたあの日以来、初めてコラボをすることとなった。


ま、まぁ言っちゃあれだけど、

そんなに星野さん有名な

配信者じゃないだろ。

だって、星野凛って名前の

配信者聞いたことないし。

もちろん、次郎という名前も。


せいぜい登録者1000人とか。


ま、1人の俺が偉そうに

言えることじゃないけど。


「じゃあ今日する!? 暇?」


「う、うん。まぁ暇だね」


「どうせいつものように

夜の11時から1時まで

配信するつもりだったんでしょ」


バレてる。流石は次郎。


「なら配信はそれくらいがいいかな。

あたしはいつも夜の8時くらいに

してるけど」


「え? そうなの? てか、いつもって

星野さんも結構配信するの?」


「週5でしてるよ!

企業Vtuberだからノルマがあるんだよね~」


企業Vtuber!?


「星野さんもVtuberやってたんだ......」


ま、まぁ.....そんなに有名な

企業じゃないはず......


「俺星野さんに合わせるよ。

8時からにしよ」


「え! いいの?

ねぇ~ちょっとマジで優しい~

さっすがオオカミン。あ、でも、配信中は

その作った話し方なしね? いつもの

砕けた喋り方して? あとあたしのことも

本名で呼ばないように!」


もう俺のことは何でもお見通しらしい。


「わ、わかった......」


「じゃあ今日の8時からあたしの

アカウントでコラボ配信でいい?

オオカミンも配信する?」


「いや、俺は大丈夫。星野さんの所に

お邪魔するよ。けど、あと二時間もないけど

間に合うの?」


「よゆーよゆー。サムネは簡単に

ぱぱっと作っちゃうから。じゃあ!

バス来ちゃうから先に行くね! 」


そう言って、星野さんは

ウキウキで靴を履いて外に出た。


「あ! 言い忘れてた!

バスに乗ったらVtuberのアカウントで

オオカミンのトイッターのアカウント

フォローするから! DMで話そ!」


星野さんはそう叫びながら、

ギリギリでバスに飛び乗った。


本当にエネルギュシュな人だ......


ピロリン


早速、トイッターに通知が入った。


どれどれ。


星宮リナ


ほぇーこれが星野さんの

Vtuber名か。


『やっほー! 次郎こと星野だよ!

なんかこっちのアカウントで話すの

新鮮だわwwwww

そもそも、次郎でもDMで話した

ことなかったかw

これからよろしくねー!』


うわ......この「wwwww」って使い方が

次郎そっくりだわ。

本当に本人なんだな......


にしても、星野さんのVtuberの

絵めっちゃ可愛いな。

金髪のギャルでどことなく星野さんに

似てる。

プロのイラストレーターに書いてもらったんだろうな。


俺はそんなことを思いながら、

彼女のトイートを覗こうと

画面を開いた。


「はぁ!!!!???」


フォロー 56人

フォロワー 80万人


「う、嘘だろ?」


俺は直ぐ様プロフィールから所属事務所を

調べた。


「シャイニングだとぉ!?」


シャイニング。


それは100人以上のVtuberが

所属している日本で最も巨大な

Vtuber事務所である。


「ほ、星野さんの登録者数は......」


星宮リナ

登録者 90万人


「......女性からの誘いを断りたいとき

どうすればいい? 知恵袋 .....検索と」


【ベストアンサー】

その女性の連絡先を教えてください。

代わりに俺が行きます。



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