宇宙人、今日が何日何曜日かわからない

挙手をするように

手をあげられると反射的に目をつぶり首をすくめる。


なんとも情けない動きを未だにしてしまう。

いや、妻に出会ってからはだいぶなくなった。


……。


目を覚ますとそこは真っ白な部屋。寝起きというのもあって雲の中にいるかのようだ。

今朝から私はここにいる。久しぶりに深く深く眠っていたようだ。

時計がないので、時間が全くわからない。

そして今日が何日で何曜日なのかもわからない。


今日に至るまで私はおかしくなっていたのだろう。


そんなことを思いながら、起きてみる。

首に痛みを感じ、

首をぐるっと回してみる。


世界が一周してその中にこちらを見つめる

監視カメラが二つある


私は常に監視をされて行動を管理された。

自殺を試みた人間なのだから仕方がない。


無音の中で手を挙げて「すみません」と言うと

部屋の隅にあるスピーカーから「どうしましたか?」と聞かれる。

用件を伝えると


鉄の扉の小窓が開きもう一度

「どうしましたか?」と聞かれる。

そして用件を伝えると

鍵を開けて中に入ってくる。


余計な会話はない。


「気分はどうですか?」とだけ必ず聞かれた。


その度に少し苛立ちながら

「死にたいです。」と答えた。


これがおそらく自殺を試みた日の夕方だった。

板が貼られた窓の隙間から入る夕日が、真っ白な部屋壁をオレンジ色に染めていた。それは淡く決して濃くはない鮮やかな染まり方だった。

私は首についた紐の跡を撫でながら、横になった。


なんでこんな人間なのだろうか…

考えれば考えるほどに辛くなった。

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