ホームレス転生

パーク

第1話

俺は41歳住所不定無職。

所謂ホームレスだ。


なんでホームレスになったのかは難しい事では無い。なるべくしてなったのだ。


両親は絵に描いたようなヤンキー夫婦でやはり貧乏だった。

軽犯罪を繰り返していたのか両親のどちらかが一定期間いなくなるのはざらだった。

とにかく普通ではない家庭で育ち、

食費も満足に無い俺たち家族は、家族ぐるみでの万引きや食い逃げなど日常茶飯事だった。

当時の俺はそれが普通だと思っていたしそういうものだと認識していた。


親父は俺が中学に上がって少ししたら蒸発し、母は風俗で働き、なんとか俺を育ててくれた。


学生時代の俺はというと、もちろんいじめられた。

貧乏で着ている服も汚く、風呂も満足に入れず常に異臭を漂わせている俺は格好の的だった。

汚物扱いや殴る蹴るの暴行などとにかくありとあらゆるイジメを受けた。

俺じゃなきゃ自殺してるね。


そんな俺でも就職はできた。

もちろん職場でもいじめられた。

不衛生なのはもちろん今までいじめられ続けた俺は臭いだけではなく、卑屈ないじめられっ子の性格が体に染み付いてしまっているみたいだ。

誰からも好かれる性格のやつがいるように誰からも嫌われる人間もいるのだ。

社長から後輩まで色んな人に嫌われて、

挙げ句の果てには上司の横領の罪を着せられてクビになった。

とにかく貧乏で汚らしかった俺は誰からも信用される事なく会社を追い出された。

数年前に母も今までの苦労がたたったのか病に倒れこの世から去ってしまった。

ボロアパートといえど数万円の家賃も払いきれずに家も家族も失い現在に至るという訳だ。


「はぁ」

家路に向かいながら俺はため息を吐く。

幼い頃から何事にも満足感を感じたこともない俺はため息をつくのが癖になっていた。

寒空にさらされて真っ白になった息すらもったなく感じ勢いよく息を吸い込む。


ここ数日食べ物にありつけずぺちゃんこになったお腹をさすりながらひたすらに歩く。

最近ではホームレスが寄り付くからと廃棄弁当のゴミも鍵のかかったゴミ箱に入れられてしまうので中々ご飯にありつくことができない。

息を吐いては吸うを幾度か繰り返すと我が家についた。

我が家と言ってもちゃんとした家があるわけでも無く、河原の草むらに同化するように作られたビニールシートとダンボールでできた俺の手作りのマイホームだ。



ドア(ビニールシート)を開け、いそいそとダンボールと拾い集めた衣服でできた布団に入り込む。

何も食べていないのだ、空腹を紛らし、エネルギーを使わない為にも寝るのが1番なのだ。


食べ物を求め一日中歩き回った俺はすぐに眠りに落ちた。

しかし、腹部に走った衝撃により叩き起こされた。


「っぐ、、うぅ、、、」


目を開けるとそこには20歳前後の若者が3人いた。

皆髪の毛を染めチャラついた雰囲気だ。

俺とは真反対の人間。

所謂陽キャという人種だろうか。

ただ普通の陽キャと違うのは3人ともバットや鉄の棒のようなものを持っているところだ。

皆うすら笑いを浮かべ何やら目がぎらついている。薬でもやっているのか?


「おいおい、ほんとにやっちまうのかよ」


3人の内入口に近い所に立っている男が声をかける。


「さっきも言っただろ、ホームレスって意外と金持ってんだよ。金庫とかも持ってねーし痛めつければ簡単に奪える。」


俺はあまりの脇腹の痛みに悶えながら奴らの話を聞く。

つまりホームレスを狙った強盗ってやつだ。

雰囲気や会話から察するに初犯か?

慣れてないからなのか?だからこんなに腹が痛いのか?

さっきから脂汗止まんないし全然動けないし、これ何本か骨が折れてるんじゃないか?

そんなことを考えているともう1人の若者が俺の枕元辺りから声を出した。


「おい!あったぞ!こんなところに隠してやがった!…んーと、おい!こいつ全然金持ってねーぞ!子供の小遣いぐらいしかもってねー!」


「なにぃ?舐めてんのかこいつは」


リーダー格風のおそらく手に持ってるバットで俺の脇腹を殴ったであろう男は額に青筋を浮かべながらこちらを睨む。


「だから言っただろ、リスクを犯してまでこんなところ来る必要無いって、ま、薬のやりすぎで聞く耳も持ってないか」


「お前ぇ、、、くっ、この薄汚えホームレスめ!俺に恥かかせやがってこのくそ野郎が!」


リーダー風の男が俺の足をバットで叩きつける。

頭に響く鈍い音が体中を駆け巡る。

こ、こいつやりやがった!確実に折れたぞ!

骨が折れるとこんな音がするんだなぁと意外にも冷静に考えていると金を探っていたやつも俺への暴力に参加する。


「わざわざ寒い中こんなところまで来たのに何してくれてんだ!」


無茶苦茶な事を言いながら俺の頭を思いっきり蹴飛ばす。

脳震盪でも起きたのかぐるぐる回る天井を眺めながら空腹と寒さで体力の無い俺は抵抗することもできずどんどん自分の体が壊されていくのを感じながら意識を手放した。

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