第11話 買い物

 太陽に照らされたセミが鳴きだす7月中旬


 俺らは弱めのクーラーが効いている食堂にいる


「ねぇ、そろそろ夏休みだけど、どっか遊びにいかない?」


 陽菜が突然言った。


 そう言えば、クラスの中でもそんな会話が各地で行われていたな。


「急だな、まぁ、いつも暇だしいいけど」


「私もいいよ」


「俺は部活のスケジュールとあえば、、」


 俺と桜、あとはユウが順番で答える


「じゃあ、どこ行く?」


「うーん、夏祭りとかか?」


「それいいね」


「今年はフミと二人きりじゃなくて済むのか、、」


「そうだな、、」


 俺とユウは少し遠い目になる。実は俺とユウで他の友達たちも誘っていくのだが、毎年、ユウが告白され、それことごとく振っているため、解散間際には必ず気まずい空気になっているのだ。


「じゃあ、夏祭りは決定で、他は、、」


 ユウがそこまで言ったとき、陽菜が声を上げた。


「海行かない?」


「それいいな!」


 俺は頭の中で海ということは水着と連想し、美少女二人の水着姿への期待に胸を膨らませる。

 ラブコメだったらなんか起こるやつじゃん、とバカみたいなことを考えていた。

 

 この間0.2秒


「俺もいいと思う」


 ユウのテンションも明らかに上がる。


 だが


「海、、みずぎ、、」


 桜は自分の胸元を見ながら暗くなっていた。


 別に桜の胸は小さくないし、逆に大きい部類に入るのだと思うが、、


 しかし、俺はここで言ったらセクハラになること決定なので何も言えず。

 ただ陽菜に『なんとかしてくれ』と目線で訴えるしかない、と思っていた矢先


「桜ちゃん、そんなにおっきいのに心配する必要ある?」


 と陽菜が絶望したような目でオブラートに包まずに言った。


 桜は恥ずかしそうに顔を赤く染めながら


「あの、、人の視線が怖いというか、、」


「あぁ、そんな感じか」


 俺は少し納得したような声を上げる。


 陽菜はさっきの俺らより遠い目になる


「ねぇ、桜ちゃん知ってる?持ってる人は傷つけようとしなくても人を傷つけるんだよ」


 陽菜はより遠い目になり、闇に片足突っ込んでいそうな声で呟いた。


 桜は『?』という反応だった。



 そこから数分間この空気の中、皆が黙々と弁当を食べ進めていくため


 俺とユウは空気を変えるため目線で合図を送り


「とりあえず、夏祭りと海に行くってことは決定でいいね?」


 ユウが言った、俺らはそれでいいと伝える。


 ここで話が一度まとまりかけたが、


「いいけど、私水着ない」


 そう桜が放った一言により話はもう少し続くことになる。


「そういえば私もないわ、ここ三年間海とか行ってなかったし」


 まぁ、確かに陽菜は三年前から成長してる、どこがとは言わないが。


「じゃあ陽菜ちゃん、一緒に買いに行かない?」


 桜が陽菜に呼びかける、桜から陽菜を誘うのは初めてだ。積極性が増していていい傾向にある。


 ただ、桜の目が闘争心に沸いていた気がしたが気のせいだろう。


 ―――――――――


 放課後、俺はさっさと校門を出て家に帰っていた、


 いつもは桜や陽菜と一緒にワイワイ帰っていただけあって、一人になると急な寂しさに襲われる。


 それから少しして桜たちの水着姿が頭に浮かんだが、『ダメだろ』と俺の理性が語り掛けてきたので、

 頭のその部分をシャットダウンした。


 =========


 私は桜ちゃんと学校から最寄り駅のショッピングモールに来ている。


 周りから視線を感じるけどあまり気にしないことにする。


「陽菜ちゃん、水着のお店どこかな?」


 桜ちゃんは無言に耐えれなくなったのか、私に聞いてきた、


「えーと、あ、ここだ!」


 私は周囲を見回すと、たくさんの水着が飾っているお店を見つけた。



 私と桜はその店に入っていく、そこには色とりどりの水着があった。


「私はこういう系かな、、」


 桜は顔を赤くして言った、手元には可愛いフリフリがついた黄色のビキニがあった。


「じゃあ、私はこれかな」


 私はヒラヒラすらついていないシンプルな水色のビキニを手に取った。


「じゃあ、試着しようか。」


 私たちは試着室に入った。


 ――――――――


「陽菜ちゃん、どう、、かな?」


 顔を真っ赤にした桜ちゃんが目の前にいる、何というか引き締まってはいないのだがある一部分が大きいので、結果的に良いボディラインに見えた。


「かわいいじゃん、恥ずかしがる必要ないよ。」


「そう?陽菜ちゃんもめっちゃ可愛いよ!」


「そう?ありがとう」


 正直、桜ちゃんより露出度が高く、恥ずかしいのだが、これでフミに意識してもらえるなら、そんなこと気にならない。


 私はこの水着をレジへもっていった。


 ========


「さぁ、水着も買ったし、なんかほかに必要なものってある?」


 お互いに水着を購入したあと、陽菜ちゃんが私に聞いてきます


「うーん、日焼け止めは、、いつものじゃダメだよね」


 正直、手元に水着という爆弾を抱えているような気持ちなので、一刻も早く帰って家に置きたい気分なのですが、

 せっかくの機会なので足りないものを買い足していこうと思います。


「そうだね、じゃあちょっとそれも見に行こ。」


 女の子二人のショッピングはまだ続くらしいです。


 なんか視線を集めてる気がしますが、それは陽菜ちゃんが可愛いからでしょう。


 ―――――――――


「あぁ、流石にこれ一人で使うのは多いかな?」

 

 陽菜ちゃんと薬局の日焼け止めコーナーの前にいます。


 そこで見つけた、海用の日焼け止めの内容量が絶対に余るレベルで多いため、どうするか悩んでいます。


「そうだね、せっかくだし、一緒に使うっていうのもありじゃないかな?」


 別に女の子同士ですし大丈夫なはずです。


「そうしよっか」


 陽菜ちゃんも頷いてくれました。


 ――――――


「これで、買い物終了」


 ショッピングセンターから出た陽菜ちゃんは威勢よく、達成感ある声で言いました

 時間は六時を過ぎていたが、空はまだ暗くなる気がないようです。


「桜ちゃん、今日は楽しかったよ。でも、当日は勝負だよ。」


「うん、負けないよ。」


 内容は言わなくてもお互いに分かっています、


 私たちは恋敵ライバルという名の友情で結ばれていました。

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