アーデルハイト伯爵の創作講座

🎩鮎咲亜沙

第1話 欲しがり妹はこう書け!

 さて皆さんこんにちは、吾輩アーデルハイト伯爵である。

 今日からここでテキトーな創作論を語っていく。


「助手のあーちゃんです」


 ここでは私とこの可愛い銀髪の腹話術人形のあーちゃんとの一人二役の漫才で話をしていこう。

 それでは第1回目のテーマは⋯⋯。


『欲しがり妹ってどうやって書くの?』

 である。


 こちらのお悩みは私の友人のRさんからのお便りです。


「1回目なのにお便りがあるなんてヤラセみたいー」


 そういう事を言うんじゃない!

 こういった段取りも企画には必要なんだよ。


 まあこの存在するのかしないのか不明な私のイマジナリーフレンドのRさんのお悩みは最近流行の『欲しがり妹』が上手く書けないとの事だな。


 では話していこう。

 そもそも欲しがり妹とは何ぞや?


【欲しがり妹】

 大抵は姉の持っている大切なものをクレクレしてくる困った妹である。


 まあ現実では姉のお下がりは嫌だと言う妹の方が多いのかもしれんが⋯⋯。


 こと創作だと姉の所有物を奪っていく簒奪者としてメジャーな敵として描かれる。

 これは女の子に似合わない暴力とかを使わせない『かわいい』を武器に使った女らしい戦い方かもしれん。


 ではこの欲しがり妹をどうやって書くのか⋯⋯。

 まあ姉(主人公)の大事なものを奪う・盗むという行為を繰り返させればいいだけなんだが⋯⋯それではこの欲しがり妹は表現しきれんのだ。


「なんで?」


 それはな、この欲しがり妹という存在は『歪な家族の象徴』だからだ。


 なので妹だけ語ってもこのキャラは完成しない。

 その背景の家族、そして主人公である姉との関係性も大切なのだ。

 というわけで私の思う代表的な『欲しがり妹』を2つ紹介しよう!




 1 尊敬型妹


「尊敬? これまた不似合な言葉が出てきましたね」


 いや、そうでもないんだ。

 このパターンの妹は姉を尊敬・憧れているところから始まるのだ。


 この場合の妹はミソッカスで姉は優秀な努力家であることが多い。

 だから妹は姉を尊敬し目標にする。

 するとだんだん姉の真似をし始める妹が生まれる。


 ⋯⋯が、妹はさっきも言ったが大して努力もしない落ちこぼれが多いのだ。

 すると短絡的に姉と同じ物を所有しようとする。

 同じ髪型や同じドレスといったふうにな。


 こうして妹は尊敬する姉のコピーになりきって自分を高めたような錯覚を覚えるのだ。


 こうした関係性は初めは問題にならない。

 姉も両親も微笑ましく思うだけだ。

 しかし⋯⋯だんだんとエスカレートしてくると性質が変ってくる。


「変わる?」


 同じ物が2つと無い品物を妹が欲した時、この『欲しがり妹』というモンスターが生まれるのだ。

 形見の品とか⋯⋯姉の恋人とかな。


 この『姉だから』という理由で手に入ったように見えるモノはけして替えが利かず、妹は手にする事が出来ない。


 すると⋯⋯奪うしかないわけだ、姉から。


 初めは小さな物から始まって、だんだん大きな要求に変わってくる。

 そして⋯⋯『可愛くおねだりすれば』なんでも手に入ると学習を終えたときが完成だ。


「欲しがり妹の完成ですか」


 このパターンの厄介な点は明確に悪意が無い場合が多く、被害者である姉も「困っている」と言い出せないことが多い。


 そして両親からしたら『姉の真似して努力する頑張りやな妹』と目に映ることが多くて姉の苦しみを誰も理解しない出来ないという事になる。


「あらら⋯⋯」


 こうして姉はだんだんと自分の所有物や理解者を妹に侵略されて身動きが取れなくなってくるのだ。


 最終的には姉の婚約者とか未来の可能性なんかも奪っていく。

 こうやってこの頃になると明確に、


『お姉ちゃんをやっと超えた、私が一番だ!』


 といった今まで大して恨んでもいなかった姉に対してのコンプレックスを弾けさせるのだ。


「勝ったと思ったとたんに本性が出ましたね」


 こうして人格も歪み、誤った成功体験で培った中身のない可愛いだけのモンスターになる。


 さてこのタイプの『尊敬型欲しがり妹』はどうかな?


 このタイプに対する姉(主人公)は人に頼る事が苦手な不器用な努力家がいい。

 そして両親も無自覚に姉に期待を押し付けて妹には放任という教育方針の歪みなど、問題の本質が表面化しずらい内面になる。


 このタイプをメインに小説を書くなら長編がお勧めかな?

 自分の何が悪なのか理解しない妹の、恐怖と狂気を淡々と積み上げるストーリーを。


「短編だと描ききれそうにないですねー」




 2 侵略型妹


 こちらのパターンは初めっから明確に『姉に対して妹が悪意』を持っているパターンだ。


「なんで?」


 それはだな、妹が絶対家を継げないとかの理由がある場合だ。

 ありがちなのは父の第二夫人以降の腹違いの妹や後妻の連れ子というパターンだ。


「それだとなんで妹は姉を攻撃するの?」


 生存戦略というやつだ。

 托卵された卵から孵った雛が、他の卵を巣から落として親鳥からの餌を独占する、みたいなもんだ。


 本来、妹の立場は姉よりも低い。

 だからそれが不満な場合、姉の地位を引きずり降ろしてその場所を奪うしか方法が無いのだ⋯⋯生きるために。


 初めは小さなところからコツコツ⋯⋯やがて大胆になってくる。


 この場合、姉の品物を奪うというよりも姉の心を破壊するのが目的だったりする。

 自分の物は全部妹の物に⋯⋯。

 自分の味方は全部妹の味方に⋯⋯。


 こうやって姉に空っぽになっていくのを自覚させて自身を無価値で必要ない人間だと教え込むのだ。

 こうやって姉のすべてを奪って、その地位を妹が手にした時に終わる。


「姉かわいそう⋯⋯親は何しているんですか!」


 それはだな、こちらのパターンでは両親が中立であることはほとんどなく明確に妹の味方になっていることが多いのだ。


 とくに母親⋯⋯継母かもしれんが、自分の娘である妹の味方をする。

 それが自分の地位を守ることでもあるからだ。


 この場合の父親は母親に騙されているならまだいい方で、ものによっては姉を邪魔に感じて積極的に排除に力を貸すことも多い。


 よくあるのは貴族家の婿養子だった父親が妻(正統後継者)を亡くした後に後妻を取ったパターンだな。


 この時父親は貴族家の当主代理でしかない。

 いずれ姉(正統後継者)が当主になるまでの間の代理だ。

 だからそれが嫌なんだ、自分が正式に家を乗っ取る為に行動する。


「お家乗っ取りですね、クズじゃないですか!」


 そうクズだ!

 だからこの侵略型妹の場合は家族ぐるみで姉の敵として描かねばならん。


 尊敬型と違って明確な悪意があって解決策も浮かびやすい分こっちは短期決戦な短編向けと言えるかな?




 さて駆け足で紹介した『欲しがり妹』だったがいかがかな?


「どっちもヤバいモンスターだね!」


 そう、こういった存在は昔からいたんだが最近のネット小説の急激な普及によって急に注目を集め始めた存在かもな。


 とくに恋愛短編など書きたいのならこの『欲しがり妹』は敵として書きやすいので扱いやすいテーマになる。


 しかしその分設定を間違えるとチグハグな精神異常者サイコパスにしか見えん場合もある。


 私の解説が100%正しいとは言わないが多少でも参考になれば幸いだ。


 もしも反論などあればどんどん感想欄に書いてやってくれ。

 吾輩たいへん嬉しいし参考になる。


「ネタを提供していると思わせて集めるスタイルだね!」


 そういった双方向のコメントでこの考察はより完成するだろうしな。

 それに随時加筆や修正を加える可能性もあるので、今のこの考察が最新情報とは限らないぞ。


 それではまた次回、いつになるかはわからんが、何かの相談があった時に暇つぶしに書こうかな?


「また見てくださいねー」


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