第18話

【次の日・早朝】


「皆でお出かけか?」

「フィール、お前も来るか?これから隣の村に行って商売が出来るか見に行く」


 アイラの両親とファインパーティーのストーリークエストか。


「いや、俺はチンカウバインの魔力供給と訓練があるから行けないんだ」

「フィール君、またね!」


 アイラが俺に手を振った。

 可愛いなあ。


 俺はアイラの後ろ姿を見送った。


 屋敷の前には100人を超える人が集まっていた。


「フィール様、皆を集めました」

「うん、ありがとう。チンカウバイン、出てこい」


 チンカウバインが俺から出てきた。


「「おおおおおおおおおお!」」


 集まったみんなが声をあげる。


「魔力は完全回復したよ!さあ!風に乗せて愛を運ぶよ!」


 チンカウバインが先行して飛んでいき、女の子の前で止まる。


「君はこの子と相性がいいね」

「え?でも、トム君はいつも私をからかって意地悪ばかりしてる」

「それはトムが君の事を好きだからだよ。彼は不器用でうまく想いを伝えられないんだ。さあ、君が歩み寄れば意地悪は愛に変わるよ」


 トムがぼこぼこにされている。


「次は君、彼女に今すぐ告白するんだ!」


「やっぱり、あの2人は怪しいと思っていたんだ」

「バレバレよね」

「今日から妖精公認だ。おめでとう!」

「おめでとう!」


 パチパチパチパチ!


 2人とも真っ赤だ。


「チンカウバイン、俺は訓練を続ける。ちょっと走って来る」

「うん、任せてよ!」


 チンカウバインはテンションが上がっており、空中を無意味に飛び回る。

 近くにいるのは危険だ。

 俺はダッシュでこの場を後にした。


 逃げる時、人はその時に最大の力を発揮するのだろう。

 いつもより調子がいい。

 ダッシュ訓練がはかどりすぎる。




 ダッシュ訓練が終わるとチンカウバインがぐったりしていた。

 魔力切れか。


「フィール、魔力を、ちょうだい」


 チンカウバインに魔力を受け渡すと空に飛びあがった。

 急に元気になった。


「どんどん行くよ!次は君!いつも彼女の後姿にドキドキしているね。彼女の素敵なくびれとお尻にドキドキするより今すぐ愛を告白するんだ!」


 よし、筋トレに行こう。

 ここから離れて筋トレだ。


 俺は離れて筋トレをこなす。




 筋トレを終わらせてチンカウバインに魔力を供給するとチンカウバインが行動する前に立ち去った。

 次はステップだ!


 この後、チンカウバインに魔力を供給しつつ食事、訓練を続け、日が落ちてきた。


「今日は満足だよ!私の恋占いで結婚が決まったカップルもいるし、10組は愛で結ばれるね」


 チンカウバインが俺に憑依した。


 アイラたちが帰ってきた。


「フィール君、ただいま」

「お帰り」

「ここは中々に、商売をするにはいいかもしれませんな。ここで取れた海産物を向こうの領地で欲しがっているようで、運べば運んだだけ売れるでしょう」


「おお!それは良かった」

「儲けが出れば領地への税を納める事になります。そうなればこの領地の力になれるかもしれません」


 アイラの両親は機嫌がよく、漁場に向かって行った。

 行動が早い。

 早速海産物の交渉に向かったようだ。


 この領地の近くには3つの領地がある。

 アイラの両親はすべて回るつもりらしい。


 故郷も気に入って貰えたようだ。

 俺は、訓練を続けよう。




【3日後】


 アイラの両親が領主館で売店を開いた。

 元々ぶつぶつ交換が多くお金を使う機会は多くなかったが、俺が持って来たお金を父さんはアイラの父に貸した。


 アイラの父が農作物や海産物、塩を買い取り、お金を循環させつつある。


 他の領地から自警団が引率のように人を引き連れてやって来た。



「ここに来れば恋占いをして貰えると聞きました」

「私を占って!」

「結婚したいの!早く結婚したい!」


 完全に噂が広がっている。


「わ、分かった。恋占いの後は、売店で色々買って行って欲しい。塩や魚の天日干しなんかも売っているから」


「でも、金が無くて」

「私も、お金は持っていないわ」


「お困りのようですな。もし良ければ、しばらくの間は物々交換で対応しますよ」

「なら、商売は明日からか」


 チンカウバインが喜んで恋占いをする。


 みんなが帰ると、アイラの両親が俺に頭を下げながらお礼を言った。


「ありがとうございます。見事な誘導でした。本当に助かります」

「私達の商売を助けてくれているのが伝わってきます。本当に助かります」

「フィール君、ありがとう!」


 話がサクサク進む。




【更に3日後】


「魔物を倒して来たぜ!血抜きもしてある」

「これは立派なイノシシですな。解体すればみんなが買ってくれるでしょう」


 ファインのパーティーは領地間の移動を護衛したり、魔物を狩って肉を売ってアイラの両親が営む売店は更に繁盛した。

 

『ここに来れば物が手に入る』


 そう思わせた事が大きい。


 更に近隣で一番腕がいいといわれる大工が結婚を決めてここに引っ越して来た。


「俺は三男だからよう、嫁のいるこの領地に住むぜ。フィールの旦那、いい嫁と巡り会えて、感謝するぜ」

「早速家を建てる依頼をしてもいいですかな?」


「おう!腕が鳴るぜ!」

「出来れば、この領地に住む大工にも一緒に働いて欲しいのですが、いいですかな?」

「構わねえぜ!ちったあ仕事も教える」

「おお!助かります!」



 アイラの両親は大きめの売店付きの家を建てるようだ。

 ここに来れば物が買える、更にみんなの意識は変わるだろう。

 更にこの領地に住む大工の技量も上がっていく。

 そして移民希望者がまだ数家族だけではあるが希望を出している。


 店を建てたら次の家を建てることになるだろう。

 この領地は土地は豊富で人は不足している。


 商売がうまくいき、人が増える、か。

 領地の経営危機は時間が解決するだろう。


 心配していた周りの領地からのクレームも無いようだ。


 俺はアイラの父と話をする。


「提案があるんだけど、ここに未婚の男女を集めてパーティーを開かないか?そのついでに店を宣伝しよう。パーティー費用は俺が父さんに渡した費用で賄って、返済不要にしたい」


「おお!これで色々と加速しますな。準備は私が進めます。3日後でどうでしょうか?」

「分かった、頼む。この件を父さんに話してくる」


 村があわただしくなった。




【それから更に3日後】


 近くの領地からも未婚の男女が集まった。

 ファインのパーティーは喜んで協力してくれた。

 総勢300人を超える人が集まり、昼から質素なパーティーを開いた。


 挨拶と進行は父さんと母さんにお願いした。


「それでは息子のフィールに妖精の恋占いをして貰う!」


「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」」


「チンカウバイン!行け!」

「ふぉおおおお!いるよいるよ!結ばれる愛がいっぱいあるよ!」

「俺の魔力を吸いつくしてもいい!今日は全力でやってくれ!」


 俺は少し離れてその様子を眺めた。

 たまに叫び声も聞こえるが、まあ、仕方がない。


 さてっとファインのハーレムイベントの準備を進めるか。



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