冥契/夜桜くらは への簡単な感想

 応募作品について、主催者フィンディルから簡単な感想を置いています。全ての作品に必ず感想を書くというわけではありませんのでご注意ください。

 指摘については基本的に「作者の宣言方角と、フィンディルの解釈方角の違い」を軸に書くつもりです。

 そんなに深い内容ではないので、軽い気持ちで受け止めてくださればと思います。


 またネタバレへの配慮はしていませんのでご了承ください。




冥契/夜桜くらは

https://kakuyomu.jp/works/16817330653336580412


フィンディルの解釈では、本作の方角は真北です。


本作は一般的なガールミーツボーイであると思います。ガールミーツボーイは基本的に真北です。

ガールミーツボーイでは出会う相手が「変わった人」であることは少なくありません。むしろ多数派ですらあると思います。雰囲気、性格、関係性、出身、種族、能力、正体、これらの何かしらで作品映えする設定が与えられがちです。そして本作の電球人間設定もそれに並ぶものであると考えます。

異形頭には確かに夜桜さんの嗜好は感じられるのですが、嗜好およびその設定だけで作品の方角が変わることはあまりないと思います。

橙花が婚活パーティに失敗したところから始まるのも、“良い人と出会う”という「目的と達成」が整備されており、非常に真北らしい作話になっていると判断します。

仮に電球人間(異形頭)という題材で北西や北北西を目指されるならば、「日常の非日常」ではなく「非日常の日常」を意識されてみるといいんじゃないかなと思います。


真北作品として見た場合、「〇〇人間との恋」という描き方になっていて他でもない電球人間である必要性をあまり感じないのが気になりました。

頼人の頭を別の物にすげ替えてみても話への影響が少ないように感じませんでしょうか。サッカーボール人間でもサイコロ人間でも、案外そのまま本物語は成立しちゃうのではと。

電球の光り方で頼人の感情が表されていますが、これは人間の感情表現を電球人間に変換しただけで、電球人間ならではの作品表現としては弱いと判断します。嬉しくてサッカーボールが跳ねる、嬉しくてサイコロが全部1になる、これで概ね代替可能なのです。


電球人間ならではの何か、その一例を挙げてみますね。

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 私が読み上げるのを確認した後で、電球男は深々と頭を下げた。オレンジ色の光が私を照らし、その眩しさに思わず目を細める。

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フィンディルはこの叙述に違和感を抱きました。お辞儀をすれば相手にとっては眩しくなってしまう、そんなことはこれまで電球頭として生きてきた(はずの)頼人は百も承知のはずだからです。車のすれ違い時にハイビームにしないマナーと同じように、頼人はお辞儀をしないのが自身のマナーであると考えるのが自然だとフィンディルは思います。

今試してもらえるとわかるのですが、電灯を見つめ続けるのは眩しくて辛いんですよね。つまり橙花は頼人を見たくても見続けるのが辛いはずです。そして頼人にはそれがわかっているので、頑張って見続けられるのが居た堪れないはずです。

また頼人と一緒にいるあいだ、その場は物理的に明るくなっています。明るすぎてちょっと、と感じることもあるでしょう。また頼人の精神状態により光量などが変わるということは、明るさも安定しないでしょう。

こういった電球人間ならではの難しさがあるはずです。それを頼人はどう考え、橙花はどう考えるのか。

そういう一例を考えることができます。

本作は設定上は光っているのですが、情景としては光っているように感じませんでした。


視覚・聴覚がどうとかお茶飲めるのかとかツッコミ的なことは考えなくていいと思います。

ただ「光るってどういうことなんだろう」から「他でもない電球人間だから表現できる面白み・魅力」を探してみると真北作品としてより映えるだろうと期待します。

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