ジャガーイーモと、しょくざいのたびじ

京賀斎 愁眉

第1話 ジャガーイーモと、キャロップのであい

(Encounter of JuggerPotoooooooo and Carlop)



 ジャガーイーモは、ジャガイモの体を持った、とても大きく、とても強いジャガイモです。体が壊れてもすぐに再生し、一欠片でも肉体の一部が残っていれば、再生できます

 そんな彼は、村の人たちに頼りにされていると同時に、畏れられてもいるのでした。


 いつものようにジャガーイーモが村の手伝いをしている時。きゃあっ、と悲鳴が聞こえました。


 それを聞きつけたジャガーイーモが急いで向かうと、何やら村長の家が騒がしいようです。

 中に入ると、村長が血を流して倒れていました。


 村の人々が村長を殺したのです。ジャガーイーモは肉体が丈夫なので気が付かなかったのですが、村長は村人たちを酷使し、高い税を強要し、自分は私腹を肥やしていたのでした。


「ははっ、ざまあないぜ」


 刎ねた村長の首を踏みつけ、罵詈雑言を吐く悪党たち。その隣では、村長の孫がわんわんと鳴いています。


 この光景を見たジャガーイーモは、怒りに打ち震え暴れ出しました。悪党たちを素手でちぎっては投げひねり潰したのです。


「ぎゃおおん、ぐららあがあ」


 悪党たちは皆死にました。彼がここまで怒ったのは初めての事です。


 無理もありません。何故なら村長は彼に大変良くしてくれ、そのお孫さんとはよく遊んでいたほど、大変仲が良かったからです。


 そんな人たちの涙の為なら、彼はどんな悪いことも出来たのです。


「だ、だいじょうぶかい」


 ジャガーイーモは落ち着くと、村長の孫に優しく手を伸ばしました。


「ば、ばけもの」


 村長の孫はそう彼に言い放ち、身を強張らせ後ずさりしました。


「いや、やら、ちかよらないで、しんじでだのに、なんで」


 ジャガーイーモの心は、すっかり冷え切ってしまいました。



 ジャガーイーモはすぐさま村を立ち去りました。逃げるように、何日も何日も、走り続けました。自分の愚かさから逃げるように。


 自分のしたことが罪なのかそうでないのか考えながら、何日も何日も。でも結局、答えなど出ませんでした。


 やがて考えることが苦痛となって、考えることからすらも逃げるようになりました。思考を停止し、忘れるように努めました。



 ただとぼとぼと歩いていた、ある日のことです。


 一匹の瀕死の馬と死体が、道に横たわっています。


 恐らく、乗っていた人間は殺され、足を怪我した馬はただそこで死を待つのみ、といった状況でした。


「おまえも、ひとりかい」


 ジャガーイーモは、彼の隣に寄り添いました。


「さあ、食べなさい。私の体を食べた者は、生まれ変わることが出来るんだ」


 馬はジャガーイーモの腕を食べると、みるみるうちに体が変化していきました。


 その馬の細胞は、人参に変わりました。そのついでに、怪我も治りました。


 ヒヒィーンと、馬は元気よく嘶き、嬉しそうにすりすりと頬をジャガーイーモに擦りつけました。


「はは、どうどう。そうだな、いっしょにくるか」


 彼は再び元気よく啼きました。人の言葉を理解できるようになっていたのです。


「なら、名前をつけてやらなくちゃならんな。そうだな、君の名前は、キャロップにしよう。どうだ、気に入ったか」


 彼は三度嘶き、ジャガーイーモに身を寄せました。


「ははっ、かわいいやつだ。それじゃあ、二人で旅に出よう。今までは、ただ一人で逃げているだけだった。でもお前と一緒なら、今から歩く道は、旅になる」


 キャロップの背に乗り、ジャガーイーモは旅をすることになりましたとさ。


 さぁ、どんなことが、彼に待ち受けているのでしょうか。楽しみですね。




つづく


―――――――――――


設定飼糧


日本語版:ジャガーイーモ

英語版:ジャガーポテト JuggerPotoooooooo

モチーフ:ジャガイモ+ジャガーノート(juggernaut「巨大な力」という意味)

Potooooooooの綴りは、oが8つで「エイトオー」、前の「ポットpot」と合わせてポテイトーと読む。


ジャガイモの体を持った、とても大きく、とても強いジャガイモ。

体が壊れてもすぐに再生し、一欠片でも肉体の一部が残っていれば、再生できる。


たびたび野良の動物たちに体をせがまれては、優しく分け与える。



キャロップ Carlop

モチーフ:馬のギャロップgallop+ニンジンcarrot・キュロットculotte(半ズボン)を履いている。


キュロットを履いた、人参の体を持つ、ギャロップの得意な、とても速い馬。

人間の言葉を理解できる知性を持つ。

我慢できずにたびたび自分の体をかじってしまっては、後悔する。




――誤字脱字等あれば気兼ねなくお知らせください。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る