修理

起き上がって、リビングへ行くとムキムキのおじさんが立っていた。


「えーー。あーー」


「アーキーさん、修理屋さんのヒローさんです」


「こんちはーー。さくっと修理しますんで」


「お、おじぃちゃん!!?」


「おじぃちゃん?」


「あっ、あっ、すみません」


修理屋としてやってきた、ヒローさんは俺のおじぃちゃんに似ている。


ただ、見た目はおじぃちゃんに似ているのだが……。


喋り方がチャラい。


おじぃちゃんは、チャラくはなかった。


何というか、若者だ。


「あーー。リズリさん。離れてくれますか?」


「あっ、すみません」


「直せないんですよねーー。そこに立ってられると」


「あっ、はい。わかりました」


俺は、懐かしくて微笑んでいた。母さんが、おじぃちゃんのセーターを縮ませた時を見ているようだった。


「アーキーさん、すぐ終わるんで。ちょっと待って下さいね」


「はい」


「ほんじゃあ、いきますか」


ヒローさんは、手を翳すと「カーベーダー」と叫んだ。


何かダサい。スキルの言葉……。何か、俺でも出来そう。


と思ったら、瞬きする間に壁が直った。


「終わりましたーー。ほんじゃあ、ここにサインもらえますか?」


俺は、パチパチと瞬きを繰り返していた。


「あのーー。アーキーさん?聞いてますか?」


「あっ!すみません。ボッーとしてました」


「そうでしょうね!じゃあ、サインお願いします」


俺は、サインをする。


「また、壁壊したら来ますんで」


「あっ、はい。よろしくお願いします」


「いやいや、壊すの前提っすか?そこは、もう呼びませんじゃないですか?」


「あっ、そうでした。きっと壊れる気がしますが、もう呼びません」


「いやいや、意味わかんないっすよ!あーー。それと俺、おじぃちゃんじゃないっすから!まだ、二十歳なんで!そこんとこよろしく」


(ヒローさんは、めちゃくちゃ怒っている。)


俺を睨み付けていた。


「怒ってないすからね!心、読めてっから」


(わ、忘れていた)


「まぁーー。忘れるのは誰にでもありますから!ドンマイっす。じゃあ、帰ります」


「あっ、はい。ありがとうございました」


俺は、ヒローさんに頭を下げた。


「あっ!さっきの壁直すの大工スキルなかったら出来ないんで、挑戦しないで下さいね」


「は、はい。勿論です」


何か、多分。バレてた。


「では、また」


俺が、出会った中で一番チャラそうなヒローさんは部屋を出て行った。


「アーキーさん、よかったですね」


外でリズリさんが待っていてくれていた。


「すみませんでした」


「いえいえ、大丈夫ですよ」


「じゃあ、俺はこれで」


「はい。頑張って下さいね」


「はい」


俺は、この一連のやり取りを繰り返す事になる事を知らずに笑っていた。


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