いらない置き土産

☆彡


瑠璃は、絶望の淵へ突き落されていた。

翠夢が、かつて女の子に手を上げたことのある事実を聞いて。



 中学生の頃の同級生にばったり出会うこととなった。既に遠くに見えている。翠夢は手を離し、瑠璃に話した。

「会いたくない人がいる。先に逃げろ。後で電話して合流する」

「……!?」


 同級生。会いたくない者。それは翠夢を全力で潰すために動き続けていた、かつての同級生達の中の3人。ここでまさかの邂逅。翠夢は瑠璃を巻き込みたくない考えを持っていたが、逃げられるとは言えない状態に追い込まれた。


「…あの、」

瑠璃は、嫌な予感がしたため、今のうちにとある部分に電話していた。



「その子、お前の女かぁ?その程度の女なんだなぁ、クズは生きてる価値ないな」

「この子は従妹だ(嘘)。いろいろあって近くにいる。弱いと思っているなら退いてくれ。というか、知っている人に対してこの態度か?」

「早く死ね」

「潰してやる、潰してやる」

「基地外、早く死ね」

「殺してやるからな」


「そうだ。そいつは女の子に思いっきり手を上げたことが…」

「話すな。そんなことを言うために来たのか」

「人の話を遮るとか手前はいつになっても成長しねぇなクズが!」


 翠夢はそこまで動じていないが、瑠璃は既に身体を翠夢に預けている。まだ正気を保っているが、あまり良い状態ではないので、座らせた。

 もともと瑠璃は怒鳴りつける声を聞くのが嫌いである。それに、話を聞いており、裏切られてしまうと考えたのか、大粒の涙が止まらなくなった。

「うう……ふっう……」


†††


「そうだ。ここで絞めてやれ」

「何を言っている。そういうことはできる関係じゃない」

「いいからこいつの事を絞めるんだよ!」


†††


 瑠璃は、その意味を理解していた。最悪の事態が迫ろうとしている。

「あああ…いや…」

「(嘘だろ…このままじゃ…俺と関わったがためにこの子が…)」


☆彡


「おい!あれを見ろ!サツの奴らだ!」

「お前は生きているだけで加害者なんだ!いつか叩き潰してやるからな!」


 囲んでいた男たちはすぐに解散していった。

「助かった……のか?」

「…危なかった。私が先に通報しておきました。そうしなかったら本当に……嫌な予感が当たって良かった……」


 残念ながら、周辺に逃げた男たちは捕まえることが出来なかった。

 また、この状況を切り抜けたものの、瑠璃は憔悴しており、信じられないほどに疲れていた。腰が抜けてしまっており、自ら立ち上がるのは難しかった。


 翠夢におんぶしてもらわないと動けないほどになっていたため、一度レストランに入り、2人は休むことにした。従妹というのは嘘だが、ある意味では使える方法だったかもしれない。もちろん、相手が気が付いていなければ、の話だが。


☆彡

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