第5話 我が主は天才の様ですよ(メア視点)
私は現在非常に困惑しております。
そしてその困惑の原因は、目の前で苦しそうに眠っているジン様です。
申し遅れました。
私の名前はメアと言います。
人間嫌いで有名なエルフ族ですが、私は人間であるジン様のメイドをしています。
理由については内緒ですよ。
―――っとそんな事は今どうでもいいのです。
ジン様が覚醒なさりました。
もうあの姿を見ていると覚醒としか言えないのです。
事の発端は昨日でした。
昨日は久しぶりに何の特訓も入れていない日で、体の調子を整えるために私が昼寝を強要していました。
そうしないとまだ5歳なのにもかかわらず、毎日朝から晩まで剣を振っているのですから。
ジン様には残念ながら全くと言っていいほど剣の才能がございませんでした。
本当にディヴァインソード家の血を継いでいるのかと疑ってしまう程に。
あまりの才能の無さで一時期ジン様の母上――公爵夫人の不倫が疑われましたが、結果は紛うことなき正当な血筋でした。
しかし悪い事など全くしてもいないのに疑われた公爵夫人はたまったものではありません。
疑われたのは剣の才能がないジン様のせいだと、まだ4歳にもならないジン様に暴言を吐き、あまつさえ暴行を働こうといたしました。
流石にその場で私が止めましたが。
私は特別な理由でこの家に居るので、権限としては当主様と同等なのです。
なので私が止めれば公爵夫人に何かすることなど出来ません。
しかしこの件を期に、ジン様の味方は私1人となってしまいました。
この時からジン様は変わってしまいました。
常に私以外の者に意地悪になり、執事への罵倒も当たり前となっていました。
そして私に対しても罵倒や意地悪などはされませんでしたが、明らかに敵意が混じっていました。
しかし昨日。
ジン様がいきなりお部屋で大声で叫ばれました。
私は何事かと思い急いでお部屋に向かいますと、そこには自分の顔や体を頻りに触る奇妙な行動をしたジン様がいました。
正直気持ち悪かったですが、それよりも心配が勝りました。
しかもその後のティータイムには、御自分の年齢や評判、この世界の常識などを聞かれるではありませんか。
その時のジン様の瞳には、私への敵意は一切なく、何処か好意的な感情が宿っていたように思えます。
しかしジン様の変化はそれだけではありませんでした。
常に剣のことばかりを考えていたジン様が、なんと、剣を諦めて魔法を練習してみると言ったのです。
その時はポーカーフェイスに自信のあった私でさえ表情を崩してしまったほどです。
そしてそれと同時にこの言葉が私の現在の困惑の原因を生む要因となりました。
始めは魔力も感じることは出来ないだろうと思い、中庭ですることにしました。
私はこれでもある程度の魔法が使えるので教えようと思ったのですが、ジン様は既に魔力についての知識を持っていたのです。
今まで魔法について勉強しておられる姿など一度も見たことがないというのに。
そこからは驚きの連続です。
いきなり魔力を流して欲しいと言われたので少し流してみた所、私の魔力に一瞬で気付き、更には自身の魔力も感じれるようになってしまいました。
大体才能のある子であっても、自身の魔力を感じ取るのに約1週間は掛かります。
更に自身の魔力をある程度操作するのに3週間、魔力を魔法として放出するのに1ヶ月掛かると言われていますが、ジン様はその全てを僅か数分でやり遂げてしまいました。
しかも魔法の威力も初めてにも関わらず、熟練の魔法師と比べても遜色無い。
更に驚いたのはその魔力総量です。
初めてと言うこともあり、魔力の込める量を間違えたのか魔力弾に必要以上の魔力が込められていました。
ざっと通常の10倍でしょうか?
しかしそれ程の魔力を消費したにも関わらず殆ど魔力が減っていませんでした。
普通の子供なら魔力切れを何回も起こす程の魔力を使ったにも関わらず、です。
しかしジン様はその後も出鱈目な魔力量でどんどん魔法を発動させていきました。
此処で私は痛感致しました。
どうやらジン様は昔、魔法に長けたエルフ族の中でも神童と呼ばれた私でさえ理解の及ばない才能を持って居られるようです。
将来は全魔法師が足元にも及ばない程に強くなられるでしょう。
ですが、ジン様はまだ年端も行かない子供。
魔力暴走や暗殺など、もしものことがあるかもしれません。
なのでこれからも変わらず私が守っていこうと思います。
誰よりもジン様の近くにいる唯一のメイドとして。
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今日はもう1話投稿します。
投稿時間は18時5分です。
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