第8話

 「席は…道永の隣だ」

「…え、俺?」

驚く静留を余所に交換留学生…井川瑞樹はすたすたと静留の横の席へ向かって歩き、座った。

「…まさか、静留さんが此処に通われていただなんて」

「俺もまさかお前が来るなんてな」

井川瑞樹は静留達がマオ、ルカの次に保護したfamiliarの隊員。

今は幹部候補生である。

静留は思った。

(絶対面倒くさい事が起きるな…)


 「井川くん、何処から来たの?」

清雅せいが学院からだよ」

「え!清雅学院って名門校だよね?」

「そうだね」

にこにこと瑞樹は質問に答える。

静留は違和感を感じた。

(こいつ、familiarに居る時と雰囲気が違うな…)

familiarの時では常に喧嘩っ早く、隊員達や子供達以外には冷たい態度を取る。

だが、今の瑞樹は?

万人受けする様な態度で過ごし、きっと苛々が溜まっているだろう。

「静留、誰なの、この女子」

「…交換留学生の今川瑞樹だ、玲香」

いつ来たのか玲香がいた。

「僕は男ですよ、玲香さん」

「な…!何で私の名前を、」

「え?先程、静留さんが名を呼んでいたではないですか」

くすくすと笑う瑞樹。

「あんた、静留の何なの?」

「……静留さんの……?」

「やめろよ、玲香」

バチバチと火花が瑞樹、玲香の間で散る。

「僕は静留さんの…仲間です」

「仲間?何の仲間なのよ」

「其れは…言えませんね」

「は?」

「そう契約してますもの、静留さんと」

ねぇ、静留さん?と此方に問う瑞樹。

静留は仕方無く頷いた。

「…もう良い!!」

ダッ、と玲香は教室を飛び出した。

「玲香?!」

「…何故そうあの人を気に掛けるのです?静留さん、確か玲香さんが苦手では?」

「幼馴染だからな」

きっぱり言い切った静留に、瑞樹は驚いた顔をして静留を見つめた。

「……僕じゃ駄目なの……?」

瑞樹は消え入りそうな声で呟いた。

静留は、教室から玲香を追って出ていった。

残されたのは、瑞樹だけ。

瑞樹は…今にも泣きそうな顔をしていた。

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