第5話 そっち系かー!

「だから、ワタシと決闘だ!」


「決闘!?」


 私ルリカ、10歳!たった今大人の人に決闘を申し込まれた極々普通の女の子!


 うん!意味が分からない!とりあえず向こうの話を聞こう。


「決闘って、何でそんなことするんですか?」


「それはだなルリカ・・・」


「この街の女最強の座を君に奪われそうだからさ!」


 うっわ、思ったよりどうでも良かった・・・


「私、別にその称号いらないんですけど」


 するとヴァルさんはキメ顔で言った。


「ルリカよ、称号というのは自ら着脱するものではないのだ。民衆からの評価や声によって後から着いてくるものなのだよ」


 ダルいとこあるなこの人・・・


「はぁ、分かりました。それで決闘って具体的に何するんですか?」


「それは、アタイが決めさせてもらうよ」


 そう言うとシュナさんが細かいルールを話し始める。


「今回、アンタらには部位破壊ルールで決闘してもらうよ」


「部位破壊?何か物騒なルールですね」


 私がそう返すとシュナさんはフルフルと首を横に振り、そして言った。


「そんなことないさね、要は頭の上の風船を割ればいいのさ。簡単だろ?」


 私はそういうことかと納得し答える。


「なるほど、それなら危険なことにはあまりならなそうですし大丈夫ですね」


「フッフッフッ、女騎士のプライドを見せつけてやろう!」


 さいですか・・・


 ・・・・・・


 そんなこんなで私たちは開けた平原へとやってきた。


「それじゃあ、両者構え!」


 まあ、適当に負けておきますか・・・なんて思っているとシュナさんの横にいるスイが声をかけてきた。


「お姉ちゃん、頑張ってね。勝ってね」グッ


 はい、もう絶対勝ちまーす!


 私はスイの言葉を胸に位置に着く。


「2人とも揃ったね、それじゃあハジメ!」


「先手必勝、このスピードこそ女騎士団団長であるワタシの・・・」


「エレキラ」


「アババババギャギャギャッ!!」


 あっ、手元狂った。ヴァルさん、メチャクチャにビリビリしてる・・・してるけど割れてない。雷魔法じゃ割れなかったか。


「キュゥ・・・」バタン


 倒れた。でも風船割れてないや・・・確実に割れそうな・・・炎魔法にしよう。


「フレアラ」


 パンッ


 ヴァルさんの風船がそう小気味良い音を立てて割れた。そして少しの間を置いてシュナさんが宣言する。


「しょ、勝者ルリカ!」


 その瞬間、スイが私の元へ駆け寄ってきた。


「おめでとう、お姉ちゃん。スゴイ強かった」


 うんうん!この言葉を聞くために頑張ったんですから!報われて良かったー!


 しかし一方でシュナさんは頭を抱えていた。そして私に近づいてきて言った。


「ルリカ、この後大変だと思うけど頑張ってくれな」


 そう言って私の頭に手を乗っける。一体何なんだろうか?


 もしやスゴい負けず嫌いで自分が勝つまでひたすらにリベンジを繰り返してくるとか!?嫌だそんなの!戦うなんて非効率なこともうしたくないよ!


 なんて思っているとヴァルさんがむくりと立ち上がり言った。


「ワタシは・・・負けてしまったのか・・・」


 するとヴァルさんは突然膝をついて叫んだ。


「ならいっそのこと殺せっ!!もしくはハチャメチャに犯○てくれ!」


 おっと?流れが不穏な方向に・・・


「早く!そのゴブリンやオークのモノのようにいきりたったそれでワタシに恥辱の限りを尽くしてくれぇ!!」


 そっち系かー!同人誌タイプの女騎士だったのかー!あぁ、初めて会ったときの凛々しい姿は何処へ・・・


「早く!そのイチモツをワタシに!」


「ついてないですよ!!」


 私がそう返すと、シュナさんがそろそろかといった風にため息をつき私に解説を入れる。


「悪いなルリカ、この女は生粋100%のマゾなんだよ」


「でもその癖を晒すのは自分より強い奴だけらしいのさ。その結果、溜まり溜まってこんな風になっちまうってわけさ」


「厄介過ぎませんか!?」


 その言葉にシュナさんが頭を掻き、答える。


「アタイもまさか勝っちまうなんて思わなかったさね。それなら前持って忠告したさ」


 確かに、直前まで負けようとも思ってましたしな・・・


「早くしてくれ!ワタシはもう限界だ!」


「五月蝿いよアンタは!」ドシュッ


「ぴえっ・・・」バタッ


 スゴい、女の人とはいえ大人を一撃でっ!?


 そしてそのままシュナさんはヴァルさんを持ち上げて言った。


「そうだ、2人とももうご飯は食べたのかい?」


「いえ、まだですけど・・・」


 するとシュナさんは優しく微笑んで言った。


「それならウチの店に来るといいさね。さっきの詫びにご馳走するさ」


 ・・・・・・


「ほら、フレアボーアのミートパイとノイジーダッグのローストさね。お上がりんしゃい」


「いただきます・・・」


 どっちも聞いたことない生き物だ・・・ダックってことは鴨でボーアが確か・・・猪?だったはず。とりあえず食べてみるか。


「うんっ!?美味しいです!シュナさん!これ美味しいです!」


 その言葉にスイも首を縦に振って賛同する。


「そうかい、そんないかい。それは作った身として嬉しいもんさね」


「この街に来てから野菜しか食べてなかったので、喜びもひとしおですよ」


 私がそう言うとシュナさんは目を丸くして言った。


「そうなのかい!それは勿体無いさね。この国は畜産とジビエの言わば肉の国さね。そこで肉を食わないなんて・・・食えて良かったさね」


「そうだったんですか・・・」


 何となく衛生面怖くて買ってなかったけど、買ってみるか。


「ところで、ヴァルさんって今どこにいるんですか?」


 その質問にシュナさんは頭を抱えてから答える。


「アイツは今ウチの空き部屋に閉じ込めてるさね。あんなのを野に放っておくのは危険だからね」


 私がそれに、そうなんですかと小さく答えるとシュナさんはそのまま言葉を続けた。


「と言ってもアイツは欲が発散されるまであのままだからね。今夜は2人で一晩中ハッスルで寝れやしないよ」


 wow…百合の香りがしてきましたわね。


 その言葉を聞き改めて私はシュナさんの体を舐め回すように見る。性格の気の強さに見合ったシュッとした体つきで、男女問わず見入ってしまうようなスタイルだ・・・


「何だい?アンタもアタイらに混ざりたいのかい?」


「い、いえ!別にそんなことは・・・今日はごちそうさまでした!美味しかったです!スイも帰るよ」


「うん、おばちゃん、ごちそうさま」


 そして私たちはシュナさんの店を後にした。


 次の日謝りに来たヴァルさんの肌艶は昨日よりもツヤツヤしていた・・・


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