第22話 再戦

「凄いわね……! ワープなんて初めて経験したよ!」


 驚いて声をあげる彼女にすぐに人差し指を唇に当てて「シーッ!」と宥める。アリスも可愛らしく自分の口を両手で閉じて目を大きく見開いた。


「ご、ごめんね。今後気を付けるよ」


「う、うん……」


「じゃあ、私は前衛を務めるね?」


「分かった。僕も初めてだから変なことしたらごめんね」


「それは知っているから、ゆっくりやるわ」


 まずは全力で〖探知〗を使う。五層の洞窟道が見れる。


「どう?」


「まだ範囲外かも」


「それなら練習しながら探しましょう。まだパーティー戦はやったことがないからね」


「分かった」


 アリスに言われた通り、道を歩きながら魔物を探す。水色のアクアスケルトンが二体見つかった。


 腰から伸びた長い剣の柄を握り走り始めた。それを目で追いながら〖アースランス〗を展開させて撃つタイミングを見計らう。


 彼女が一瞬右側に逸れて射線が通ったのを確認してすぐに〖アースランス〗を撃つ。超高層で飛んでいく土の塊が彼女の横を通り過ぎて左手のアクアスケルトンに直撃して体勢を崩した。


 再度〖アースランス〗を展開させてアリスの動きを観察する。そのまま右手にいくのか、はたまた違う行動をするのか。


 今度は左側に逸れて右手のスケルトンまでの射線が見えたので、展開した〖アースランス〗を撃ち、すぐに距離を詰める。あまりにも遠すぎて即座に対応できなくなるのを避けたい。


 左側に倒れたアクアスケルトンに剣を抜いたアリスの剣戟が叩き込まれる。


 目にも止まらぬ速さの剣戟はたった一瞬で何度も斬り刻んでアクアスケルトンがボロボロになっていった。続いて右側のスケルトンを瞬時に斬りつけて一瞬で倒した。


「魔物の体勢を崩してくれると凄く助かる。それに今の魔法ってアースランスなの?」


「そうだよ?」


「…………私が知っているアースランスって弾速もこんなに早くないし、大きくないし、威力もここまでないはずなんだけどなぁ」


「そ、そう?」


「一人で戦えるってことだから強いのは知っていたけど、普通の魔法使いとは違うみたいだね」


 普通の魔法使いがどういう感じなのかが分からない。そもそも僕が戦えるのはルーンのおかげだ。通常の覚え方ではないからな。


「それはひとまず置いとくとして、今は群れを探しましょう」


「そうだね」


 アリスと顔を合わせて首を縦に頷いてまた洞窟道を走り進める。〖探知〗の広範囲にいくつかの赤い点は確認できるが、群れはまだ見つからない。


 どんどん魔物を倒しながら進んで行くと〖探知〗の範囲内に無数の赤い点が見つかった。


「見つかった! 暫く先だけど、こっちの道!」


「分かった! 急ぐわよ」


 アリスを先頭に道を走って行く。〖探知〗では人の気配は分からないので、魔物しか見えない。もしかしたら誰か襲われているかも知れないから急いだが、聞き耳で聞こえる音には戦っている音は聞こえてこない。


 くねくねした道を進むと視界の先に無数の魔物が見えた。


 右手に抜いた剣を持ち真横に伸ばす。


 今まで見たような剣とは形状が違う不思議な剣で、刀身の片面に綺麗な刃部分が続いている。黒色の刀身の色と紫色の髪の揺れが相まって神秘的な風景だが、それに感銘している場合ではない。


「先にスキルで殲滅するよ! 漏れた分はお願い!」


「了解!」


「――――スキル〖剣舞〗発動!」


 彼女の体にキラキラした光が周囲に広がると、赤いオーラのようなものが体に纏われる。


 次の瞬間、彼女は普通の動きとは違う不思議な踊り・・を始める。ダンジョンの岩でできた道はゴツゴツとしているのにも関わらず、まるで水面を歩くかのように静かで綺麗なステップを踏みながら円を描き始める。


 次々彼女に目掛けて飛び掛かる魔物を躱しながら斬りつける。


 無数の魔物に囲まれて危険なはずなのに、彼女の踊る姿には目を奪われてしまいそうだ。少し切なそうな表情は戦場に咲く一輪の花のように咲き続ける。


 アリスのステータス画面で見かけた〖剣舞〗というスキル。聞いていた通り、無数の魔物を相手するには絶好のスキルのようだ。ただし、弱点というならその場から離れられないこと。そして、終わった後に倒しきれない場合、確実に囲まれてしまうところだ。


 僕も急いでアースランスとフレイムバレットを展開させて踊っている彼女から遠い場所にいる魔物を魔法で撃ち抜く。


 道の奥に敷き詰められている無数の魔物が終わりが見えないくらいずっと溢れてくる。それでも僕達は次々倒していき、踊り終わった彼女がまた多くのスキルを使ってどんどん倒していき、どれくらい戦ったか分からないくらい時間が経った頃、こちらに向かって逃げてきた彼女は何も言わず、僕の胸に飛び込んできた。


「〖ワープ〗!」


 そして視界が一転した。


「ちゃんと逃げてこれたよ」


 僕の胸の中からひょっこりと顔をあげたアリスが満面の笑みを浮かべた。


「ありがとう。これならあの群れが大きな被害を出す前に倒しきれるかも知れないわ。まずは休みましょうか」


「うん」


 それから僕達は休んで五層に飛んで魔物を減らしてを何度も繰り返した。


 彼女が提案してくれたのは、僕の力を使って五層で溢れる魔物群れを倒そうと提案してくれた。理由としては、あの群れを放置しておくと、多くの冒険者が被害に遭うこと。あのまま冒険者ギルドに向かってもいいのだけれど、それなりに時間がかかるし、色々説明しなければならず、アリスや僕の立場でそれは安全とは言えない。


 それならば、いっそのこと僕達で全部倒してしまおうということになった。


 あれだけの魔物が溢れているのなら、全てを経験値に変えたら一気にレベルアップできること。それだけでなく素材も大量に獲得できると踏んだからだ。


 それまでに他のパーティーに倒されてしまうかも知れないけど、それはそれでいい。でもいまはいち早くあの群れを倒しきることだけを目指した。




 それから八時間休憩と狩りを繰り返して、その間に何度か冒険者の亡骸のようなものを確認したり、ワープを使い前で戦ったり後ろで戦ったりと、素材を拾ったりと忙しい日々を送った。


 そして、五日後、十回目の戦いが終わり、ようやく僕達の戦いは幕を下ろした。




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 名 前:アレン・ティグレンス

 才 能:make progressLv.4

 レベル:70


 状 態:〖ブレッシングLv.7〗


【能力値】

 体 力HP:D  魔 素MP:C-

 筋 力:E+  耐 久:B

 速 度:D+  器 用:E+

 魔 力:A   知 力:B+

 耐 性:D-  運  :B+


【ルーン】

・フレイムバレットのルーンLv.9

・アースランスのルーンLv.7

・ブレッシングのルーンLv.7

★小経験値獲得のルーンLv.7

★回避のルーンLv.7

★探知のルーンLv.7

★聞き耳のルーンLv.6

★忍び足のルーンLv.6

★瞑想のルーンLv.6


【魔法】

〖フレイムバレット〗〖アースバレット〗

〖ワープ〗〖ブレッシング〗


【スキル】

〖探知〗〖聞き耳〗〖忍び足〗


【マスタリー】

〖小経験値獲得〗〖回避〗〖瞑想〗


【ルーン倉庫】

・ワープのルーンLv.9

・投擲のルーンLv.1

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