『女子会とツンデレ』


「そ、それでね。透さんがね~~……!私の耳元でね……好きって囁いたの!」



そう言いながらカナはお茶を飲みながらそう言った。



「相変わらずラブラブね~。春人と婚約破棄したときはどうなるかと思ったけど」



「まぁ、後で知ったけど、あの二人の間に愛は無かったんでしょ?」



今はカナの家で女子会をしていた。メンバーはカナと春香と奈緒の三人である。今日は惚気話を聞くために集まったわけじゃない。本当は旅行の相談をするために集まったのだが、いつの間にか恋愛の話になっていた。



「ええ。愛なんてなかったわ。今じゃ……とゆうか、昔から氷室くんに夢中なんでしょ?」



「ええ。そうね。今の春人は和馬一途ね。いや……昔からなんだけど……いや!和馬の愛なら私も負けていられないわ!」



「二人が氷室くんのことが大好きなのは分かってるって。そんなことより……この前光輝とさー……お出かけした帰りにね、光輝ってばキスして来たの。……突然に」



「ええ~~!?光輝ってば……やるなー!透さんは私が要求してもしてくれないのに……」



顔を赤くしながらそういった奈緒にそれを羨ましがるカナ。カナだって透と溺れるようにキスしたこともあるが"突然"ではないし。



「私も。和馬が突然スイッチを押したみたいに求めてくる時があるから気持ちいいのよね~」



「氷室くんもそうなんだ……いいなー。私ももっと透さんとしたいなぁ……」



「おねだりすればいいんじゃないの?」



「透さん真面目なんだもん……」




透は真面目で優しい人だが、その分なかなか手を出してこないのだ。真面目だからこそ、手を出す時も約束を守ってくれる。



それは嬉しいことではあるけれど、少し寂しいところでもあるし。



「でも、それはそれでいいじゃん。大事にしてもらっている証拠だし」



「確かにそうだけど……たまには甘えたくなるのよねぇ……」



奈緒の言い分ももちろん分かるが、やっぱり女としては好きな人に求められたいと思うものだ。



それに、透が優しすぎるのもいけない。だからと言って、強引に迫っても透は受け入れてはくれないだろう。きっと困った顔をしながら断られるだろう。



「んー………ならさ、あえて突き放すのは?」



今まで黙っていた春香が唐突に口を開いた。そしてとんでもない提案をした。



「突き放す?どうして?」



「…甘い蜜を吸わせ続けてたらダメになるかもしれないでしょう?たまには突き放すぐらい厳しくしないと」



春香の言葉に、カナも奈緒も戦慄した。まさか春香がこんなことを言うとは思わなかったからだ。

しかし、言っていることは間違ってはいない。



恋というのは甘いだけではいけない。時には駆け引きをしなければいけないときもある。


勿論、大切にされているのは分かっているし、今更、透を手放す気はサラサラないし。



「………まぁ、私の提案で関係性が悪くなっても私は一切責任を負わないけど」



そう言いながら春香は紅茶を飲んだ。




△▼△▼



石田カナは基本的に人の指図は受けない。自分が正しいと思ったことをするタイプである。

故に、他人からのアドバイスや意見などは実行しないパターンが多いのだが……。



「……べ、別に…透さんのこと好きじゃないんだからね!」



いつの間にかツンデレみたいなセリフを言っていた。しかも自分で言っておきながらも恥ずかしくなっていた。

 


(何やってるんだろ……)



カナは自分の発言に対して呆れていた。そんな自分のキャラではないことくらい分かっていたはずなのに、なぜか言ってしまった。



そして透の反応を見ると、彼はキョトンとした表情を浮かべているだけだった。恐らく何を言ったのか分かっていないのだろう。



そして暫くして、



「ご、ごめん!何か気に障ること言ったか!?な、直すから!直すから捨てないで……!」



と慌てた様子で謝ってきた。今にも泣きそうになっている。……どうやら、思っていた以上に自分は大事にされていたらしい。

それが分かった途端、急に嬉しくなってきて、



「そう……じゃ……」



ドサっと、ベッドに押し倒した。

いきなり押し倒されたことに驚いたのか、透は目を丸くしていた。

そして、その瞳を見つめながらキスをして、



「今から私透さんのこと襲いますね♡」



結局、いつも通りになってしまったことを悔やみながらも、この思い性欲 は抑えることはできなかった。

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