第40話 なぜかたまに厳しくされがち
僕の目の前には灼熱の大地が広がっている。道は急斜な所も多く、所々にマグマが流れている。
「思ったより快適ですね」
フレアが汗ひとつ流さずにつぶやく。
「うん。僕もマキュイガー火山を探索するなら、歩くだけでも体力を削られると思ってたよ。魔導書ニブルヘイムの魔法がこんなに便利だとは思わなかった」
フレアが今使っている魔法は【空冷】という魔法だ。僕は【鑑定眼】を発動させる。
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【空冷】……周囲の気温を下げることができる。空気中の気温が高いほど消費魔力は大きくなる。
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「快適ではあるけれど、消費魔力は大丈夫なのか?」
「問題ありません。私の魔力量であれば、一週間は使い続けても枯渇する心配はありませんし、魔力回復ポーションも持って来ていますから」
「それは心強いな」
「きゅい!」
シルが警戒音を鳴らす。
「ようやくここの魔物がおでましですか」
フレアは恍惚とした表情を浮かべる。僕は【探知眼】と【鑑定眼】を使用した。
前はこの二つの魔法を同時に使うことができなかった。けれど、何度も繰り返し使っているうちに、右目で【探知眼】を使い、左目で【鑑定眼】を使うといった芸当ができるようになった。
時期的にはブルワースからトロンへ帰宅する途中でだ。馬車に揺られながらできることなんてそれくらいしかなかったからな。
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【サラマンダー】魔力量332
【サラマンダー】魔力量297
【サラマンダー】魔力量301
【サラマンダー】魔力量311
【サラマンダー】魔力量283
【サラマンダー】魔力量345
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【探知眼】と【鑑定眼】を併用しているため、近づいてくる魔物の名前と魔力量が同時に表示される。魔力量的には、銀級冒険者が苦戦するレベルだが、サラマンダーという魔物は魔力特化型だ。
つまり、同じくらいの強さの魔物と比べて魔力量が多いだけで、実際は銀級冒険者ならば難なく倒せるレベルの強さということだ。
ちなみに、ステータス画面の魔物名をクリックすれば、その魔物の強さの詳細も分かる。
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サラマンダー 5歳 ♀ 炎トカゲ族
Lv21
攻撃255
物理防御199
魔法防御350
保有スキル【溶岩魔法】
保有魔法【ファイアーボール】【火纏Lv3】【熱探知Lv2】【火耐性Lv5】【マグマ光線】【土弾Lv1】
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うん。やはり今の僕らの敵ではないな。
「まずは私が相手しても良いですか?」
「構わないぞ。代わりに、後ろの敵は僕に任せてくれ」
僕は【探知眼】で後ろからもサラマンダーたちが近づいてきているのを感知していた。いわゆる挟み撃ちって状況だな。
「了解です。ではいきますよ」
フレアは続々と姿を現したサラマンダーたちに魔法を放つ準備をする。
「【氷刃乱舞】」
氷でできた鋭い針の嵐がサラマンダーたちを襲う。彼らは反撃する機会も与えられずに次々と命を落としていった。
おまけに、氷の針はサラマンダーたちを貫いた後、地面や天然の土壁に激突し、いくつものクレーターを作っている。
「これは凄い」
「ふぅ。確かに威力は強力ですが、かなりの魔力を持っていかれました。あまり乱発できる魔法ではなさそうですね。ニブルヘイムに載っている魔法の中でも特に強力な魔法であると書かれているので当たり前ではありますが」
ふむ。さすがのフレアも乱発はできないか。そりゃあそうだよな。今の魔法を無制限で使えるなんて、それはもう神話の領域だ。
『ニブルヘイムという魔導書は本当に強力なのだな。無論、フレア嬢の才能あってのものであろうが。我も負けてはいられぬ。ゆくぞ』
「はいよ」
僕は今まで歩いてきた方向とは真逆の方を向き、魔剣エラムを構える。すぐに6体程のサラマンダーたちが現れる。
早速魔剣エラムに魔力を注いでいく。
「【ダークフレイムエンチャント】!!!」
魔剣エラムの刀身に赤黒い
僕は両手で刀身を頭上に掲げる。
「【ダークフレイムバースト】!!!」
叫び声を上げながら魔剣エラムを振り下ろす。すると、魔剣エラムの刀身から放たれたダークフレイムの光線がサラマンダーたちに直撃する。
フレアの【氷刃乱舞】の時と同様、サラマンダーたちは悲鳴を上げる間もなく、命を散らす。放たれた光線はサラマンダーたちを消滅させた後、地面を深くえぐってから消滅した。
「エラムの方もなかなかですね。黒竜族と同じ魔法が使えるだけのことはあります」
『うむ。しかし今の魔法はラースの良質な魔力があってのもの。そこら辺の冒険者が我を使った所で、同じようなことはできないであろうよ』
「ラースも少しはやるようですね」
「あれ、なんか僕の評価が低くないか……」
「気のせいです」
ちょくちょくフレアは僕に厳しくなるんだよなぁ。ある種の照れ隠しなのかもしれないけど。
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