第22話 映し出される真実?

「はい! 皆様、盛大な拍手をありがとうございます! みなさま、今、シラトナ・イチローが舞台に現れました。彼が手に持っているのが今回披露される新商品でございます!」


 シラトナ・イチローと呼ばれているツワブキさんは神妙にその魔道具を掲げ、観客たちに見せつけている。


 って、あれ?


 あれって僕が持っているウサギに入っている銀色の玉の魔道具と同じものだ。


「さて、今回はこの魔道具のお披露目となります! 皆様、目ん玉ひん剥いてよーくご覧くださいませえ!!」


 そう言うと、会場内が暗くなり、コウタロウさんの照らす一筋のスポットライトを浴びたツワブキさんが銀色の玉を掲げ、舞台後ろのスクリーンに向かって歩き出す。


「今回の目玉は、この新型映像投影機です。さあ、起動しますよ。スイッチオン!」

 すると、舞台上にどこかの街の映像が立体的に映し出される。


 これは、この街、発掘現場だ。


 スクリーンに映し出されたのは、先日、僕が魔石を奪われる場面。


 あー、弱いなあ、悲しいほどに弱いなあ、僕。

 情けない。って、なんでこんな?!


 いや、待て。

 あのときギンゾウさん。


 そうだ、近くで最初っから見てたって言ってたわ。


 こんな映像記録を残すなんて、しかも公衆の面前で僕をおとしめるなんて。


「アダン君。あなたがどう思おうと勝手ですが、これはあなたをおとしめるための行動ではありませんよ」


「え? だって?! ひどいじゃないですか!」


 という僕の声は、観客たちのざわめきにかき消された。


「――ってことなんですよお! すごい映像技術でしょ! この最新魔道具は! ん? 違う? 映像の内容? ああ、もちろん真実ですよ! だって私がこれで記録したんですから! 間違いありません!!」


 映像内容は、僕が見つけた魔石をガラの悪い連中が奪い取り、さらに彼らは辺りをぐちゃぐちゃにしていく。



「さらにい!! こーんな映像もあったりしますが!! 皆さんみたいですかあ!!  まあ返事がなんでも流すんですけどもね!」


 ギンゾウさんがそう言うと、ツワブキさんが再び銀の玉をセットする。


 そこに映し出されたのは、宿屋で寝ている男の横で金貨が盗まれている画像が映し出されている。


 会場は大騒ぎだ。


 盗み出している男の腕にはペルセポネの社章がでかでかと印刷されている。


 いや、これ盗んでるのギンゾウさんだし。


 部屋明るいし、ばっちり映ってるって明らかに捏造じゃん。

 いや、でも部屋はあの宿やか。

 って事はあの時ギンゾウさんが仕込んだのか。


 もう、なにがなんだかわかんないや。



 そしてついに。


 ざわざわとした観客たちを押しのけるようにこの館の主、領主が舞台に上がり込んで来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る