追放サイドストーリー3




 さて俺たちが次に向かうところは冒険者ギルドだな、まともな奴を見つけねぇと。


 また同じことの繰り返しだからな……。


 それにしても……。


「あの亭主の顔見たかよ! ひでぇツラだったな!」


「ええ! あそこまで無様晒すなんてわたくしだったら、恥ずかしくて生きていられませんわ! アッハッハ!」


「ところで勇者様お次はどこへ向かわれるのですか?」


「次は冒険者ギルドだ、強化魔法を使える奴を探すぞ! 少し権力をチラつかせれば無理矢理にでも引っ張ってこれるだろ」


「勇者様! 流石のご判断です! このパーティーには補助役が足りていませんからね」


「ウィル様! 今度は優秀で絶対に逆らわないような者を探した方がよろしいかと! よほどのバカじゃなければそんなことはないでしょうが……」


 確かにカーリアの言う通りだ、あのグズ野郎みたいに役に立たない上俺に意見してくるような奴はいらない。


 俺に従順で足さえ引っ張らなければいい……だが冒険者なんぞ野蛮で頭が足りないような連中が多いからな。


 「着いたな、ん? あそこにちょうど良さそうなのがいるじゃないか! おい! そこのお前!」




ーーーーーーーーーーーーーーーー




宮廷魔導士side



 ああ!  困ったことになってしまった……勇者様もとんだ無茶を言ってくれる。


 敵の居場所を察知する魔道具を作れなんて……言うは易しだ。


 身体能力を上げる魔道具ならともかく、そんなピンポイントな代物など作れるはずがないではないか。


「どうしたのだ? そんなに落ち着きがないなど貴様らしくもない」


 私が困り果てていると同じ宮廷魔導士であるノーマンが話しかけてくる、彼とは魔道学校時代からのライバルだった。


 お互いにライバル視しながらも時に協力する、今となってはいい同僚だ。


 ノーマンの専門は魔道具の生成、つまり今回の件を解決するには最適な人物。


「ノーマン……実に厄介なことになった、お前の力を貸して欲しいのだ」


「ほう……貴様がどうにもならない事で私に相談してくるということは魔道具関連か?」


 流石はノーマンだ話が早くて助かるな。


「実はな……」


 私は全てを話したがそれに対するノーマンの反応は非常に苦いものだった。


「敵を察知する魔道具か……なるほど、確かに厄介な注文だな……」


「なんとかならないか? 魔道具の専門家であるお前に頼るしかないのだ……」


「結論から言おう、私には無理だ」


 やはりか……ノーマンでもダメとなると他に誰を頼ればいいのだ……。


 これは国王様からの命令に答えられなければ、宮廷魔導士の位を剥奪される事だってあり得る。


 私の顔がどんどん青ざめていくのを哀れに思ったのか、ノーマンは言葉を続ける。


「そう辛気臭い顔をするな、私の言葉を聞いていなかったのか? 私には無理だと言ったのだ」


「お前にできないのなら誰にも出来まい……お前は魔道具の生成にかけてはこの国で一番だろう?」


 私が遠回しに褒めたことがよほど嬉しかったのか、ノーマンはご機嫌になり笑う。


「クハハ! 確かにそうだが面白い情報があってな?」


「なんでもリルドの街の付近にある森で魔女が住んでいるという噂がある、その者ならあるいは可能かもしれん」


 魔女か、あんな恐ろしい奴らと交渉するのは避けたいが私にはもう後がない……奴らに頼るしかないのか……。


「分かった、私には一つ魔女と交渉するための方法がある……野盗に私が作った“結界崩し”を渡して魔女と交渉させよう」


「アイツらか手綱は緩めるなよ」


「ああ、分かっている……明日にでも依頼するとしよう」


 その数日後に野党の1人から魔女の捕獲には成功したものの、何者かが魔女を奪還し頭目もやられたとの報告を受け私の顔は再び真っ青になる事となった。




ーーーーーーーーーーーーーーーー




「ああ!!? なに!? 俺が頼んだ魔道具が用意出来なかっただと? 一体どういうことだ! 理由を説明しろ!!」


「ハッ……!! 実は勇者様に頼まれた魔道具は前例のない特殊なものでして……」


「魔道具に関してなら右に並ぶ者のいない、同じ宮廷魔導士のノーマンにも頼んだのですが、生成は不可能だと……」


 くそっ!! 役立たずどもが!! 難しいことは言ってねぇ……単純に敵を感知する物を作れと言っただけだ。


 また不意打ちされたら今度こそヤバい! 負けることがあれば俺の名に傷がつく!!


「それで野盗を使ってリルドの近くにある森に住まう魔女と交渉したのですが、何者かによって妨害されたらしく……」


 俺の邪魔をした奴は誰だ!? それ以前に、この役立たず共に任せた俺がバカだった!。


「それで、その魔女は森のどこにいる! 俺が直々に見つけ出して魔道具を作らせてやる!!」


「勇者様……それなのですが魔女は結界の中に暮らしており、通常の手段ではそこに辿り着くのは不可能です!」


 結界……めんどくせぇ! カーリアは攻撃魔法しか使えねぇし、グランバルドは完全な前衛……新しく雇った荷物持ちなら可能かもしれないが……。


「野盗に渡した“結界崩し”は一つしかなく……回収に向かわせたのですが、まだ見つかっておりません」


「ふぅ……分かった、代わりにお前たちが作っている身体能力強化の魔道具をよこせ! 俺が直々に魔女の森へ向かう」


 俺がそう言うと名前も知らない宮廷魔導士が慌てて魔道具を取りに行った。


 次の行き先は決まったな。

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