引き裂かれる絆

「ああ…嫌…いや…そんな…あ…いやああああああああああ!」


 地面に血が流れている。翠夢は、瑠璃を、かばって、攻撃を受けた。みぞおちを刺されてしまい、致命傷を負ってしまったのだ。さらに、不良は気が動転したのか、ナイフを引き抜いた後、別の個所に刺してきた。


「殺してやる!殺してやる!」


 別の個所…それは右肩に近い部分の胸だった…回避できるわけもなく、翠夢は受けてしまう。刺さった部分から、生命の緊急事態を知らせるための血が流れ始める。その血は、周辺の服を赤く染め、水滴となって地面に落ちる。


「やったぞ!これで終わりだ!逃げきれれば勝ちだ!」

 刺したナイフを抜き、不良は逃げていった…が逃げ切ることはできなかった。すぐ近くまできた警察に捕まり、現行犯として逮捕されるだろう。


「うああ…けほっ…なん…とか…無事…なのか…瑠…璃…」


 2か所を刺された翠夢は、もはや、虫の息だった。好きな人の名前を呼ぶことも、たどたどしい。

「無事…だった…か…そう…か、君と…生きた…かったな…好き…な人と…いるのも悪く…なかった…」

 瑠璃は、急いで翠夢を支え、電話から救急車を呼ぼうとしたが、もはやまともに話すことができない状態であった。


「…急いで…そうしないと…!」


 そこに、警察がやってきて、電話を一度取り上げた。

「この部分に致命傷を負った男がいる。どこどこ街の土地です。急いでください。見る限り、大事な人がいそうです」


 警察の人は、この状況を察知し、救急車を呼ぶこと、大切な人がいるかも…という

ことを話したのだ。


「ああ、ありがどうご…ざいま…あああう。うわああああん」


 数分後、救急車がやってきた。かなり病院が近い所だったらしく、時間はかからなかった。

 翠夢は、何とか意識を保っているが、保つことしかできないほどの重傷を負っており、応答が難しい。したいことを発言しているのかもしれない。

「イキ…ナク…テハ…」

 視界がぼやけ、今の状態を改善することは出来ない。言うまでもなく、痛みも止まらず、血も、少しずつであるが失われている。


「あの…救急車に乗って見ていてもいいですか…」

「さすがに難しいです。ただ、この状況を話したら、どこにいるか程度は、話せるかもしれないです。ショックを受けたくなければ、見ない方が」


 話をしている間も、隊員は動く。有能であることには変わりないが、そんなことよりも瑠璃には、やらなければならないことを聞きたかった。


「あなたのするべきことは、連絡です。重要な人物はこちらからしますが、それ以外の人にはあなたがしてください」


 翠夢は、とうとう救急車に運ばれていった…

「…泣いていられない…」


 瑠璃は、翠夢を諦めていなかった。

「(イキ…ナク…テハ…)(イキ…ナク…テハ…)」

 倒れた後の姿。生きなくては…好きな人、翠夢さんが諦めていない。だから…

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