彼女にとってそれは正しく拳銃だった

常に〝拳銃〟を携えながら震える主人公の心と、理解者の顔をした醜い大人の顔が、淡々とした語り口の中にリアルすぎるほどリアルに描かれていました。
特に私は牧子さんの、支配下に置くべき相手(だと彼女が思っているだろう相手)に対する猫撫で声での語り口がとても気持ち悪くて、作者さんうますぎる……と思いました。あの淡々とした一人称の文章において、登場人物の醜さをあんなに鮮やかに描けるものなんだ、と。

観覧車という逃げ場のない場所に引きずり込まれて、なにを話しても叫んでも伝わらない。言葉は銃口にならないという無力感を、読みながら自分のことのように感じていました。
そして『私はあなたの味方だよ』と薄っぺらな言葉を囁く相手へ、どんな言葉よりも言動よりも銃口としてふさわしいだろう〝それ〟を突きつける主人公。簡単なことだった、と振り返る彼女の心の内に、ぜひもっとたくさんの方に触れてほしいなと思います。

その他のおすすめレビュー