第11話 お、お前ら!もしかして俺の貞操を……




「なら、これならどうだ? レーウィンは俺たちのパーティーで監視する、おかしな真似はさせないと約束しよう」


「うむ……いや、しかし……」


 それでもまだ渋るギルドマスターだったが、俺の一言で余裕の表情が変わる。


「そうか、じゃあ俺たちは冒険者をやめるしかないな……別に魔物退治は冒険者じゃなくてもできるし金には困っていない、国王に報告するならすればいい」


「目をつけられたのならさっきまでレーウィンを擬態させていたように、姿をくらませれば済む話だしな」


 俺が余裕たっぷりにそう言うと更に取り乱し、慌てて引き止めようとしてきた。


 ここまで来たら流れはこちらに傾く、あとは適当に流すだけだ。


「ま、待ってくれ!! Aランク冒険者がいなくなった穴はそう簡単には埋められない!!」


「貴方が抜ければギルドにとって……いや国にとって損失だ! どうかやめないでくれ! この件については、ここだけの秘密にする!」


 少し強引だったが結果としては上々か。


 まあ、聖剣を使うのは、少しズルかったかもしれないが。


「よし、じゃあレーウィンを俺たちのパーティーに入れて監視すると言うことで交渉成立だな! これからもよろしく頼む」


「君には負けたよ……これは報酬だ、問題を解決してくれてありがとう」


「一つ聞いていいかな? 君は何者なんだ? 魔族を仲間にしてしまうなんて……」


 帰ろうと思いレーウィンの擬態をかけ直しているとギルドマスターはそんな疑問を投げかけてきた。


「言っただろ? 俺は平和に暮らしたいだけのただの冒険者だよ」


「二人とも先に一階に行っててくれ、トラブルは起こすなよ?」


 セレナとレーウィンが部屋から出るよう促すと二人は出て行った。


「ああ、分かったお前も早く来いよ?」


 静かにドアが閉まると静まり返った部屋にいるのは俺とギルドマスターだけ。


「なんか聞きたいことがあるんだろ?」


「君は面倒事を嫌うのになぜレーウィン君を助けたんだい? 君にメリットはなかったはずだ」


「まぁ、レーウィンの前じゃ絶対に言わないがアイツはいい奴だよ……だから助けた……多少の面倒は覚悟の上でな」


 ギルドマスターは声こそ出さなかったが目を見開き驚いてる。


「最後にひとつ……人類の敵でもかい?」


「関係ないさ、人間でも悪い奴はいるし魔族でもいい奴はいる」


「フフッ……そうか、これからの活躍期待しているよ」


 何やらスッキリした顔のギルドマスターに背を向け俺は部屋を後にする。


 久々に真面目な話をしたから疲れたな……。


 ドアを閉めると夕飯時ということもあり、一階の酒場はかなり賑わっているようだ。


 その中で一際大きい声が聞こえる……聞き覚えのある声だ。


「果汁ジュースと串焼きをおかわり! あとこのステーキを持ってきてくれ!」


「な、なあ、セレナ……いいのか? 勝手に頼んで、ノエルに怒られるんじゃ……」


 まさかとは思うがアイツら自分の金も持ってないのに、好き勝手に注文してるんじゃないだろうな!?。


 そのあとは結局、全額を俺が払うことになった……ご満悦そうな顔のセレナと少しもじもじしているレーウィンを引き連れ宿屋に帰ってきたが、ここでトラブルが発生した。


「ごめんねぇ、今夜は満員でもう空いてる部屋がないんだけど、どうなさる?」


「そうか、しょーがないから私はノエルの部屋でいいぞ? 本当にしょうがないけど! 空いていないんだったら仕方がないもんな〜」


「わ、私だって! べ、別に相部屋だってかまわない……ぞ?」


 なぜか耳を少し赤らめたセレナと顔全体を真っ赤にしたレーウィンが後ろで言い合いを始めたがそんなことはどうでもいい!。


「お前ら! 俺に何をするつもりだ! 貞操だけは守って見せる!」


「「何もしねぇよ!! 勝手に守ってろ!!」」


 コイツら本人の前で押し付け合うなんていい度胸しているじゃないか……こうなったらこちらにも考えがある!。


「女将、コイツら2人とも俺の部屋で寝かせるからセレナの部屋は他の人に譲ってくれ」


「「えっ!!?」」


 ギャイギャイ騒ぐと思ったら思いのほか大人しく部屋まで着いてきた2人と同じベットで寝ている状況なんだが、まったく寝れない!


 俺は床で寝て2人にはベットで寝てもらう予定だったのだが何かを勘違いしたらしいコイツらは俺をベットに引き摺り込んだ。


「な、なあ、ノエル……一つ聞きたいことがあるんだが、いいか?」


 騒ぐかと思いきや割とすぐに寝てしまったセレナを間に挟みながらレーウィンが話しかけてきた。


「なんだ、お前も便所か? まったくいい歳なんだから1人で行けるようになれよ?」


「ち、違う! ……真面目な話だ」


「なんだよ」


 冗談を言っていると、急に真面目な顔になってレーウィンが話し始めた。


 

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