侍ヒーロー星影

山ピー

侍ヒーロー

第1話「侍、復活」

時は江戸時代……。

当時の人々は夜な夜な現れては悪さを働いていた妖怪に悩まされていた……。

そんな人々を救う為、妖怪退治を任された一人の侍がいた。

その侍の名は巽 小十郎(たつみ こじゅうろう)又の名を星影。


星影は数多の妖怪達を封印し、最後に妖怪の総大将鬼童丸を封印し、自らを封印の人柱として共に永遠の眠りに就いた。


そして現代−


テレビ番組で「大スクープ!妖怪は実在した!!妖怪を封印した伝説の侍の謎に迫れ!!」と題した妖怪伝説を取り上げた番組のロケが行われた。

テレビクルーが妖怪が封印されていると伝説の残る祠が祀られてある洞窟に取材に来た。

リポーターとしてロケに参加しているのは今、人気絶頂の若手お笑いコンビ"モリハヤシ"の森 幸男(もり ゆきお)と林 則孝(はやし のりたか)だ。

そして、解説と2人のサポート役として妖怪研究家の武石 秀政(たけいし ひでまさ)も参加していた。


順調にロケは進みモリハヤシはとうとう妖怪が封印されていると言われる祠がある洞窟の前までやって来た。

「それでは、リハ行きまーす」

番組のADが合図をする。

カメラを回してリハーサルがスタート。

「え〜……只今我々は江戸時代に妖怪退治を行っていたと言われる伝説の侍、巽 小十郎が妖怪を封印して眠っていると言われる祠の前までやって参りました」

「武石先生、妖怪は本当に居るんですかね?」

「ええ、もちろん妖怪は存在します。ここに封印されているのはですね、江戸時代に人々を苦しめた悪い妖怪達と言われてましてね……」


テンポ良く話を進める3人……。

「はいオッケーでーす!では10分後に本番を始めますので宜しくお願いしまーす」

ADが仕切りリハーサルが終わる。


「ありがとうございましたー」

モリハヤシの2人はスタッフ達に挨拶をして休憩に入る。


休憩中、モリハヤシの2人はタバコを吸いながら話をする。

「なぁ、森お前本当に妖怪なんて居ると思うか?」

「んな訳ねぇだろ……こんな番組バカバカしくてやってらんねぇよ……」

「だよなぁ……あーあ……俺らはもっと大型のネタ番組とかに出たいのになぁ……」

そんな事をボヤキながらも本番が始まると番組に真剣に取り組む姿勢を見せるモリハヤシの2人……。


順調にロケが進み祠の前で武石が妖怪とそれを封印した小十郎について解説する。

解説が終わると一旦カメラを止めるスタッフ。

妖怪達が封印されて居ると言われる場所の上に小十郎が眠る棺が置かれている。

おもむろに森はその棺に手を触れる。

その時!

森はバランスを崩し棺にもたれ掛かってしまった。

「おっと!?うわっ、やべ!」

だが既に遅かった。

棺がズレた隙間から封印されて居た妖怪達の邪気が溢れ出した。

「うわっ!?な……何だ!?」

「これは……皆さん急いで避難して下さい!!」

武石は慌てた様子で叫びモリハヤシの2人やテレビクルーを避難させる。

「お前何したんだよ!!」

「ちょっとバランス崩しただけだって!?」

モリハヤシの2人も全速力で逃げる。

(ハッハッハッハッ……感謝するぞ……人間共……)

不気味な声が聞こえ棺の下から妖怪大将軍 鬼童丸が現れた。

「お礼にお前達から血祭りに上げてやる……」

「ギャァァァ!?」

悲鳴が響き渡り逃げ遅れたスタッフ達は鬼童丸に惨殺された。


「ハッハッハッハッ……さぁ久しぶりに蘇った……お前らも出て来い!」

棺の下から次々に妖怪達が現れた。

「この鬼童丸様の妖怪軍団復活だ!」

鬼童丸は仲間の妖怪達を引き連れどこかへ姿を消した。


そして残された棺の中からは……。

「ん?ここは?……拙者はどうして?」

中からはなんと江戸時代に妖怪を封印した巽 小十郎が現れた。


小十郎は彷徨いかつての江戸の町、東京の大都会にやって来た。

「な……なんじゃここはー!?」

突然現れた時代錯誤な格好をした小十郎に街の人々は驚く……。

だが……。

「何だ?すげぇな随分本格的なコスプレだな!なんのキャラだ?」

逆に現代人には何かのアニメのキャラのコスプレの様に思える様だ。

それよりも小十郎の方が大パニックだった。

「え……江戸の町はどうしてしまったのだ!?お千代……お千代はどこじゃ?」

小十郎は突然走り出す。


だが行く所行く所知らない景色で小十郎は余計パニックに陥る。

「な……なんなんじや……江戸の町は……何処に行ってしまったのじゃ?」

走り回った末辿り着いたのは……。


今、若者に人気のタピオカ専門店。

「分からん……ここは……一体どこなんじゃ……」


小十郎が立ち尽くして居るとタピオカ専門店から3人組の女子高生が出てきた。

「見てあの人、ヤバくね?」

「えーコスプレ!?超本格的じゃ〜ん」

「ねぇねぇ、写メ撮らして貰おうよ!SNSに上げたらバズるんじゃね?」

そう言うのは門倉 雪菜(かどくら ゆきな)(18歳)

「それな!!」

友達のまなぴょんとりりぴょんも賛成する。


3人はあっと言う間に小十郎を取り囲む。

「ねぇねぇねぇ、お兄さんちょっと写メ撮らしてくんない?」

「え?え?」

「ねーお願い!ウチらSNS映え狙ってんだ」

「な……なんじゃお主らは……?」

小十郎は更にパニックに……。

「顔は加工して分からない様にしておくからさ」

そう言って雪菜は小十郎の写真を撮った。

「うわっ!?何をする!?」

カメラのフラッシュに驚いた小十郎……。

「己……妖術の類か……貴様ら……妖怪の手先だな!!」

小十郎は腰に刺していた刀を抜いた。

抜いてしまった……この現代の日本で……。

「キャーッ!?」

雪菜達は騒ぎ逃げ出す。

雪菜達の騒ぎを聞き周りの人達は驚き警察に通報してしまう。

そりゃそうだ……。


だが、雪菜達を妖怪の手先だと思ってる小十郎は雪菜達を追い回す。

現代人にとってはこれは無差別殺傷事件やテロにも見えるだろう。

周りの人々は大パニックに陥り騒ぎ出す。

直ぐに警察が到着し小十郎を囲む。

雪菜達は警官に保護され警官達は小十郎に拳銃を向ける。

「君!その刀を捨てなさい!!」

「何?武士の魂である刀を捨てろと申すか?無礼な!」

怒った小十郎は刀を振り上げる。

「止めろー!!」

警官の1人が小十郎に向かって発砲。

だが小十郎の実力は本物で刀を振り下ろし弾丸を真っ二つに切断する。

「え……?ウソっ!?」

これに対し警察も本気を出した。

応援が駆け付け数で小十郎を取り押さえる。

「なっ!?おい!離せ!!離さぬか!?」

「大人しくしろ!15時54分公務執行妨害の現行犯で逮捕する!」

小十郎は警察に捕まった。


そのまま小十郎は警察署に連行される。

「君達、大丈夫かい?」

警官の1人が雪菜達に尋ねる。

「は……はい……」

「君達にも話を聞きたいから署に来て貰うよ」

雪菜達も警察署に連れて行かれた。


小十郎は警察署で早速取り調べを受ける。

だが、聴取を取る刑事は困惑していた。

それも当然だ。

生年月日は江戸の時代、住所も分からず分かったのは巽 小十郎と言う名前だけ。

刑事からして見ればふざけてるとしか思えず状況は更に悪くなった。


雪菜達も警察から事情を聞かれ人を勝手に取り囲んで写真を撮ろうとした事には厳しく注意された。


事情聴取が終わり雪菜達は母親達が迎えに来て家に帰された。

「あー怖かった……」

「うん……ウチらタピオカ買いに来ただけだったのにね……」

まなぴょんとりりぴょんはそんな事を言いながら帰っていた。

だが、雪菜は黙ったままだ。

そしてしばらくして口を開いた。

「ねぇ、二人共……ウチらにも原因はあるよ……私あのおじさんに謝って来る」

そう言って雪菜は警察署に戻って行った。


だが、その頃……妖怪達も動き出そうとしていた。

「よし……まずはあの憎き星影を消すぞ……」

そう言うのは鬼童丸。

「しかし……星影はもうこの世には……?」

と狐の妖怪九尾が言う。

「奴は人間……とうの昔に死んでいるはず……」

と酒呑童子が言うと……。

「いや……奴は生きていた……俺は封印されてる数百年間ずっと奴の力を感じていた……」

「じゃあ今も?」

そう尋ねるのは妖怪軍団の紅一点、雪女。

「ああ……そして、奴の力の源……星影丸の力もな……」

「では奴に妖怪を差し向けるって訳か?」

「ああ……星影丸さえ破壊すれば奴もただの人間……殺すのは簡単だ……」


妖怪達も小十郎を狙って動き出す。


続く……。

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