第17話 柔らかくて大きい……癒される!



 セレナ……何を驚いているんだ。これだ、これが自然な流れだよ! 俺は、今この街に来て初めて癒されている!。


 思えば初めて会った時もアーシャは笑顔で傷ついた俺の心を癒してくれた……。


「ず、ずるい……私がするはずだったのに……(ボソッ)」


 レーウィン……俺はここで聴こえないなんて野暮なことを言う男ではないぞ!。


 さぁ! 来いレーウィン!。俺はあらんばかりに両手を広げていつでも受け入れる準備はできているとアピールをする。


「!ノエル……でも、いいのか?」


 俺はコクリと笑顔と共に無言で首を縦に振ると、レーウィンはパッと顔を上げゆっくりとこちらに近づいてくる。


 そして俺の前に立つと。


「来るのが遅いんだよ!!」


「えっ? ブバッ!!」


 私がするはずだったのにって、セレナに言ってたのかよ……!!。


 コイツらは人を労わるって言葉を知らないのか!? ま、まあいい……そろそろ視線も痛いし。


「アーシャ、この通りなんの怪我もないからさ……心配かけちゃったみたいだな」


「本当に心配したんですからね! でも怪我がないならよかったです」


 ああ、アーシャは本当にいい子だ……本気で勧誘してみようかな?。


「おーい! アーシャ? 今夜の宴の用意をするんだからイチャついてないで、早くこっちに来なさい!」


「ほらアーシャ? 俺もイチャついていたいけど仕事があるんでしょ? 仕事、頑張ってな!」


「か、からかわないでください!/// ……今夜ギルドで待ってますね!」


 アーシャは顔を真っ赤にし小動物の様に走り去ってしまった。


 あーあ、からかい過ぎたか……。


 今日の学んだことは、アーシャマジ天使! これだ!。


「おい、お前……あのアーシャとかいう受付嬢への対応と、私たちに対しての対応が随分と違うじゃないか?」


 コイツらとの付き合いは短いがこの後の流れは大体予想がつく。


 こういう時の対処法はただ一つだけ。


「フッ、なんだ? 妬いているのか? お前たちも……えーと…………そ、そこはかとなくいい感じだぞ♪」


「ゲボっ!!?」


 お、おかしい!? むかし会った女たらしのスケベジジイが困った時は褒めておけと言っていたのに……!。


 あのジジイ!! 適当なことを教えやがったな!!。


「なんていうか、お前は人をイラつかせる天才だな」


「宿屋に戻って私たちのいいところをたっぷり教えてやろう」


 そのあと俺は宿屋に監禁され、夜まで恐怖のすり込みを受けたのだった。


 セレナ、カワイイデス。レーウィン、ヤサシイ。


 辺りはいつの間にか夜になっており、俺は何故かギルドの前に立っていた。


 宿屋に戻ってからの記憶がない? 寝てたんだっけ?。


「あ! 皆さん! もう始まってますよ!」


「って、ノエルさん? どーしたんですか? そんなに顔を青白くさせて……」


 ん? 青白い顔? そんなに顔色悪いか?。


「大丈夫だって! 宿屋に戻ってからの記憶がないだけだから!」


 まあ、ちょっとだけ疲れて眠くなっただけだろう!。


 記憶が飛んでいるのもきっとすぐに寝ちゃったからだ。


「そ、それって……」


「さあ! ノエル! あのオッサンに呼ばれてるんだろ? 早く行ってきたらどうだ?」


 確かに、あんまり待たせると悪いからな。


「アーシャまた後で話そう」


「あっ、は、はい……」


「お前ら、あんまりアーシャに絡むなよ!」


 注意をしておかないとアーシャにちょっかいをかけるかもしれないからな……。


 階段を登ってる時に、後ろからアーシャの悲鳴が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう……きっとそう。


 階段を登り部屋の前までくるとタイミングよくギルドマスターが出てきた。


「やあ! ノエル君! 呼び出してしまってすまないね……」


「本当に君には驚かされてばかりだ、まさか君が“聖剣に選ばれし者“だったとはね」


 実際は選ばれてないのにスキルの力で強引に引き抜いただけなんだけどな……。


「魔族二人を相手にした上にあの数の魔物を一瞬で焼き尽くすなんて……」


「下にいる彼らを見たまえ、君の話で持ちきりだろう?」


 確かに、そこいら中から黒ローブを着た謎の人物についての話題が飛び交っているな……。


 中には勇者だの、神だの、悪魔だの、という声もちらほら出ているし、少しやり過ぎたか?。


「私からも感謝するよ! この街を救ってくれてありがとう」


「誰も君だと分からなくても、私と君の仲間だけは分かっている」


「礼には及ばない、俺には俺の戦う理由があったってだけだ」


 俺は特に誰かに認めて欲しいとかは全くないから、変な慰めはいらないんだけど……。


 立場的に俺に報酬の一つも与えられないことに、後ろめたさを感じているんだろうか。


「すまない、本当は君に報酬の一つでも与えたいところなんだけどね」


「表向きは見張りをしていたということになっているから、私からは何も……」


 ギルドマスターは悔しそうに目を伏せ拳を握りしめている。


 それ相応の立場にいるギルドマスターは、この街に住んでいるんだから守るのは当然!。


 みたいな感じかと思っていたけどな……。


「悪いと思ってるんだったら、スタイルのいいお姉ちゃんでも紹介してくれ……」


「君のパーティーは美人揃いじゃないか」


「セレナ君は少々幼いが顔は整っているし、レーウィン君は言うまでもない」

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