第8話 西洋占星術の歴史③占星術の発展

ヘレニズム占星術はどのように発展していったのか?


アレクサンダー大王の遠征により統一され、その死後発展を遂げた文化圏をヘレニズム文化といい、時代のことをヘレニズム時代といいます。この時代に占星術はより現代のものに近づき、大きく発展していくことになります。

ギリシャ語で占星術の注釈が書かれた文章が出てくるようになりました。チャート(ホロスコープ)が残されているということは、ギリシャ語圏内の土地で占星術がなされていた証拠になります。占星術の記述が目立つようになり、かなり広範囲でサイン・ハウス・アスペクト・黄道十二帯の原理を持つ占いが存在していたようです。

ギリシャ語で文献が書かれていても、それを書いていたのはギリシャ人だけではなかったそうです。つまり、ギリシャ語を使わざるを得なかった状態に置かれた人々が、たくさんいたことになります。

また、ギリシャには様々な言語で書かれた文章が残されており、そこに様々な国の人種がいて、占星術を行っていたようです。様々な人種が占星術を学び、様々な言語で書かれた本がギリシャ語に直され、そこで更に発展していったということになります。


さて突然ですが、今日使用されている占星術は、いったいどこからやってきたのでしょう?

まさか最初から全ての占星術の考え方がそろっていて、お盆の上にちょこんと置かれていたわけではなかったはずです。占星術の概念は、様々な国で発展した考え方が混ざってできたというのはお話した通りです。では、誰が一体どうやって今の占星術の体制を作り上げたのでしょう?

私の師は、講座の中で三つの仮説を唱えています。今回はそれをまとめてみました。


① 突然の発明

どこかの誰かが、ふと思いついたもので作り上げた。

昔の占星術師というのは神官も兼ねていたので、神の啓示的なものから突如として息を始めたのではないか?


② 漸進的発展

少しずつ様々な人や考え方を通して発展してきた。

アレクサンダー大王の遠征により、紀元前3世紀ごろの占星術の文献が無くなってしまい、すでに技術を習得していた占星術師たちは、口伝にて占星術の技法を伝えたのではないだろうか。ペルシャから占星術師たちが各地に散らばったことも、言語がギリシャ語に統一されたことなども、占星術が少しずつ発展していった要因になったと思われる。そのような背景から、当時はほんの一握りの、計算や観測、様々な言語で読み書きができる優秀な人物のみが、占星術に触れることが出来たのではないだろうか。そういった人々が、少しずつ占星術というものを作り上げていったと考えられる。


③ コス島のベロッサス

コス島のベロッサスとは、メソポタミアの占星術師で、前280年ごろにギリシャのコス島に移住し、占星術の学校を作ったとされる人物である。ここで占星術は発展したという考え方である。また彼は、歴史を示した著述家でもあったらしい。彼はギリシャ人支配者の要請により、ギリシャ語でバビロニア史を書いているが、残念ながらその書は現存していない。ここでも前述の大きな謎に当たってしまう。ベロッサスは、占星術を教えていたが、ある程度学問として完成されたものをもっており、それを学校で教えたていたのだろうか?はたまた、彼自身が考えたものを皆に広めたのか。占星術を教えるに至った経緯がわからない。ただ、ここでは占星術の勉強ができていたことは確かなようである。ただしWikipediaで彼の記述は、伝説的な人物として書かれている。本当に彼が実在の人物であるかは、照明することは難しい。


このように三つの仮説を立てられました。師は、最初は①ではないかと考えていたけれど、おそらく②の影響が大きいのではないかとおっしゃっていました。私もその考え方に賛同します。占星術を学ぶことが出来た限られた人物だけが、本当のことを知ることができ、様々な国の技法を織り交ぜながら、またそれを後世へと伝えていたのではないかなと思います。今となってはそのことを知る方法はありません。

また、絶対に①はないとも言い切れません。どうしても説明がつかないことが、占星術にはたくさんあるのです。全てとは言い切れませんが、もちろん見えざる何者かの手によって考えられた概念があり、その意思をくみ取ることのできる占星術師が体現した部分も、やはりあるような気もします。

元々、占星術を行っていた人には、神官の素養があるものもいたそうです。大いなるものの声を聞き、それを皆に伝える役割を持つ人が、占星術を行っていたようなのです。今日でも行われている占星術が、どこか神秘的な雰囲気を持っていることもうなずけます。

一人の天才が作り上げたものが残るのもロマンがあっていいですが、様々な人が少しずつ良くしていき細々と伝えてきた、そして大いなる存在の影響も少なからずあったと考えるほうが、現実的であるように思います。






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