第5話 親になるほど難しいことはない、というけれど

 精神を病んで、もう何年になるだろう。

 元気な時、動ける時は極端に少ないので、20代で、役者になることはあきらめた。


 わたしが若かった頃。

 18才から35才まで、ずっと地獄だった。


 朝起きて、全くと言っていいほど、身体が動かない日は、よくあった。


 東京に住んでいた頃。


 公募の、無料のエキストラを、何度、電話連絡で断ったか、わからない。


 時計の針を戻す。


 高校2年生の春。


 親に頼んだ、ダンスのワークショップ、応募の書類を、「母」は、忘れた。


 正確には、「母」ではない。母の姉である。


 でも、対外的に、素晴らしい「娘」「家族」は、よそおう必要があった。「母」が、店を経営していたからだ。


 苦々しく思ったのは、「母」が、常に、わたしの実母であるようよそおったことだ。


 だから、わたしは。

 完璧でなければならなかった。

 ボロが出ないように、美しく、清く、正しく。


 どれも「母」の期待を裏切り続けた。


「母」は、「わたし」が思い通りにならないと、暴れる、泣く、脅す。


 ひどい時には、お気に入りのパジャマですら、捨てられたことがある。


「君に愛されて痛かった」で、主人公の母が、主人公の洋服を捨てる場面がある。


 正直、どうして、出身も階級も違うし、なおかつ、わたしは共学で、向こうは女子校、しかも偏差値はそれほど高くないのに、どうして、同じ経験をしているのだろう。


 わたしは、痛みを覚える。


 正直、わたしは、水戸一高にはふさわしくなかった。

 向いてなかった、とすら思う。


 小学校、中学校からツケ狙うファンがいたので、そのファンは男性であり、いつか殺されるんじゃないか、と、おびえたことはある。


 誰も、助けてくれなかった。対処してくれなかった。手を伸ばしたのは、同じ年頃の男性で、やはり、無力だったのだ。


 だから。


 好きな男の子と一緒の高校に入れる、と思って入った私が悪いのだから、と、責めたのは確かだ。


 容赦なかった。


 彼ら、性別は関係なく、一様に、繰り返し、繰り返し、同じ話をする。


「これが水戸一高か?」と、思った。


「母」が語る水戸一高には、いじめはなかったはずだが。


 小学校、中学校、幼稚園、ありとあらゆる場所でいじめのターゲットになったが、正直、高校時代の3年間は、地獄で正直、思い出したくもない。


 3年間。もう、彼らの中で、正しい歴史は固定されてしまっている。


 映画刀剣乱舞での、骨喰藤四郎(ほねばみとうしろう)のせりふを、わたしはこう聞いた。


「歴史とは、守らなければならないものだろうか」


 答えは、簡単。


「歴史とは、思い込みと、誰かのこうであって欲しいと言う妄想と、ただの記号に過ぎない。


 私の歴史だって、わたし自身が信じる歴史と、彼らが勝手に作り上げた歴史とでは、ことなる。


 彼らの中では、中学2年生から高校2年生まで、同じ男と!

 しかも、ファンの男と!


 付き合っていた、って言うのが正しい歴史なんだよ!!


 勝手に作り上げて、人物像を勝手に造形して、好き勝手にもてあそんで、

 その話で、何年盛り上がってんのかな。


 マジで、ほんと、思い出すもん。


 犯罪の被害者遺族ってさ。


 犯罪が起きた日のことを繰り返し思い出すんだってさ。


 あれは、レイプ、強姦、望まない性的被害だよ。


 それも、クラス全体だけでなく、男女問わずまわされた、ってこと!!


 死ぬまでこの記憶にしがみつくのは、もうやめた。

 

 妄想の海で、抗生物質打って



 って思うよ。


 どーせあいつら、頭が悪いし、

 デマに踊らされたんだろーな。


 ただ。


 コロナワクチンは、薬害だと思うけど。


 優しい後輩も、薬害であると、害があると知らないまま打ち、続々と、体調不良者が出ていて。


 自分自身の責任を、感じずにはいられない。


 芸能界の先輩として、できることがあったんじゃないか。


 この罪は、一生消えないと思うので、後からくる人のために、説明責任があるように思う。


 未来の君たちへ。


 これから、芸能界に入ってくる君達へ。


 わたしは、自分の身かわいさに、コロナワクチンの薬害を知りながら、打たないで、と宣伝することもせず、ただただ、黙って見ていました。


 だから。


 責任の一部は、ぼくにある。


 後輩がワクチンの有効性を語ったことも。


 後輩がワクチンを打った結果、宣伝した結果、ワクチンを打ち、体調不良になった人が死んだことも。


 先輩だから。


 後輩の責任を、負う責任があるんです。


 ノーブレス、オブリッジュ。


 選ばれしものは、責任を負う。


 でも、それは、死ぬことではない。


 腹を切ることでもない。


 一生をつぐないについやすと言うことだ。


 責任、取ります。


 わたしはこう聞きました。


 後輩の発言は絶対的に正しい。


 でも。


 科学的根拠のないこと、言うなよ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る