第13話

 どんな人の手も、足も、無くても、美しいと伝えたい。健康だと言ったら怒るだろうか。日々考え抜きながら。

 息子に告げる。愛してる。

名前も、学校も、何もかも変わらない。ただ、お前は、おばあちゃんちで勉強したり、ご飯を食べたり、泊まる日が多くなる。


息子が泣く。泣いて。泣いて。いちばんかぞくがだいすきなぼくが、どうして、はなれなくちゃならないの、と泣いた。


自分も泣いて言う。怖い夢を、見ないためだよ。


自分はおかしくなってしまったのかもしれない。しかし、息子はハッと顔を上げ。


もう夢の中で、怖い映画を見なくてもいい?と聞いてきた。


わからない。わからないけれど。もう一度、今夜見たらどうする?


それだけで息子は新しいべそをかき、恐怖と混ぜこぜになった涙を流す。


これが正しいのかわからない。それでも真正面から息子を抱きしめる。


必ず連れ戻す。わからないけれど、このおうちからお前がすぽんと抜けるけど、必ず連れ戻す。


強く抱きしめて、これは、呪いを解く、手段なのかもしれないと思案する。


あの夢を二度と見ないで済むのなら、ぼくもなんだってやるよ。


息子はそう宣言した。

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