第7話

 土曜日、早先生と台湾料理を食べながら、色々な話をした。

 まずは仕事の話を詰め時間帯と日勤の金額、このまま続けれそうなら診療室増やすと言われてた。

 

 とりあえずパーティションで区切って診療室を増やすし、僕一人で患者さんを見て2人体制にする予定らしい。

 

 ひと月間、早先生の側で見てきたので、たぶん大丈夫だ、診断に迷った時は絶対に早先生に聞く事と言われた。

 安心だ、心のどっかでホッとした。


 2人だけの食事に最初は緊張していたが、早先生が気を使ってくれ和やかに話せた。


 僕が研修医終了後、2年間小説を書いていたと、歓迎会の時言ったのを覚えていて詳しく聞かれた。


「小説家になる夢はもういいの?」


「えぇ、まあ…食べていけないんで」


「アルバイトかなにかしながら書いていたの?」


「えぇ、まあ…仕送りしてもらっていました」


「理解のある家族で良かったね」


「えぇ、まあ…」


「あれぇ、この話はタブかな歯切れ悪いね」


 早先生は、にこやかに笑いながら聞いてきた。


「いえ、大丈夫です」


「書く事に心残りがないなら良いけど、…私としては長く居てもらいたい。私の希望だけど」

 

「ありがとうございます、そう言って頂けると嬉しいです」


「私と話と緊張するのかなぁ」

 僕に気を使わせている、うぅまずいなんとか仕切り直しをしないと。


「まあ、はい、大先輩ですし、雇用主です。

なにも出来ない僕を雇って頂きありがとうございます」


「ふぅ、僕なら気にしないで、2代目ボンボンだよ雇用主ねぇ、うぅんまあねぇ」


「ボンボンでしょけど、素晴らしい医者です。尊敬します」


「ありがとう、私しかいないから素晴らしく見えるんだよ、普通だよ」


「そうなのかなぁ?」


「はっはっ、一井先生面白いねぇ」


「すいません、」


「いゃ、出身どこ?」


「東京です」


「いずれ帰るの?」


「未定です」


「なんか訳あり?」


「いえ、特には何もないです」


「一井先生は、私に聞きたい事ないの、遠慮なく聞いて良いよ」


「結婚しないのは、なぜですか?」


「うぅん確かに気になるでしょ、40過ぎて独身ってね、私は男の人が好きなの…だからかな、スタッフには内緒だよ。

 世間的には、縁がないからって言っている」


「そんな大事な事、僕に言わないでください」

 僕は動揺したが、なんとかサラリと言葉が出た。


「一井先生もでしょ」


「……」


「ごめん、言っちゃいけない事だった」


「いえ」

 あの心の中の動揺は激しく揺れ動いた。

 令には言えたことが、早先生相手だと全く違う、この違いはなんなんだと思ったけどこの場で考えきれない。

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