第9話

 お屋敷に勤める、メイドさんの悩みは。


給餌もできる、庭師とも仲がいいわ、奥様のお世話も旦那様のお見送りも、みんなそつなくできるのにっ


 そこで泣く。完璧じゃないか。料理は多分コックさん?シェフが作るし、旦那様のお世話は執事がして、奥様の衣装選びもその日に合わせて一緒に選び。あるいは秘密の夜会のために特別な場所に宝飾品を隠している信頼もある。まさか、泥棒を疑われたんじゃ。


お部屋のお掃除と、ベッドメイキングが、どうしてもだめなのっ


涙がやっと溢れた。もう冷たいだろうに。


なんですと?

「お掃除、ですか?あと、ベッドのリネン?シーツ替え?」


英国のような雰囲気なので知識をフル稼働させたがあやしい。「なぜ?」


どうしても、涙が出て


涙がでる。それは。


洟水が止まらなくてみんなに汚い、って、不潔がられて。


 それはしょうがないじゃないか。ハウスダストだ。多分敏感な体質なんだろう。私もだ。


だから、みんなわざと埃っぽい床やしばらく放っておいた部屋を私に掃除させるの。でも、わたし、お掃除好きだし、きれいずきなのにっ、おまけに


好きな人にはいつ告げ口されるか分からないし、と。みんなから鼻にコルクでも詰めたけば?

 と言われるらしい。ティッシュないの?!それとも、そういう、意地悪なのか。きっと仕事はできる方だ、ただ得手不得手ではなく、個人の体質からくる症状でそれに耐えながら今の仕事をこなすとなると。

 「マスクないんですか」この夢の中は。私なんかは掃除が辛い時はマスク必須だ。


マスク?ペストマスクのこと?


ペストマスク?!どれならあってなにならないの?!


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