ラブコメがしたい！

第2話 仲裁と昼食

　入学式から二週間ほどが経ち。皆がクラスに慣れてきて、ある程度グループができてきた。

　その中で俺はというと、せいぜい後ろの席の奴と友達になれただけだ。

　あれから、ユウが部活に入るまでは、陽菜の要望で俺たちは三人で帰っていた、というか陽菜を駅まで送っていったのだが、

　ユウが部活に入ってからは、陽菜と俺で一緒に帰っているのだ。

　俺はユウからの言葉を受け、俺の方にもう気まずさはない、しかし、陽菜のほうがなんかソワソワしだして、気が気でない。

「さて、どうすべきかなぁ。」

「どうしたんだよ、まだ一対一で話す覚悟が決まってないのか？ヘタレフミなのか？」

「誰がヘタレフミじゃゴラァ、そうじゃなくて話してても、なんか陽菜のほうがおかしかったんだよな。」

「へー、どんな感じだったんだ？」

「なんだよ、その興味津々な顔は。お前陽菜のことまだ好きなのか？」

「勘違い甚（はなは）だしいなオイ。そんな気はフラれた時になくなったわ。」

「あっそ、まぁ相談乗ってほしいから言うけど、あいつなんか口調が違うというか雰囲気が少し変わってたんだよな、

　なんというか、ソワソワしてる感じ。」

「じゃあ、気付いてあげろよ。」

　ユウがあきれたように言う。

「ん？どういうことだ？。」

「なんでもねぇよ。」

　ユウの言葉は気になったが、時間も時間だったので学校へ入っていく。

「じゃ、陽菜のこと送ってやれよ。」

「おう」

　ユウと別れ俺はクラスへ入っていく、するとすぐに違和感に気づいた。

「おはよう、司（つかさ）。何かあったのか？」

　とりあえず、後ろの席の司（つかさ）に話しかける。

「おはよう、秀文くん、僕もついさっき来たところだからわからない。」

「そうか、ちょっと見てくるわ。」

「ごめんなさい、わざとじゃ、、ないの。」

　そこにはあの眼鏡をして、髪の毛が前にかかってしまっている女子、名前は城山（しろやま）桜（さくら）だったはず、が涙目になりながらちょと目つきの悪い女子に謝っていた。

　その後ろにはクラスメイトが心配するような目で見ている、しかし、誰も止めようとしない。

「じゃあ、なんで私の筆箱を落としたの？」

　何人かが軽く止めようとしているが、そんなので止まる気配がなかった。

「それは、、その、、わたしがちょっとぶつかっちゃただけで、、、、」

「言い訳とかいらないから。」

　　俺は流石にこのままでは城山さんのトラウマになると思い、二人の間に入った。

　、、、あとはラブコメのテンプレだからやってみたかった、という気持ちも少しはあったのだが。

「なんだよ、女の子助けてヒーロー気取り？」

　ちょっとラブコメぽくね？と思っていた俺は一瞬ひるみかけたが、一歩も引かずに言い返す

「そういうつもりはない。とりあえず、詳しいことは知らんが筆箱が落としたぐらいで追い詰めすぎだ。引き際を考えたほうがいい。」

　彼女も悪びれた様子などなく平然と言葉を返す。

「私はただこの子に反省してほしかっただけだけど。」

「じゃあ、なぜここまで追い詰める必要がある？城山さんは謝っていただろう。」

「外野がガヤガヤうるせぇんだよ！」

　彼女は完全に冷静さを失っているようで俺の胸ぐらをつかもうとする、その時

『キーンコーンカーンコーン』

　チャイムが鳴った。彼女もチャイムを聞いて冷静になったのか、何も言わずに自分の席へ戻った。

　ほかのクラスメイトも各自各々の席へ戻っていき、俺も戻ろうとしたとき

「助けていただきありがとうございます、、えーとしゅう、、ぶんさん？」

「しゅうぶんじゃなくてひでふみだ。ただちょっとやりすぎだなと思ってやっただけだから大丈夫だよ、とりあえずチャイムもなったし席に戻ろうか。」

「あ、、はい。」

　その後の午前中の授業はほとんど自分のやったことを思い出し、なんとも言えない気持ちになっていた。

　あとは、心の一部分でラブコメのテンプレをできたという喜びがあったのだが、

　他人の不幸で喜んでいるように感じて、申し訳なさが急浮上してきた。

　―――――――――――――

「気まずい、、、、」　

　昼休み、いつもならクラスの中でさっさと食べてしまうところだが、朝あんなことをしているのでクラスの中にも居づらい。よって、今日は食堂で食べることにした。

　クラスから出ようとすると、後ろから小さな声がかかった

「秀文さん、いっしょに、、ごはん、、たべま、、せんか？」

　俺は背中が飛び跳ねるような感覚になりながら、話しかけてきた本人である城山さんのほうを見た、まぁ彼女も気まずいと思っているらしい。とりあえず、教室にいても気まずいだけなので、一緒に食堂に行った。

「うわっ、思ってたより混んでるな。」

　そう呟くと隣にいる城山さんも小さく頷く。

　この学校は生徒の人数のわりに食堂が狭く、現在進行形で席が埋まっていた。

　ほかのところにでも行こうかと言いかけた瞬間

「おっ、フミじゃねぇか、座る席無いならこっち来いよ。」と声がかかった

　声の方向を向くとそこには、ユウと陽菜が４人掛けの席に座って、ユウがこっちに手を振っていた。

　俺は城山さんに声をかけ、結果そっちへ行くことにした。

「フミが食堂なんて珍しいじゃん。しかも女の子連れて。」

　陽菜がちょっと不機嫌そうな顔をして言ってくる。

「いや、、ちょっとこれには訳があって。」

「あー、そういえば、俺お前のクラスの奴から聞いたは、なんか女子に喧嘩うった奴がいるって。もしやそれお前か？」

「別に喧嘩うったわけじゃないけど。」

「おまえかよ！」

　なんか事情を説明するのも恥ずかしく、どうこたえようか言葉を探していると。

「ところで、その女の子はだーれ？」

　陽菜が気にしてませんよ的な雰囲気で聞いてくるが、その言葉には棘（とげ）がある。

「え、、えーと、、」

「大丈夫、陽菜はそんなに悪い奴じゃない、、と思う。」

「おいこら。」

　みぞおちに陽菜のこぶしが刺さる。

「イッタッ、まぁ城山さん、とりあえず自己紹介ぐらいしてみたらいいよ。」

　このままだと時間がただ過ぎていくだけなので、とりあえず、話を進めることにした。

「え、、っと、城山、、桜です。よろしく、、おねがいします。」

「私は青谷陽菜、陽菜でいいよ。」

「俺は竹中武優、ユウでいいよ、よろしくね。」

「じゃあ、俺もフミでいいよ。」

　そう言いつつ各々食事を始める、

「フミのはやっぱり色合いが偏ってるな。」

「別にいいだろ、朝は時間ないんだから。」

「え、どういうことですか？」

　城山さんが何かわからないようで聞いてきた。

「あぁ、こいつ毎朝自分の分の弁当用意してるのよ、親が忙しいから。」

「えっ、マジで？」

　陽菜が驚いたような様子でこっちを見てくる。そういえば、俺が弁当作り始めたのは中二終わりごろからだったような。

「フミ、私にその卵焼き頂戴！」

　陽菜から続けて言われ、驚いた。

「いいけどどうした？」

　箸の口をつけてないほうで卵焼きをつかみ、陽菜の皿の空き地に乗っける。

「じゃあお前のほうのから揚げくれよ。」

「なんで？等価交換じゃないじゃん。」

「お前俺の卵焼きにどれだけの価値があるのか知ってんのか？」

「んー、から揚げ0.3個分？」

「中途半端すぎて、なんか突っ込みずらいわ！」

　城山さんはこの会話を見て小声で笑っていた。

　―――――――――

　あの後結局昼休みが終わるまで、食堂にいた。

　最初は城山さんが話に入ってこれるか心配だったが、後半は入ってきてあたふたしながらも楽しそうにしていたし、そんな心配は必要なかったのかもしれない。

　今日も授業が終わり、みんなが部活に行ったり、かえったりして、教室にほとんどの人がいなくなったころ、俺はいつも通り帰ろうとした、すると左右からほぼ同時に声をかけられた。

「あのー、フミさん一緒に帰りませんか？」

　片方は城山さんだった

「おい、秀文ちょっといいか？」

　もう片方は、、、できるだけ絡まれたくないんだが、、

　城山さんはこの声を聴くとすぐに俺の後ろに隠れた。

「美郷ちゃん、高圧的な態度はやめようね。」

　へー、そういう名前だったんだ。

「波（なみ）、わかってるって、秀文、城山ほんとにちょっとだけ話せないか？」

　目つきの悪い女子改（あらた）め美郷さんが話しかけてきたのだ。

　改めて顔を見ると、そこそこに顔が整っていて、モテそうだった。

　波さん、ここで注意できるなら、朝もしてほしかったかな。

「城山、黒崎、朝はすまなかった、ちょっと嫌なことが重なってしまい当たってしまった。」

　ん？失礼ながらもなんか因縁つけられてボコボコにされるのではないかと思ってしまっていた俺は一瞬言葉を失った。

「許してもらえなくても、謝っておきたいんだ。ほんとにすまない。」

「実はね、美郷はね、朝からなんかめんどくさい人たちに絡まれて、

　やっとの思いで学校についたと思ったら、次は知らない先輩から告白されるわで、

　機嫌が悪くなってって、言い訳でしかないけど、この子癇癪（かんしゃく）もちで、一回キレちゃうと私でも止めれないんだよね。」

　そういうことだったのか。俺はあまり気にしていなかったが、城山さんの様子を見てみると、すこし驚いたような表情をしながら美郷さんを見ている。

「まぁ、俺は気にしてないからいいけど、城山さんはどうなの？」

「わたしも、、筆箱とか、、落とした、、ごめんなさい。」

「城山さんは許す方向でいいんだね？」

　城山さんは何も言わずに頷く

「そういうわけだから、まぁ、今度からしっかり気を付ければいいと思うよ。」

　美郷さんは安心したような表情を見せた後、

「しかし、私は何かけじめをつけなきゃいけない気がするんだが。」

「いや別に、謝ってもらったし別にいいけど。」

「いや、それだと私の気が済まないからな。これは一つ借りができたということでいいか。」

　律儀な人だな、と思いながら、逆にこれを断れば話が堂々巡りしそうだったので、城山さんのほうにも意見を聞き、それでいいと返事をした。

「ありがとう、この借りは絶対に返す。」

「私からもごめんね、うちの美郷が迷惑かけて。」

　そういうと、二人はさっさと帰っていった。

　城山さんと俺が教室に取り残されたわけだが、とりあえず最初に話しかけられた時の返事をした

「じゃあ一緒に帰ろうか、方向はどっち？」

「えっと、駅と逆方向。」

「同じ方向か。」

「そうなんだ。」

　城山さんは喜んだような表情になっていた。

「とりあえず帰ろうか。」

　そういうと、二人で教室を出た。

　何かを忘れていることすら忘れて、、、