Part7

 二ヶ月後、山の向こうの街にて。


「君、一人だよね。俺たちと一緒に行かないか」

「仲間と一緒なら楽しいよ!」


 武具店の前で、二人の男剣士が少女に声をかける。加護の剣士同士で組んでいるコンビだ。


「別に、いいです」

「ちょ、ちょっと!」


 だが声をかけられた少女……クラリスは素っ気ない返事で断ると、逃げるように男剣士二人の元を去っていった。


(私はもう、誰とも手を繋がない。誰とも寄り添わない。誰も愛さない。私にそんな資格なんて、これっぽっちもないから)


 魔人との戦いで仲間を皆殺しにされ、自らもその身を貫かれ、地獄の業火で焼かれた時に彼女は誓ったのだ。


 もう、誰とも仲間にはならないと。これからは一人で戦い続けてゆくのだと。


(普通の女の子に戻って、普通に死にたい。だから……)


 クラリスは思う。加護の儀式を受けた瞬間、本当の自分は神様に奪われたのだと。今生きているのは、神様に押し付けられた仮初の命なのだと。


 全ては自分の、かけがえのない命を取り戻す為に。普通の少女としての命を取り戻して、普通の人間としての死を迎える為に。


「魔神王を……殺す」


 全ては自分の為に、少女は世界の救済を目指した。

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