ファンタジーな言葉の寄せ集め 300文字以内の掌編小説

ナナミヤ

第1話 ボロ雑巾


「ねえ、あの子」


 少女は笑いながら、瘦せ細った猫を抱くもう一人の少女を指差して嘲笑う。


「ボロ雑巾みたいな猫抱いちゃって! あの子にお似合いだね!」


 ボロボロになった茶色の服を纏った艶の無い茶髪の少女は確実に貴族街で浮いていた。


「私、ああはなりたくないなー!」


 貴族というだけで何が偉いのだろう。

 笑いものにされた少女は猫を撫でながら澄んだ空を見上げる。


「私も先月までは貴女と同じことを思ってた。貴女は私みたいにならないと良いね」


 香水のつんとした匂いを残して走り出す金髪の少女に、届かない程の声量でぽつりと呟いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る