類は友を呼ぶ。

 さて、カラメさんとの明日に控えたわけだがどうにも分からない。

 なぜに俺と直接会うことにしたのか。別に配信者同士のコラボなら通話で事足りるだろう。


 まああの人のことをあれこれ考えたところで無駄なような気がしなくもないのだが、気になってしまうのはしょうがないだろう。


 思い出すだけで嵐のようなコラボの勧誘だった。

 何とか会話が成立したが、しっかりしていないと飲み込まれていただろう。


 いや、理性は感じるのだ。

 故に会話は通じているし、支離滅裂で意味不明と言うわけではなかった……ハズだ。

 理性がなくてただただ暴走しているような感じではなく、理性と知性はちゃんとある。しかし元来の性格がああなのだろう。


 癖が凄いんじゃ!


 どこかのお笑い芸人のようなツッコミをしたくなる気持ちを分かってくれるだろうか。


 だがどれだけ癖が強かろうが相手は大物Vtuberにして開祖と呼ばれているような人だ。時代の最先端を行っている人。そのような認識でいいだろう。

 『でらっくす』所属の大物Vtuberとのコラボと言うことで俺も気合が入っている。せめて粗相のないように気をつけなければ。


 

 ▼



「よっす」

「どうも……」


 事前にどのような服装で来るのか、チャットでやり取りをしていたので待ち合わせ相手を探すような羽目にはならなかった。

 カラメさんとリアルで会うことになるとは思わなかったが、会ってみて分かった。まあこれが美人なのだ。


 立てばなんちゃらってあるだろう。あれだ。

 生憎俺はあの言い回しを覚えているわけではないので言えないが、誰が見ようと見目麗しい美人であることに間違いはない。


 しかし俺はもう一つ気になることがあった。


「……?」


 なにも言わない俺を不思議がってか、カラメさんは首を傾げている。

 この動作も絵になるが、今は置いておこう。


 俺の気になることと言うのは、単純だ。

 小さいのである。


 174センチの俺の身長より大分小さい。

 見た感じ145あたりだろうか。小柄である。さらに彼女は童顔だ。見た目だけでは高校生の方が大人に見えそうなくらいである。


「成人してます?」


 ついそんな失礼な言葉が口を飛び出してしまったが、昨日のやり取りを思い出すとこれが失礼だと思えなくなってくるのだから不思議である。


「してるわ!失礼だなぁ。そうですよ。ボクは小さいですよーだ!」

「ボクッ子なんですね」

「……あのさ、急に話題変えないで。スピーディーすぎるよ。もっと謝ってくれるもんかと思ってたのに」

「ボクッ子なんですね」

「ちょっと、確かに急に話題を変えるなって言ったよ?うん。たった今ね。でもだとしても全く同じことを言うのは気味が悪いと思うんだけど……?」

「ボクッ子なんですね」

「そうだよ。配信もプライベートも変わらないからね」


 うん。3回目にしてようやく答えてくれた。

 心なしかカラメさんの顔が諦念に染まっているような気がするが、まあ気のせいだろう。


 それにこの人にはこのくらいの接し方が丁度いいような気がしなくもない。

 4歳後輩だが、まあこの際年齢とかは気にしない方向で行こう。


「なんで今日は俺と会おうなんて思ったんです?」

「んー、なんとなく?一応ボクもキミのファンだからね。会いたいと思うのは当然だと思うけど?」

「嬉しいですね。それはさておき、ネットで知り合った男と2人とは、些か不用心なのでは?」

「それはヘーキ。今、ボクのスマホはビデオモードにしてポケットに入れてあるから。……変なことしたり言ったりしたらこれが証拠になっちゃうよ?」


 ニヒヒと悪戯っぽい笑みを浮かべながら恐ろしいことを言う。心臓に悪いのでやめて欲しいが、自衛手段はあったようだ。


 流石は長年ネット上で活動している人だと思う。この辺りの意識の高さは1級品だ。


 本当に1級品ならまず俺と会うのかって話になりそうだが、それはそれだ。


「そうですか、怖いですね。それで、どこに行くんです?」

「知らーね。適当にフラフラ歩こうや」

「いいんですかねそれで」

「ええねんええねん。ボクだって後先考えずに誘っちゃったしね。何も考えてないんだよ」

「さいですか。なら、軽く雑談できるようなところに行きますか」


 遊ぶというような関係性でもないだろう。世間話やら配信者トークができるような落ち着いたところに行くのが良いのではなかろうか。


「お、キミの得意の雑談が聞けるのか〜。いやー楽しみだな〜」

「……あれは雑談って言えるんですかね」

「いやいや。普通の雑談もしてるじゃんキミ」

「まあそうですが」


 確かに普通の雑談の方が割合的には多い。

 だけど何故かリスナーとの舌戦の方が印象に残ってしまうんだよなぁ。


「テキトーなカフェでも探そうか」

「それがいいですね」


 そんな感じのゆるーい雰囲気で、俺たちはゆったりと歩き出した。

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