第11話 ~Happy GW Night~ 3/5
「ねぇ。観光地って、こんなにみんな喧嘩するものなの?」
「いや……そんなことないよ。それにここって、縁結びの神様もいる所だし。だから、お礼参りで訪れるカップルも多いはずなんだけど」
泰史が余裕を持ったプランを立ててくれたお陰で、様々な観光地を巡りながらも、美七海はそれほど疲れを感じる事も無く、それぞれを満喫することができた。
だが、行く先々で、土産物店で遭遇したカップルの破局現場と似たような光景を目にしたのだ。
それも、1組や2組ではない。印象に残っているだけでも10組以上。
破局までは至らずとも、口喧嘩をしているカップルも、数多く見受けられた。
「やっぱり、お付き合いを始めてすぐに二人きりで泊りがけの旅行をするのは、危険ってことよね」
「いやいや、そんなことないよ、美七海ちゃん!っていうか、俺たちは別に【付き合い始めてすぐ】でもないけどね?!」
「まぁ、それはそうね。だから、喧嘩しないで済んでいるんじゃない?」
「え~……そうなのかなぁ?」
予定していた観光を全て終え、ホテルへと向かう送迎バスに揺られながら、泰史は納得の行かない顔を見せた。
しかし、現実に今日、美七海はこの地で何組ものカップルの破局を目にしている。
どのカップルも観光旅行に来ているカップルに見えた。
「なんか……嫌な予感がする」
「えっ?」
「あっ、いや……美七海ちゃんと俺の事じゃないよっ?!でも……」
そう言うと、泰史は美七海と繋いだ手にギュッと力を込めた。
「あら、随分と遅いお帰りね」
「やっくん、おっそーい!」
部屋のドアを開けた美七海と泰史は、一瞬その場で固まった。
直後に、泰史は今開けたばかりのドアをパタリと閉じる。
「泰史?」
「部屋、間違えたかなっ?!隣の部屋だったかなっ?!」
「いや……ここ、だけど?」
美七海が手にしているカギに書かれている部屋番号は、今、泰史と美七海が立っているドアに書かれた部屋番号と同じ数字。
「あ、そっか!じゃ、ホテルを間違えたんだ」
「そんな訳、ないでしょ?今、このカギでこのドア、開いたよね?」
「……マジかよぉ」
「お姉さんたちも来るって、知ってたの?」
「まさか本当に来るなんて……」
ガックリと肩を落とす泰史に苦笑を浮かべながら、美七海はドアを開ける。
「いいじゃないの。人数は多い方が楽しいんでしょ?旅行って」
「そんなの、目的にもよるよっ!」
「やっくんの目的って、なんだろうねぇ?」
開けたドアのすぐそばにいたのは、ニヤリと笑う亜美。泰史の双子の姉のうちの一人。
「美七海さん、お疲れになったでしょう?早くこちらにいらしてお座りになって」
部屋の中では、泰史の双子の姉のうちのもう一人の麻美が、座卓の向こうで座布団の上に正座をし、優雅な仕草で美七海を手招きしている。
「やはり、お姉さま達もいらっしゃっていたのですね」
そっと繋がれたままの泰史の手を解くと、亜美に軽く会釈をし、美七海は部屋の中へと入って麻美の向かいの席にある座布団の上に座った。
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