★彡 過去の強い縛り

★彡


???『今、女の子と関わっているみたいだな』

翠夢「そうだが…それがどうした?」


 翠夢は、また夢を見た。謎の人物がおり、話し相手となっている。


『いいんじゃないのか、別に。そういう相手もいるだろうな』

「だが、今までのことを考えると…とても後ろめたい。中学生の頃は…」

『そんな時代のことを考えていたのか。そんなこと忘れちまえばいいのに』

「忘れるわけにはいかない。あれがなければ、また俺はやってしまう」


 翠夢は、過去に縛られ続けている。それがいつからなのかはわからない。過去の失敗を引きずり続けているようだ。


『わかるわけないことを想像してるとか、本当にお前は馬鹿だな』

「びっくりさせてしまったり、手が当たったりしそうだった。その時に嫌われかねないかと思った」

『嫌われるわけがないな。そういうのに慣れているなら』

「あの子は…雰囲気的に傷つけたくない」

『なんでそこまで甘いんだ?』

「多分…なんというか、理解はできないが、恐らく…初恋ってものなのかもしれない」


★彡


 謎の人物は、ひどく高笑いした。

 そして、このように発言した。


『お前みたいな奴が選ばれるわけがないだろう!手を上げたクズが!

 現実も知らない奴が!後で思い知らせてやるからな!』


 謎の人物はこうなると、話を全く聞かなくなる。翠夢はこれを耐えるしかないのだ。

『逃げるな!卑怯者!逃げるな!お前は現実を見ず逃げ続ける!いつかお前を潰してやるからな!今までの狼藉の責任を取らせる!』


 酷い暴言を吐き続けるこの人物の発言に、翠夢は呆れた。

「時間の無駄だな。これ以上は。俺は話し相手になってもらっているだけだ」

 この後、話し相手だった謎の人物を何度も殴りつけた。話し相手ではなく、煽り相手になってしまったからだ。

 かつて、周辺から避けられて酷い暴言を受けていたころと同じことを、この夢でまた受ける。翠夢は悪人として扱われ、同級生から、先生から厳しく𠮟りつけられる。この状況が始まってからは何をしてもこの状態に追い込まれる。この過酷な環境から脱出が出来なくなっていたし、夢の中でそうなるのも勘弁してほしい。悪い環境から高校生でやっと脱出できたのだ。その状態を維持したい。夢の中であれば、悪い環境になっても自ら対応できる。現実世界ではないから。


 度重なる殴打により、謎の人物は、とうとう原型をとどめないほどに崩壊していた。手を止め、謎の人物を観察してみると、全く似たような人物を見たことがない。また、このようなことをすれば、普通は抵抗するはずだが、全く抵抗も反撃もしない。夢だからか、それとも。


 翠夢は、この謎の人物を、勝手に『城将』と呼ぶことにした。


★彡


 翠夢は目が覚めた。考えることを残したまま寝ると、このような夢になる。前からである。

 相変わらず、謎の人物…城将の正体は不明だ。このような夢を見ると、なぜか毎回出てくる。


「(話し相手になってくれるだけでいいのだが…あれは何者だ?)」

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