第9話 眩しいっ・・・!

「どうも、我々が今回ルリカ様とスイ様のご世話をさせていただきます。そして私がメイド長のメイカと申します」


「あっ、お疲れ様です」


 私とスイは今、マリアに招かれ王宮に来ています。そして絶賛その洗礼を浴びています。


「ではまず始めに国王様に謁見される際のドレスに着替えていただきます」


 なるほ・・・ど・・・?


「えっ!?私とスイ、これから王様に会うんですか!?」


「ええ、そのためにお呼びしたとマリアお嬢様から聞き及んでいましたが・・・」


「聞いてないです聞いてないです!」


「そうですか・・・スイ様もお聞きになっておられないんですか?」


 そう言ってメイカさんはスイの方を向く。私もそれにつられて向く。


「なんかスゴい満喫してるっ!?」


 何そのサウナで整うときみたいな椅子みたいなやつ!?そしてその左手に持ったヤシの実はなんなの!?オマケに横のテーブルにある果物の山は一体なに!?


「頼んでみたら、くれた」グッ!


 いやグッ!じゃないが・・・


「まあ、せっかくの機会でございます。存分に堪能なさってください。我々も全力でおもてなししますので・・・」


「はぁ・・・分かりました。今日はよろしくお願いします」


「はい、分かりました。でしたらまずはドレスに着替えてもらいますので奥の部屋に・・・」


 それを忘れてた・・・果たして私にドレスなんぞという煌びやかな衣装が似合うのだろうか?


 ・・・・・・


「おぉ・・・!!」


 案外似合ってるのでは!?なんかテンション上がってきたなぁ!!


「ルリカ様、大変お似合いでございますよ」


「いやー、馬子にも衣装って感じですねー」


「何をおっしゃいますやら、ルリカ様が馬子では我々に立つ瀬がございません」


 さらにそんなお世辞を言われてしまってはつい舞い上がってしまう。


「おんなことありませんよ!メイカさんもご綺麗ですよ」


「あらあら、ありがとうございます。それではお部屋の方に戻りましょう」


 そして私が部屋に戻るとドレスを身に纏ったスイの姿があった。天使だ・・・


「お姉ちゃん、おかえり。スイ、似合ってるかな?」


「うん、もちろん似合ってるよ。まるでお人形さんみたい」


「ニヘヘ・・・スイ、お姉ちゃんに褒められるの、1番好き」


 もうっ!何でこの子はいちいち可愛いかなっ!反則だよもはや!


 すると不意に部屋の扉がノックされる。私が返事をするとマリアが顔を覗かせた。


「お二人とも、準備はできたかしら?」


「あっ、マリア!うん、今はここで連絡くるまで待っててってメイカさんが」


「あらそうですの、でしたら問題ありませんわ。ワタクシがその連絡に来ましたから」


 そう言うとマリアは私に手を差し伸べて言った。


「準備が整いましたの。さ、お父様にご挨拶へ行きましょう?」


 ・・・・・・


「ここですわよ」


「うわぁ・・・」


 扉でっかぁ・・・ラスボスがいるやつだよこの大きさは


「さっ、行きますわよ2人とも」


 マリアがそう言って扉の前にいる人達に合図するとその人達が扉を開ける。私とスイはマリアの後ろをついて行く。


「眩しいっ・・・!」


 その部屋はキラキラした物が沢山あってまさに絢爛豪華だったけど、その一つ一つが光を反射して目がチカチカする。


 こういう感じなのか・・・なんか、なんて言うんだろう・・・ねぇ?


 すると奥から声が聞こえる。


「よく来たマリア、下がっていいぞ」


 その声に反応してマリアが後ろに下がる。


 私は改めて国王様の方を向く。見た目は王というにはかなり若い気がする。ガルシアさんと同じくらいだろうか?


「我の名はワイジ・デルシア。まずは、2人の名前を聞こう」


 声の重々しさに気圧されそうになるが、どうにか声を出す。


「ルリカと言います。マリアさんの友達です」


「スイはスイ。スライムのスイ、マリアお姉ちゃんの友達」ブイッ!


 すると国王様は一つ大きく息を吐いて言った。


「よかったぁぁーーーー!」


 ・・・え?


「マジで彼氏だったらどうしてやろうかと思ってたわー!」


「こ、国王様?」


「あぁ、というのもな、昨日いきなり愛しのマリアが急に『お父様会ってほしい人がいるんです』・・・って彼氏だと思うじゃん!」


 それは、確かにそう思うのも無理ないかも?


「しかも庶民の出ともっぱらの噂で・・・我が愛しのマリアが庶民の男に手玉に取られてると思うだろ!?」


「えっ!?あっ、はい!」


 すると国王様はもう一度大きく息を吐いて話し始める。


「でも良かった、女の子とスライムであればそういった関係には・・・ハッ!?」


 そう言って国王様はマリアの方を向く。


「ハッ!?じゃありませんわよ!確かにルリカとスイには親しくさせて頂いてますがそんな関係ではございませんわよ!」


「そうか、それならお父さんは安心だ」


 そしてまた私たちの方を振り向いて言った。


「2人にも迷惑をかけたな。とりあえず我もルリカとスイのことは認めよう。今日はここでゆっくりしていくといい」


「ありがとうございます!」


 ・・・・・・


「疲れたぁ・・・」


「今日はワタクシの無茶を聞いてくださりありがとうございましたわ」


「いやいや、全然だよ!こちらこそこんな豪華な所に泊めて貰っちゃって」


 するとマリアは微笑んで言った。


「全然いいんですのよ、あとこれはワタクシの我儘なのですけれど・・・」


「今日は一緒のベットで寝てもよろしいでしょうか・・・」


 その言葉に私が返答する間もなくマリアは矢継ぎ早に言葉を重ねる。


「ワ、ワタクシお友達をお家に招いた事がなくて!それでお呼びしたらぜひやってみたいと思っていたんですの!」


「ちょ、ちょっと落ち着いてよマリア!」


 私がそう言うとマリアはハッとして静かになった。


「私、ここに来て初めて出来た友達がマリアなんだ。だから、いいよ」


「あ、ありがとうございます!!」


「スイもいいでしょ?」


「ヒトが多いと、たくさん幸せ」


 ・・・・・・


「お嬢様方、そろそろ寝ないとお時間ですよ」


「「「・・・・・」」」スヤァ・・・


「・・・不要な心配でしたね」

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